アルバムレビュー:Nonsuch by XTC

※本記事は生成AIを活用して作成されています。


発売日:1992年4月27日

ジャンル:アート・ポップ、ギター・ポップ、ニューウェイヴ、サイケデリック・ポップ、パワー・ポップ、バロック・ポップ

概要

Nonsuch は、イギリス・スウィンドン出身のバンド、XTCが1992年に発表した通算12作目のスタジオ・アルバムである。1989年の Oranges & Lemons に続く作品であり、XTCがスタジオ・バンドとして築き上げてきた高度なソングライティング、英国的な皮肉、精密なアレンジ、メロディへの執着が、より落ち着いた形で結晶したアルバムとして位置づけられる。

XTCは、1970年代後半のポストパンク/ニューウェイヴ期に登場したバンドである。初期には鋭角的なギター、神経質なリズム、Andy Partridgeの跳ねるようなヴォーカル、Colin Mouldingのメロディアスなベースによって、同時代のパンク以後の実験的ロック・シーンの中で独自の位置を築いた。しかし、Andy Partridgeのステージ恐怖や体調面の問題などを背景に、1982年以降はライブ活動を停止し、スタジオ制作を中心とするバンドへと変化していく。その結果、XTCはライブでの即時的なエネルギーよりも、録音芸術としてのポップ・ミュージックを追求する存在となった。

1986年の Skylarking はTodd Rundgrenのプロデュースによって、自然、季節、生命、死、信仰への疑問を流麗にまとめた傑作となった。1989年の Oranges & Lemons では、60年代サイケデリア、パワー・ポップ、ニューウェイヴ、社会批評が極彩色のサウンドの中で爆発した。これらに続く Nonsuch は、前作のような過密でカラフルな音像から一歩引き、より整理され、成熟したポップ・アルバムとして響く。派手なサイケデリック感は抑えられているが、メロディ、歌詞、アレンジの精度は非常に高い。

アルバム・タイトルの Nonsuch は、「比類なきもの」「他に類を見ないもの」という意味を持つ。同時に、イングランドにかつて存在した王宮Nonsuch Palaceを想起させる言葉でもある。XTCの作品らしく、このタイトルには英国的な歴史感覚、言葉遊び、やや皮肉な自己意識が重なっている。バンドが自分たちを「比類なき存在」と誇示しているというより、むしろ誰にも似ていない奇妙なポップ職人としての孤立を示しているようにも読める。

音楽的には、Nonsuch は非常に幅広い。ギター・ポップ、バロック・ポップ、サイケデリック・ポップ、室内楽的なアレンジ、ファンク風のリズム、英国フォーク的な旋律、ニューウェイヴ的なひねりが混在している。ただし、前作 Oranges & Lemons のような万華鏡的な派手さではなく、より洗練され、曲ごとの情景やテーマに合わせて音が緻密に配置されている。プロデューサーのGus Dudgeonのもと、音像は明瞭で、各楽器が細かく整理されている。

歌詞面では、Andy Partridgeの鋭い社会観察と個人的な内省、Colin Mouldingの穏やかで人間味のある視点が並び立つ。政治、宗教、愛、性、親子関係、戦争、死、日常の小さな皮肉が、非常に巧みな言葉で描かれる。XTCの歌詞は、表面上はポップで親しみやすくても、その内側には英国的なシニシズムや深い疑問がある。本作でも、明るいメロディの下に苦みがあり、美しいコーラスの裏に不信や悲しみが潜んでいる。

Nonsuch は、XTCがVirgin Records在籍期に発表した最後のアルバムであり、その後、バンドはレーベルとの関係悪化や長い沈黙を経て、1999年の Apple Venus Volume 1 へ向かうことになる。その意味で本作は、1980年代から続くXTCのスタジオ・ポップ路線の一区切りでもある。華やかな成功作というより、成熟と疲労、職人性と反骨心が同居した、キャリア後期の重要作である。

全曲レビュー

1. The Ballad of Peter Pumpkinhead

オープニング曲「The Ballad of Peter Pumpkinhead」は、本作を代表する楽曲の一つであり、XTCらしい社会批評とポップ性が見事に結びついた名曲である。タイトルのPeter Pumpkinheadは、直訳すれば「かぼちゃ頭のピーター」といった寓話的な人物名である。彼は善良で理想主義的な存在として描かれ、人々に真実や愛をもたらすが、最終的には社会によって排除される。

音楽的には、力強いギター・ポップであり、サビのメロディは非常に明快である。ドラムとギターは前へ進む推進力を持ち、Andy Partridgeのヴォーカルは寓話を語るように力強い。曲調は明るくキャッチーだが、歌詞の内容はむしろ悲劇的である。この対比がXTCらしい。

歌詞は、キリスト的な犠牲者、政治的な改革者、社会に都合の悪い真実を語る人物の寓話として読める。Peter Pumpkinheadは、世界を良くしようとするが、その存在ゆえに権力や群衆から恐れられる。ポップ・ソングとして聴きやすい一方で、理想主義者が社会でどのように潰されるかを描く、非常に鋭い楽曲である。

2. My Bird Performs

「My Bird Performs」は、Colin Mouldingによる楽曲であり、本作の中でも穏やかで優雅な魅力を持つ一曲である。タイトルの「bird」は鳥であると同時に、愛する存在や親しい相手の比喩としても読める。曲全体には、誰かの小さな振る舞いや存在そのものに喜びを見いだすような温かさがある。

音楽的には、軽やかなギター、柔らかなリズム、Colinらしい滑らかなメロディが中心である。Andy Partridgeの楽曲に比べると、角の立った皮肉よりも、穏やかな観察眼が前面に出ている。サウンドは過度に装飾されず、楽曲そのものの美しさが際立つ。

歌詞では、愛情や親密さが直接的すぎない形で表現される。鳥が歌い、羽ばたき、存在すること自体が喜びになるように、相手の存在が語り手にとって意味を持っている。Colin Mouldingのソングライティングは、XTCの中でしばしば人間味や落ち着きをもたらす。本曲はその良さがよく出た楽曲である。

3. Dear Madam Barnum

「Dear Madam Barnum」は、サーカスや見世物のイメージを用いた楽曲であり、人間関係や社会的な演技への皮肉が込められている。Barnumという名前は、興行師P. T. Barnumを連想させ、ショー、欺瞞、観客、演技、見せ物文化を思わせる。語り手は、自分が誰かのショーの中で道化や見世物のように扱われていることに気づき、そこから降りようとする。

音楽的には、非常にキャッチーなポップ・ロックであり、サビには強い開放感がある。ギターとリズムは明快で、曲自体は親しみやすい。しかし歌詞は、自尊心の回復、見世物として扱われることへの拒否を含んでおり、明るさの裏に痛みがある。

この曲は、恋愛関係の中で利用される人物の告白としても読めるし、音楽産業やメディアに対するXTC自身の不満としても読める。バンドはレーベルとの関係に長く苦しんでいたため、「ショーから降りる」という感覚は非常に意味深い。ポップでありながら、裏には強い自己解放のテーマがある。

4. Humble Daisy

「Humble Daisy」は、Andy Partridgeらしい言葉遊びと、英国的な田園感覚が結びついた楽曲である。タイトルは「つつましいデイジー」を意味し、小さく目立たない花を題材にしている。XTCはしばしば、大きな政治や宗教の問題だけでなく、自然や日常の小さな存在に象徴的な意味を与える。

音楽的には、柔らかなギターと複雑なメロディ展開が印象的である。曲は一見穏やかだが、和声やリズムには独特のひねりがある。XTCのポップは、単純なコード進行に頼らず、細かな転調やメロディの跳躍によって、聴き手に少し不思議な印象を与える。本曲にもその特徴が強く出ている。

歌詞では、デイジーという小さな花が、人間の感情や自然の神秘と結びつけられる。大げさな象徴ではなく、道端の花の中に世界の美しさを見いだすような視点がある。これはXTCの田園的な側面を示す楽曲であり、Skylarking から続く自然へのまなざしともつながっている。

5. The Smartest Monkeys

「The Smartest Monkeys」は、人類を「最も賢い猿」として風刺する楽曲である。タイトルからして、文明の発展を誇る人間への皮肉が明確である。人間は知性を持つ存在であるはずだが、その知性を使って戦争、環境破壊、不平等、愚かな競争を生み出している。XTCの社会批評が非常に分かりやすく表れた曲である。

音楽的には、ややファンキーなリズムとポップなメロディが組み合わされている。曲調は軽快だが、歌詞はかなり辛辣である。この軽さと批判の対比が、XTCの得意とする方法である。聴き手は明るいグルーヴに乗りながら、人類全体への皮肉を受け取ることになる。

歌詞では、文明の滑稽さと矛盾が描かれる。猿から進化したはずの人間が、本当に賢くなったのか。技術や制度を持ちながら、根本的には愚かさを繰り返しているのではないか。本曲は、環境問題や戦争の時代にも通じる普遍的な批評性を持っている。

6. The Disappointed

「The Disappointed」は、失望した人々をテーマにした楽曲であり、XTCの中でも特に美しいメロディを持つ一曲である。タイトルは「失望した者たち」を意味し、恋愛、人生、期待、約束が裏切られることへの静かな悲しみが中心にある。

音楽的には、柔らかなギター、流麗なメロディ、コーラスの美しさが際立つ。曲は明るく開けているように聴こえるが、その中心には深い寂しさがある。Andy Partridgeのヴォーカルは、皮肉よりも感情の傷を前面に出しており、本作の中でも特に人間的な温度を持っている。

歌詞では、恋に破れた人々、期待を失った人々が一つの共同体のように描かれる。失望は孤独な経験であると同時に、多くの人が共有する経験でもある。XTCはここで、悲しみを美しいポップ・ソングへ変換している。アルバム中盤の重要な感情的ハイライトである。

7. Holly Up on Poppy

「Holly Up on Poppy」は、Andy Partridgeの娘への愛情を反映した曲として知られる、非常に親密で温かな楽曲である。タイトルには子どもの名前や遊びの感覚が含まれており、父親のまなざし、幼い子どもの動き、家庭の中の小さな喜びが感じられる。

音楽的には、穏やかで夢のようなアレンジが特徴である。ギターと鍵盤は柔らかく、曲全体に子守歌のような雰囲気がある。ただし、単純な童謡ではなく、XTCらしいひねった和声や細かなアレンジが施されているため、大人の視点から見た子ども時代の美しさとして響く。

歌詞では、子どもの存在が世界を新しく見せる感覚が描かれる。XTCの作品には父親、子ども、家庭への複雑な感情がしばしば登場するが、本曲ではそれが非常に優しい形で表れている。社会批評や皮肉が多い本作の中で、純粋な愛情の光を与える楽曲である。

8. Crocodile

「Crocodile」は、タイトル通りワニをモチーフにした楽曲であり、危険な人物、偽りの涙、捕食的な関係を暗示している。英語には「crocodile tears」という表現があり、偽りの涙を意味する。XTCはこのイメージを用いて、人間関係の中に潜む欺瞞や危険を描いている。

音楽的には、リズムに独特のうねりがあり、曲全体に少し不気味な感触がある。ギターとベースは鋭く、Andy Partridgeのヴォーカルも皮肉を含んでいる。曲はポップでありながら、どこか爬虫類的な冷たさを感じさせる。

歌詞では、相手の涙や言葉が本物なのか疑う視点がある。優しさを装いながら、実際には相手を利用する存在。ワニというモチーフは、そのような人間の偽善を表すのに適している。本曲は、XTCのブラックなユーモアと鋭い観察眼がよく表れた楽曲である。

9. Rook

「Rook」は、本作の中でも特に暗く、内省的で、重い楽曲である。タイトルのRookはカラス科の鳥を指し、不吉さ、知性、孤独、死の気配を連想させる。XTCのポップなイメージからはやや離れた、深い陰影を持つ曲である。

音楽的には、ピアノを中心とした重々しいアレンジが印象的である。曲はゆっくりと進み、弦や鍵盤の響きが陰鬱な空間を作る。Andy Partridgeのヴォーカルは非常に切実で、ここでは言葉遊びや皮肉よりも、存在への不安が前面に出ている。

歌詞では、死、孤独、自己の消滅、世界からの疎外が感じられる。Rookという鳥は、語り手の内面にある暗い予感の象徴として機能している。XTCの楽曲の中でも、かなり深刻な部類に入る曲であり、アルバムに重要な影を与えている。

10. Omnibus

「Omnibus」は、非常に明るく快活な楽曲であり、タイトルは乗合バス、または多くのものを含む集合体を意味する。曲調には古いミュージカルや英国ポップのような陽気さがあり、XTCの遊び心が強く表れている。

音楽的には、ブラス風のアレンジや軽快なリズムが印象的で、アルバム中でも特に開放的な曲である。Andy Partridgeのヴォーカルは楽しげで、言葉のリズムも軽妙である。ややレトロなポップ感覚があり、The KinksやThe Beatles的な英国ポップの伝統を感じさせる。

歌詞には性的な二重意味やユーモラスな言葉遊びが含まれており、単なる交通手段としてのバスではなく、欲望や人間関係の比喩としても機能している。XTCらしい無邪気さと大人の皮肉が同居した楽曲である。

11. That Wave

「That Wave」は、感情や欲望が波のように押し寄せる感覚をテーマにした楽曲である。波は自然現象でありながら、人間の心理や恋愛の衝動を表す比喩としても有効である。本曲では、理性では制御できない感情の動きが描かれている。

音楽的には、リズムとギターの揺れが波のような動きを作る。曲はやや不安定で、明確なポップ・ソングの形を持ちながらも、内側に強い緊張がある。Andy Partridgeのヴォーカルは、波に飲み込まれる人物のように、感情の高まりと不安を同時に表現している。

歌詞では、ある感情が繰り返し押し寄せ、語り手を支配する様子が描かれる。恋愛の高揚とも、不安の発作とも読める。XTCは感情を単純なロマンティック表現にせず、自然現象や身体感覚と結びつける。本曲はその手法がよく出ている。

12. Then She Appeared

「Then She Appeared」は、本作の中でも特にサイケデリック・ポップ色が強い楽曲である。タイトルは「その時、彼女が現れた」という意味で、突然の出会い、啓示、恋愛の魔法のような瞬間を描いている。The Beatles中期以降やThe Dukes of Stratosphear的な影響が強く感じられる一曲である。

音楽的には、きらびやかなギター、浮遊感のあるコーラス、万華鏡のようなアレンジが特徴である。曲全体に60年代サイケデリック・ポップへの愛情が表れているが、単なる模倣ではなく、XTCらしい緻密な構成とメロディのひねりが加えられている。

歌詞では、女性の出現が世界の見え方を変える瞬間として描かれる。恋愛はここで、日常を変容させる幻視体験のように扱われる。XTCのサイケデリックな美学とポップなロマンティシズムが結びついた、アルバム後半の華やかな楽曲である。

13. War Dance

「War Dance」は、Colin Mouldingによる反戦的な楽曲である。タイトルは「戦争の踊り」を意味し、人間が戦争へ向かう儀式的、反復的な行動を皮肉っている。Colinの穏やかなメロディ感覚と、重いテーマが対照的に響く曲である。

音楽的には、落ち着いたテンポとメロディを持つが、その背後には不穏な空気がある。派手に怒りを爆発させるのではなく、静かに戦争の愚かさを見つめるような曲調である。Colin Mouldingの曲らしく、過度な装飾よりも歌そのものの説得力が重視されている。

歌詞では、戦争がまるで習慣や儀式のように繰り返されることへの批判がある。人類は何度も悲惨な結果を見ているにもかかわらず、同じ踊りを続ける。本曲は、「The Smartest Monkeys」とも通じる人類批評を、より静かで悲しい形で提示している。

14. Wrapped in Grey

「Wrapped in Grey」は、本作の中でも最も美しい楽曲の一つであり、Andy Partridgeのソングライティングの成熟を示す名曲である。タイトルは「灰色に包まれて」と訳せる。世界が灰色に見えるような状態、感情が曇っている状態の中で、想像力や色彩を取り戻すことがテーマになっている。

音楽的には、バロック・ポップ的な優雅さがあり、ピアノ、弦、管楽器風のアレンジが非常に美しく配置されている。メロディは豊かで、サビには静かな高揚がある。派手なロックではなく、室内楽的なポップとして完成度が高い。

歌詞では、人生を灰色に感じる人に対して、世界にはまだ色があると語りかけるような視点がある。これは単なる楽観ではなく、創造力や感受性によって世界を見直すことの重要性を歌っている。XTCの中でも特に感動的な楽曲であり、本作の精神的な中心の一つである。

15. The Ugly Underneath

「The Ugly Underneath」は、表面の美しさの下にある醜さをテーマにした楽曲である。タイトルが示す通り、社会、人間関係、自己像の裏側に潜む不快な真実を暴こうとする曲である。XTCの皮肉と心理的な洞察が強く出ている。

音楽的には、リズムに少し奇妙な揺れがあり、明るいポップとは異なる不穏な質感がある。メロディは魅力的だが、曲全体には不安がまとわりつく。Andy Partridgeのヴォーカルは、表面を剥がしていくような鋭さを持っている。

歌詞では、人々が隠している醜さ、社会の裏側、自己欺瞞が描かれる。美しい外見、礼儀正しい言葉、立派な制度の下に、欲望や暴力や不安が潜んでいる。本曲は、XTCの人間観の苦みを象徴する楽曲である。

16. Bungalow

「Bungalow」は、Colin Mouldingによる楽曲で、老後や退職後の生活、庶民的な夢をテーマにした曲である。バンガローは、海辺や郊外の小さな住まいを連想させ、英国的な慎ましい幸福の象徴として機能している。

音楽的には、穏やかで少しノスタルジックな雰囲気を持つ。メロディは柔らかく、Colinらしい温かな視点が表れている。しかし、その温かさには少しの皮肉や寂しさも含まれる。小さな家を夢見ることは可愛らしいが、それが人生の終着点であることには哀愁もある。

歌詞では、慎ましい生活への憧れ、老後の平穏、人生の縮小が描かれる。大きな野心ではなく、小さな住まいと静かな日々を望む感覚がある。XTCの中でもColin Mouldingの庶民的な観察眼がよく出た楽曲であり、アルバム終盤に独特の味わいを与えている。

17. Books Are Burning

ラストを飾る「Books Are Burning」は、本作の締めくくりにふさわしい、強いメッセージ性を持った楽曲である。タイトルは「本が燃えている」という意味で、焚書、検閲、知識の破壊、思想統制を直接的に想起させる。XTCの社会批評的な側面が、アルバムの最後に大きく現れる。

音楽的には、ギターを中心とした力強いロック・ナンバーであり、終盤にはギター・ソロが展開される。XTCはライブ活動を停止した後、スタジオ・ポップの精密さを追求していたが、本曲にはロック・バンドとしての熱量も残っている。楽曲の終わりに向けて、怒りと解放感が高まっていく。

歌詞では、知識や言葉を消そうとする権力への批判が込められている。本を燃やすことは、単に紙を焼くことではなく、記憶、思想、自由を破壊する行為である。アルバム全体で人間の愚かさや社会の矛盾を描いてきたXTCは、最後に言葉と知性を守ることの重要性を提示する。本作の終曲として非常に力強い。

総評

Nonsuch は、XTCがスタジオ・ポップ・バンドとしての成熟を示した、非常に完成度の高いアルバムである。前作 Oranges & Lemons のような極彩色の過剰さはやや抑えられているが、その代わりに、楽曲ごとのテーマ、アレンジ、メロディ、歌詞のバランスがより緻密になっている。派手な爆発力よりも、職人的な完成度と深い歌詞世界が際立つ作品である。

アルバム全体のテーマは、理想主義と失望、人間の愚かさ、愛情、親子関係、戦争、検閲、日常の小さな幸福である。「The Ballad of Peter Pumpkinhead」では理想主義者の悲劇が描かれ、「The Smartest Monkeys」や「War Dance」では人類の愚かさが批判される。「Holly Up on Poppy」では父親としての愛情が表れ、「Wrapped in Grey」では灰色の世界に色を取り戻す想像力が歌われる。そして「Books Are Burning」では、知識と言葉を守ることの重要性が強く示される。

音楽的には、XTCの多面的な魅力が非常に豊かに展開されている。パワー・ポップとしての明快さ、バロック・ポップ的な優雅さ、英国フォーク的な感覚、サイケデリック・ポップの色彩、ニューウェイヴ由来のひねりが、曲ごとに異なる形で現れる。XTCはこの時期、ライブ・バンドではなく完全にスタジオ・バンドとなっていたが、その制約はむしろ強みに変わっている。ライブ再現を前提としない緻密なアレンジが、本作の魅力を支えている。

Andy Partridgeの楽曲は、皮肉、寓話、社会批評、個人的な感情が複雑に絡み合っている。彼は単純なラヴソングを書くよりも、愛や理想の周囲にある不安、疑い、社会的な圧力を描くことに長けている。一方、Colin Mouldingの楽曲は、アルバムに柔らかさと人間味を与えている。「My Bird Performs」「Bungalow」「War Dance」などは、Andyの鋭さとは異なる、穏やかだが深い視点を持っている。この二人のバランスが、XTCのアルバムに奥行きをもたらしている。

Nonsuch は、XTCの中で最も即効性のある作品ではないかもしれない。Skylarking のような流れるようなコンセプト性や、Oranges & Lemons のような鮮やかなポップの爆発を求めると、やや長く、地味に感じられる可能性もある。しかし、聴き込むほどに各曲の細部、歌詞の皮肉、メロディの巧妙さ、アレンジの丁寧さが見えてくる。これは一聴して派手なアルバムではなく、長く付き合うことで価値が増すタイプの作品である。

日本のリスナーにとって Nonsuch は、XTCの成熟したソングライティングを味わうのに非常に適したアルバムである。英国ポップ、ビートルズ以降のスタジオ・ポップ、パワー・ポップ、ネオ・サイケ、バロック・ポップに関心があるなら、本作の細部には多くの発見がある。また、歌詞に注目すると、単なる美しいギター・ポップではなく、社会批評と個人的感情が複雑に重なった作品であることが分かる。

総じて Nonsuch は、XTCのVirgin期を締めくくるにふさわしい、知的で美しく、苦みを含んだポップ・アルバムである。比類なきものというタイトル通り、彼らは同時代のどのバンドとも完全には似ていない。ロックの衝動、ポップの美しさ、英国的な言葉遊び、社会への批評、家庭的な感情、宗教や権力への疑い。それらが精密なスタジオ・ワークの中で組み合わされている。本作は、XTCというバンドの職人性と孤高性を強く示す重要作である。

おすすめアルバム

1. XTC – Skylarking

XTCの代表作の一つであり、自然、季節、生命、死、信仰をテーマにした流麗なアルバムである。Nonsuch よりも全体の流れが明確で、コンセプト・アルバム的な完成度が高い。XTCの叙情性とスタジオ・ポップの完成形を知るうえで必聴である。

2. XTC – Oranges & Lemons

Nonsuch の前作であり、よりカラフルで過密なサイケデリック・ポップ作品である。「Mayor of Simpleton」などの代表曲を含み、XTCのポップ性と社会批評が鮮やかに表れている。Nonsuch の落ち着いた成熟と比較すると、バンドの振れ幅がよく分かる。

3. XTC – English Settlement

1982年発表の重要作で、ポストパンク的な鋭さから、よりアコースティックで英国的なソングライティングへ移行する過程を示している。社会批評、複雑なリズム、田園的な感覚が共存しており、後のXTCの方向性を決定づけた作品である。

4. The Dukes of Stratosphear – Psonic Psunspot

XTCの変名プロジェクトによるサイケデリック・ポップ作品である。60年代サイケデリアへの愛情とパロディが詰まっており、Nonsuch にも残るサイケデリックな色彩や言葉遊びの背景を理解するうえで重要な関連作である。

5. The Kinks – The Village Green Preservation Society

英国的な田園感覚、皮肉、ノスタルジー、小さな日常へのまなざしを持つ名盤であり、XTCの中期以降の作風と深く響き合う。Nonsuch にある英国的な視点や、庶民的な情景と社会批評の混合を理解するための重要な参照作品である。

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