All I Want by The Offspring(1997)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「All I Want」は、The Offspringが1997年に発表した4枚目のスタジオ・アルバム『Ixnay on the Hombre』に収録された、爆発的なスピードとエネルギーを持つ疾走感あふれるパンク・アンセムである。

曲の長さはわずか1分55秒。しかしその中に詰め込まれているのは、徹底した自己主張、反抗心、そして他者からの束縛を断ち切る強い意志である。
タイトルの「All I Want(俺が欲しいすべて)」は、他人の期待やルールではなく、“自分の生き方”を選ぶことに対する叫びだ。

「Just let me live my life(俺に生きさせてくれ)」と繰り返されるラインは、まさにこの曲の魂を表すもので、社会や親、学校、職場といった“型”に押し込められるすべての人への、The Offspring流のエールでもある。

2. 歌詞のバックグラウンド

この曲は、元々はDexter HollandがBad Religion風のスタイルで書き上げたデモ「Protocol」であったが、プロデューサーの意見により書き直され、よりThe Offspringらしい荒々しさとキャッチーさを兼ね備えた形へと進化した。

1997年当時、アメリカのティーンカルチャーではパンクが再び主流になりつつあり、Green DayRancidなどとともに、The Offspringもそのムーブメントの中核を担っていた。
その中で「All I Want」は、バンドが原点に立ち返るような勢いと、理屈抜きのロックンロールの衝動を体現していた。

また、この曲はビデオゲーム『Crazy Taxi』シリーズや、数多くのスケートカルチャー映像、映画などでも使用され、The Offspringの中でもとりわけ“若さと自由”の象徴として浸透していった。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下は「All I Want」の印象的な一節。引用元は Genius Lyrics。

Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
ああ、もういいってば

Day after day, your home life’s a wreck
毎日が壊れかけの生活の繰り返し

The powers that be just breathe down your neck
権力者たちは、首元でずっと息をかけてくる(監視してくる)

You get no respect
誰もお前を尊重しちゃくれない

You get no relief
休む暇もない

You gotta speak up and yell out your piece
言いたいことがあるなら、声を上げて叫べ

So back off your rules
だから、そのルールからは身を引けよ

Back off your jive
ごたくも聞きたくないんだよ

‘Cause I’m sick of not living to stay alive
「生きるために生きてない」そんな日々にはもうウンザリなんだ

Leave me alone
放っといてくれよ

I’m not asking a lot
大したことは望んじゃいない

I just don’t want to be controlled
ただ、誰にも支配されたくないだけ

That’s all I want
それが、俺の望むすべてなんだ

このサビのパンチ力は凄まじく、たった数行で“他人の価値観に従う人生”を一蹴してみせる。

4. 歌詞の考察

「All I Want」は、The Offspringの持つ“パンク精神”を極限まで削ぎ落として剥き出しにしたような楽曲である。

ここには装飾や文学性はない。ただ、「俺の人生は俺のものだ」という、叫びにも近いメッセージだけがある。
このシンプルさこそが、曲の最大の魅力であり、リリースから四半世紀以上経った今も、若者たちの心を掴んで離さない理由である。

歌詞に登場する“powers that be(支配者たち)”は、必ずしも政治家や教師といった具体的な存在ではなく、もっと抽象的な「期待」「空気」「マナー」などの社会的規範を象徴しているように思える。

そして、そうした“目に見えない圧力”に声を上げること、それがパンクの本質であるということを、この曲はわずか2分足らずで体現しているのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Bad Habit by The Offspring
    無軌道な怒りと暴力性を描いた初期の代表曲。怒鳴るようなボーカルが強烈。

  • Break Stuff by Limp Bizkit
    フラストレーションの爆発をそのまま音にした、2000年代的パンクの進化形。
  • Know Your Enemy by Green Day
    自分を縛ろうとする全ての存在に対する抗議の歌。反骨の現代版パンク。

  • My Generation by Limp Bizkit
    “オレたちの世代”を代弁する激しい主張。抑えきれない若さのパワーを感じる。

  • Linoleum by NOFX
    自由と不条理、くだらなさの間にある“生きること”のリアリティを描いた名曲。

6. “生きたいように生きる”——それだけが、すべて

「All I Want」は、パンクというジャンルが本来持つ「自由への執着」「支配への反発」「自己決定の尊さ」を、誰よりもストレートに伝える一曲である。

人生を複雑に考える必要はない。
「お前のルールなんか、俺には関係ない」
「ただ、俺のままでいたい」
その一言がすべてだ。

この曲が鳴り響くとき、心の奥にしまい込んでいた「叫びたい気持ち」が静かに、しかし確かに震え始める。
そしてそれは、きっと誰にとっても一度は必要な瞬間なのだ。

“That’s all I want.”
その一言は、叫ぶようでいて、どこまでも静かな真実でもある。
だからこそ、この曲は、何度でも“生き方”を取り戻すためのアンセムとして、私たちの耳元で鳴り続ける。

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