発売日: 1969年9月26日
ジャンル: ロック、ポップ、プログレッシブロック
- アルバム全体の印象
- トラックごとの解説
- 1. Come Together
- 2. Something
- 3. Maxwell’s Silver Hammer
- 4. Oh! Darling
- 5. Octopus’s Garden
- 6. I Want You (She’s So Heavy)
- 7. Here Comes the Sun
- 8. Because
- 9. You Never Give Me Your Money
- 10. Sun King
- 11. Mean Mr. Mustard
- 12. Polythene Pam
- 13. She Came in Through the Bathroom Window
- 14. Golden Slumbers
- 15. Carry That Weight
- 16. The End
- 17. Her Majesty
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
アルバム全体の印象
『Abbey Road』は、The Beatlesが正式に解散する直前に完成させた最後のスタジオ録音アルバムである。本作は、グループの集大成ともいえる作品で、彼らの音楽的成熟と実験精神が見事に融合したアルバムだ。特にB面に収録されたメドレーは、アルバム全体を壮大なシンフォニーのようにまとめ上げており、ロックアルバムの新しい形を提示している。
エンジニアのジェフ・エメリックとジョージ・マーティンのプロデュースのもと、アルバム全体がこれまでにない完成度を誇る。ジョン・レノンとポール・マッカートニーのソングライティングが円熟の域に達し、ジョージ・ハリスンも「Something」や「Here Comes the Sun」といった珠玉の楽曲を提供。リンゴ・スターの「Octopus’s Garden」も、バンドの多様性を感じさせる一曲となっている。
アルバムジャケットも象徴的で、アビー・ロード・スタジオ前の横断歩道を歩く4人の姿は音楽史に残るアイコンとなった。このジャケット写真をめぐる都市伝説が多く語られることも、本作の特別な位置づけを物語っている。『Abbey Road』はビートルズのキャリアの最終章にふさわしい傑作であり、今なお多くのリスナーに愛され続ける不朽の名作である。
トラックごとの解説
1. Come Together
ジョン・レノンがリードボーカルを務めるブルージーな楽曲で、アルバムの幕開けにふさわしい一曲。「Here come old flat top, he come grooving up slowly」という謎めいた歌詞と、タイトなリズムセクションが楽曲に独特の雰囲気を与えている。ベースラインと手拍子の絡みが秀逸で、一度聴いたら忘れられない印象を残す。
2. Something
ジョージ・ハリスンによるバラードで、ビートルズの中でも屈指のラブソングとして知られる名曲。流れるようなギターフレーズとストリングスのアレンジがロマンチックなムードを引き立てる。「Something in the way she moves」という冒頭のフレーズはシンプルながらも心に刺さる。
3. Maxwell’s Silver Hammer
ポール・マッカートニーによるポップで軽快な曲調ながらも、殺人事件をテーマにしたブラックユーモアあふれる歌詞が特徴。「Bang, bang, Maxwell’s silver hammer came down upon her head」というリフレインはコミカルで耳に残る。
4. Oh! Darling
ポールが歌い上げるゴスペル風のラブソング。切迫感のあるボーカルが、別れの危機に立たされた恋人の心情を見事に表現している。1960年代のリズム・アンド・ブルースに影響を受けたアレンジが楽曲を際立たせている。
5. Octopus’s Garden
リンゴ・スターが手がけた陽気な楽曲で、海中の理想郷を描いた歌詞が印象的。ギターとドラムが軽快に絡み合い、子供でも楽しめる親しみやすさを持つ。リンゴらしい素朴で温かみのある一曲。
6. I Want You (She’s So Heavy)
ジョンがリードするこの楽曲は、ブルースロックとサイケデリックな要素が融合した異色の作品。ミニマルな歌詞が恋の執着を強調し、終盤に向けて徐々に盛り上がる音響効果が圧倒的な迫力を持つ。突然終わるフェードアウトも衝撃的だ。
7. Here Comes the Sun
ジョージによるもう一つの名曲で、アルバムの中でも特に晴れやかな雰囲気を持つ楽曲。アコースティックギターとシンセサイザーが絡み合い、春の訪れを感じさせる。「It’s been a long, cold, lonely winter」という歌詞は、暗い時代の終わりを予感させる。
8. Because
ジョンが中心となって書いた楽曲で、3人のボーカルが重なる美しいハーモニーが最大の特徴。クラシック音楽の影響を受けたアレンジと夢幻的な歌詞が、楽曲に神秘的な雰囲気を与えている。
9. You Never Give Me Your Money
ポールによるバラードから始まり、次第にテンポが変化していく楽曲で、アルバム後半のメドレーの序章となる一曲。歌詞にはバンド内の金銭トラブルが暗に描かれており、個人的な感情が滲み出ている。
10. Sun King
ジョンを中心にしたムーディーな楽曲で、スペイン語風の歌詞が散りばめられている。ゆったりとしたテンポとリラックスしたアレンジが、アルバム全体のバランスを保つ。
11. Mean Mr. Mustard
ジョンが書いた短い楽曲で、皮肉たっぷりの歌詞が特徴。メドレーの中で重要なつなぎの役割を果たしている。
12. Polythene Pam
引き続きジョンが中心となる楽曲で、ラフなギターリフが印象的。歌詞の登場人物はジョンのユーモアが反映されており、メドレーにエネルギーを与えている。
13. She Came in Through the Bathroom Window
ポールによる楽曲で、メドレーの中で流れるように繋がる一曲。スムーズなメロディラインとユーモラスな歌詞が、アルバム全体の多様性を象徴している。
14. Golden Slumbers
ポールが古い子守唄をもとに作った楽曲で、メドレーのクライマックスへ向かう重要な一曲。優しいメロディと壮大なアレンジが感動を呼ぶ。
15. Carry That Weight
前曲と繋がる形で展開する楽曲で、全員のコーラスがドラマチックな効果を生む。バンドの解散を予感させるような歌詞が印象的。
16. The End
アルバムのフィナーレを飾る壮大な楽曲。ジョージ、ジョン、ポールが次々にギターソロを披露し、最後には「And in the end, the love you take is equal to the love you make」という哲学的なメッセージで締めくくられる。
17. Her Majesty
隠しトラック的に収録された17秒の楽曲で、アルバムにユーモアを添える小粋な締めくくり。
アルバム総評
『Abbey Road』は、ビートルズがグループとして最後に制作した作品でありながら、その完成度は驚異的だ。各メンバーの個性が存分に発揮されつつ、全体としての統一感も保たれている。B面のメドレーはアルバム全体をシンフォニックな体験に仕上げ、ビートルズの音楽的野心と創造力の頂点を示している。『Abbey Road』は、ビートルズのキャリアを象徴する完璧なフィナーレであり、音楽史に残る永遠の名盤である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Let It Be by The Beatles
ビートルズの最終アルバム。『Abbey Road』とは異なる生々しいエネルギーが感じられる作品。
The Dark Side of the Moon by Pink Floyd
コンセプトアルバムとしての完成度が高く、アルバム全体の流れを重視する点が共通する。
Rumours by Fleetwood Mac
メンバー間の葛藤を内包しつつ、完成度の高い楽曲が揃ったアルバム。
A Night at the Opera by Queen
ドラマチックな展開と多様なジャンルを融合したアプローチが、『Abbey Road』に通じる。
The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars by David Bowie
物語性と音楽的実験が融合した傑作で、アルバム全体を通しての一貫性が魅力的。
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