発売日: 2007年10月2日
ジャンル: シューゲイザー、ノイズロック、ポストパンク
ニューヨークを拠点に活動するA Place to Bury Strangersのセルフタイトルのデビューアルバムは、攻撃的でインダストリアルな音の洪水に満ちた作品である。バンドは「ニューヨークで最も音が大きいバンド」として知られており、このアルバムもその異名にふさわしい音圧とノイズが強調されている。バンドのフロントマンでありギタリストのオリヴァー・アッカーマンが作り出す独自のエフェクトペダルが生み出すサウンドは、ジーザス&メリー・チェインやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインといったシューゲイザーバンドからの影響が色濃く表れながらも、ポストパンクのダークな要素も取り入れており、冷たく退廃的でありながらもどこか官能的だ。全体として、耳を圧倒するノイズとダークな美学が融合した、衝撃的なデビュー作として評価されている。
各曲解説
- Missing You
ノイズとダークなメロディが交錯する、インダストリアルな響きが印象的なオープニングトラック。アッカーマンのエフェクトが炸裂し、聴く者を不安定な世界へ引き込む。 - Don’t Think Lover
歪んだギターとエコーのかかったボーカルが、物憂げな雰囲気を醸し出す。メロディにはどこか憂いが漂い、ポストパンクのエッセンスが色濃く表れている。 - To Fix the Gash in Your Head
激しいビートと鋭いギターが耳に残る、アルバムの中でも特に攻撃的な一曲。インダストリアルなサウンドが曲に狂気じみたエネルギーを与えており、聴き手を圧倒する。 - The Falling Sun
ミッドテンポの重厚な曲で、低音とリバーブが織りなす幻想的なサウンドスケープが印象的。ゆっくりと進むメロディが、不安と孤独感を強調している。 - Another Step Away
シューゲイザーの影響が強く出た楽曲で、エコーの効いたボーカルとギターが一体となり、夢幻的な雰囲気を醸し出す。沈み込むようなリズムとメランコリックなメロディが心に残る。 - Breathe
ノイズとメロディのバランスが取れた一曲で、アルバムの中では比較的落ち着いた雰囲気。ボーカルには切なさが漂い、曲全体に儚さが感じられる。 - I Know I’ll See You
ディストーションのかかったギターとダークなベースラインが絡み合い、幻想的な雰囲気を作り出す一曲。メロディにはどこか甘美さがあり、冷たいノイズの中にも優しさが垣間見える。 - She Dies
高速で展開する激しいナンバーで、攻撃的なギターとドラマチックなボーカルが特徴。エネルギッシュなサウンドが支配的で、アルバムのクライマックスを彩る。 - My Weakness
低音のベースラインとエコーが響き渡る、ゆったりとした曲調の楽曲。アルバム全体の中でも特にダークで、内省的な雰囲気が漂う。 - Ocean
長尺でドラマチックなエンディングトラック。波のように寄せては返すノイズとメロディが、アルバムを壮大に締めくくる。冷たさと温かさが同居するサウンドが、リスナーに深い余韻を残す。
アルバム総評
A Place to Bury Strangersは、ノイズとシューゲイザー、ポストパンクが融合した力強いデビューアルバムである。バンドの特徴である圧倒的な音圧と独自のエフェクトが生み出すサウンドは、冷たくも美しいサウンドスケープを作り上げており、聴く者を異世界へと誘う。アッカーマンのギターは、時に鋭く、時に夢幻的で、曲ごとに異なる表情を見せているが、全体として暗く退廃的な美学が一貫している。シューゲイザーやポストパンクのファンにはもちろん、実験的でインダストリアルなサウンドが好きなリスナーにも刺さる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
My Bloody Valentine – Loveless
シューゲイザーの金字塔であり、轟音と美しいメロディが融合した名作。A Place to Bury Strangersのノイズとメロディの対比が好きなリスナーにおすすめ。
The Jesus and Mary Chain – Psychocandy
ノイズロックとポップの融合を試みたアルバムで、フィードバックやディストーションの美学が際立つ。フィッシュの影響を受けたシューゲイザーサウンドが好きな方に。
Sonic Youth – Daydream Nation
実験的なギターサウンドが特徴のアルバムで、ポストパンクとノイズの融合が楽しめる。フィッシュのアグレッシブな演奏に共鳴する要素が多い。
The Velvet Underground – White Light/White Heat
インダストリアルな音の源流ともいえる作品で、冷たい音の中に内省的なテーマが広がる。ダークで攻撃的なサウンドが好みのリスナーにおすすめ。
Suicide – Suicide
ミニマルでインダストリアルなエッジが特徴のデビューアルバム。攻撃的なサウンドと退廃的な美学が、A Place to Bury Strangersの音楽と共鳴する。
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