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EDMを知るなら、まず名盤から
EDMを聴き始めるなら、まずは代表的なアルバムから入るのがわかりやすい。EDMはElectronic Dance Musicの略で、クラブやフェスティバルで鳴らされる電子ダンス音楽を広く指す言葉である。ハウス、トランス、エレクトロ・ハウス、プログレッシブ・ハウス、ダブステップ、フューチャー・ベースなど、多くのスタイルを含んでいる。
EDMはシングルやDJセットで聴かれることが多いジャンルだが、アルバム単位で聴くと、アーティストごとの美学や時代の変化が見えやすい。Daft Punkのようにハウスとポップを結びつけた作品、TiëstoやArmin van Buurenのようにトランスの高揚感をまとめた作品、AviciiやCalvin HarrisのようにEDMをポップ・アルバムとして成立させた作品など、それぞれに違う入口がある。
この記事では、EDMを最初に聴く人にもおすすめしやすく、ジャンルの歴史や広がりを理解するうえで重要なアルバムを10枚紹介する。
EDMとはどんなジャンルか
EDMは、電子楽器やコンピューターを使って作られるダンス・ミュージックの総称である。クラブ・ミュージックにはハウス、テクノ、トランス、ドラムンベース、ガラージなど多くの流れがあり、EDMという言葉は特に2000年代後半から2010年代にかけて、フェスティバル向けの大きな電子ダンス音楽を指す言葉として広まった。
音楽的には、四つ打ちのキック、シンセサイザーのコード、太いベース、ボーカル・フック、ビルドアップからドロップへ向かう構成がよく使われる。曲の途中で音を引き、緊張感を高めてから、大きなドロップで解放する。その流れが、巨大な会場やフェスの観客を一体化させる。
一方で、EDMは単に派手な音だけのジャンルではない。Daft Punkのようにディスコやハウスの流れを受け継ぐ作品もあれば、Deadmau5のように長い展開と音響の精度を重視する作品もある。FlumeやSkrillexのように、エレクトロニカやヒップホップ、ベース・ミュージックの感覚を取り入れた流れも重要である。
EDMの名盤10選
1. Discovery by Daft Punk
2001年発表の『Discovery』は、Daft Punkの代表作であり、EDMを語るうえでも電子ポップを語るうえでも欠かせないアルバムである。フランス出身のDaft Punkは、フレンチ・ハウス、ディスコ、ファンク、ロック、ポップを結びつけ、クラブ・ミュージックを世界的なポップ表現へ押し上げた。
この作品には「One More Time」「Digital Love」「Harder, Better, Faster, Stronger」などが収録されている。サンプリング、ボコーダー、明るいシンセサイザー、強いリズムが組み合わさり、クラブで踊れる音でありながら、ポップ・アルバムとしても非常に聴きやすい。ロボット的な声と人間的なメロディが同居している点も重要である。
初心者におすすめできる理由は、EDMの派手なドロップに入る前に、電子ダンス音楽の楽しさを自然に理解できるからである。曲ごとのフックが強く、アルバム全体もカラフルで、ダンス・ミュージックに慣れていない人でも入りやすい。EDMの前史とポップ化をつなぐ名盤である。
2. Elements of Life by Tiësto
2007年発表の『Elements of Life』は、Tiëstoの代表作のひとつであり、トランスからEDMへ向かう流れを知るうえで重要なアルバムである。Tiëstoはオランダ出身のDJ/プロデューサーで、1990年代から2000年代にかけてトランス・シーンの世界的スターとして活躍し、その後はエレクトロ・ハウスやポップ寄りのEDMにも接近した。
この作品では、伸びやかなシンセサイザー、壮大なビルドアップ、感情的なメロディが大きな特徴である。タイトル曲「Elements of Life」をはじめ、トランス特有の長い展開と、フェス向けのわかりやすい高揚感が共存している。ボーカル曲も含まれており、クラブ・ミュージックとしてだけでなく、アルバムとしての聴きやすさもある。
初心者にとっては、EDMの中にあるトランス由来の高揚感を知る入口になる。ビッグルーム系の派手なドロップとは違い、少しずつ感情を積み上げていく構成が魅力である。EDMが巨大フェスへ向かう前夜の空気を感じられる作品だ。
3. Imagine by Armin van Buuren
2008年発表の『Imagine』は、Armin van Buurenの代表作であり、トランス系EDMを理解するうえで聴きたいアルバムである。Armin van Buurenはオランダ出身のDJ/プロデューサーで、ラジオ番組『A State of Trance』を通じて世界中のトランス・シーンに大きな影響を与えてきた。
このアルバムは、トランスのメロディアスな側面をわかりやすく示している。シンセサイザーの広がり、長いビルドアップ、ボーカルの感情表現が中心にあり、曲ごとに大きな解放感がある。「In and Out of Love」のような楽曲では、ポップな歌とトランスの高揚感が自然に結びついている。
初心者におすすめできる理由は、EDMの中でもメロディを重視する聴き方がしやすいからである。攻撃的な音よりも、感情の流れや美しいシンセの展開を楽しみたい人に向いている。フェス型EDMの土台にあるトランスの魅力を理解できる名盤である。
4. Nothing but the Beat by David Guetta
2011年発表の『Nothing but the Beat』は、David Guettaの代表作であり、EDMが世界的なポップ・ミュージックの中心へ入った時代を象徴するアルバムである。フランス出身のGuettaは、R&B、ヒップホップ、ポップのシンガーと組み、クラブ・ビートと大きなボーカル・フックを結びつけた。
この作品には「Titanium」「Without You」「Turn Me On」など、歌ものEDMの代表曲が収録されている。強いキック、明快なシンセ、巨大なサビ、わかりやすいドロップがあり、クラブだけでなくラジオや配信でも機能するサウンドである。EDMがフェスとチャートの両方で聴かれるようになった時代の空気が詰まっている。
初心者には、歌から入りやすいアルバムである。ボーカルのメロディが前に出ているため、クラブ・ミュージックに慣れていなくても聴きやすい。EDMをポップ・フォーマットとして理解するなら、外せない作品である。
5. Until Now by Swedish House Mafia
2012年発表の『Until Now』は、Swedish House Mafiaの代表的なコンピレーション・アルバムであり、2010年代前半のフェス型EDMを象徴する作品である。Swedish House Mafiaは、Axwell、Steve Angello、Sebastian Ingrossoによるスウェーデンのユニットで、プログレッシブ・ハウスとビッグルームの高揚感を大規模なアンセムへ仕上げた。
この作品には「Save the World」「Antidote」「Don’t You Worry Child」などが収録されている。大きなシンセ・コード、観客が歌えるボーカル、長いビルドアップ、解放感のあるドロップが特徴である。フェスのメインステージで鳴ることを前提にしたような、スケールの大きい音作りがある。
初心者におすすめできる理由は、EDMのアンセム性が非常にわかりやすいからである。曲単位での即効性が強く、巨大な会場で多くの人が同時に反応する理由が理解しやすい。フェス型EDMの代表作として聴きたい一枚である。
6. 18 Months by Calvin Harris
2012年発表の『18 Months』は、Calvin Harrisの代表作であり、EDMとダンス・ポップの接点を示す重要なアルバムである。スコットランド出身のCalvin Harrisは、エレクトロ・ポップから出発し、2010年代にはポップ・スターとのコラボレーションによって世界的なヒットを連発した。
この作品には「Feel So Close」「Sweet Nothing」「We Found Love」「I Need Your Love」などが収録されている。シンプルで強いフック、明るいシンセ、クラブでもラジオでも機能するリズムが特徴である。EDMのビートを使いながら、曲の中心にはあくまでポップな歌がある。
初心者には非常に入りやすい。フェス向けの大きな音と、日常的に聴けるポップ感が両立しているため、EDMをダンス・ポップとして理解したい人に向いている。2010年代のEDMポップを象徴する名盤である。
7. True by Avicii
2013年発表の『True』は、Aviciiの代表作であり、EDMをより幅広いポップ・リスナーへ広げた重要なアルバムである。スウェーデン出身のAviciiは、強いメロディと明快な構成で2010年代EDMを代表する存在となった。
この作品では、フォーク、カントリー、ソウル、ポップの要素がEDMと結びついている。「Wake Me Up」ではアコースティック・ギターと歌を前面に出しながら、EDMのビートとドロップへ展開する。「Hey Brother」や「Addicted to You」でも、歌の温かさと電子的な高揚感が自然に混ざっている。
初心者におすすめできる理由は、クラブ・ミュージックに慣れていなくても、歌とメロディから入れるからである。EDMが単なる電子音の音楽ではなく、シンガーソングライター的な感覚やルーツ音楽の要素とも結びつけられることを示した名盤である。
8. Recess by Skrillex
2014年発表の『Recess』は、Skrillexのフル・アルバムであり、ダブステップ以降のEDMの激しい音像を知るうえで重要な作品である。Skrillexはアメリカ出身のプロデューサーで、ブロステップやベース・ミュージックをメインストリームへ押し上げた存在として知られる。
この作品では、歪んだベース、鋭いシンセ、細かく刻まれたボーカル、激しいドロップが前面に出ている。一方で、レゲエ、ヒップホップ、ポップ、ゲーム音楽的な音色も混ざり、単なる攻撃的な音だけではない広がりがある。Skrillexらしい音の破壊力と、コラボレーションによる多彩さが同居している。
初心者には、EDMの中でも激しい音が好きな人に向いている。ハウスやトランスとは違う、ベース・ミュージック由来の衝撃がある。EDMがロック的なエネルギーやインターネット世代の音感と結びついた例として重要なアルバムである。
9. Random Album Title by Deadmau5
2008年発表の『Random Album Title』は、Deadmau5の代表作であり、プログレッシブ・ハウスの精密な魅力を知るうえで欠かせないアルバムである。カナダ出身のDeadmau5は、派手なアンセムだけでなく、長い展開と緻密な音作りによって、EDMの中でも独自の位置を築いた。
この作品には「Faxing Berlin」「I Remember」などが収録されている。音の立ち上がりが丁寧で、シンセサイザーのフレーズが少しずつ重なり、時間をかけて展開していく。フェス向けEDMのように一気に爆発するというより、クラブ・トラックとしての流れや没入感を重視している。
初心者には、派手なドロップだけではないEDMを知るための一枚としておすすめできる。長めの曲が多いが、音の変化を追うと面白さが見えてくる。電子音楽としての精密さ、反復、グルーヴを味わえる名盤である。
10. Skin by Flume
2016年発表の『Skin』は、Flumeの代表作であり、EDM以降の電子音楽、フューチャー・ベース、エレクトロニカの接点を示す重要なアルバムである。オーストラリア出身のFlumeは、ヒップホップ的なビート感覚、細かな音響処理、ポップなボーカルを組み合わせ、2010年代の電子音楽に大きな影響を与えた。
この作品では、シンセサイザーの音色が柔らかく歪み、ビートは細かく跳ね、ボーカルは断片的に加工される。EDMの明快なドロップとは違い、音の揺れや質感そのものが聴きどころになっている。「Never Be Like You」などでは、ポップな歌と実験的なビートが自然に結びついている。
初心者には、フェス型EDMを聴いた後に進むと面白い。より繊細で、音響的なディテールを楽しめる作品である。EDMがエレクトロニカやR&B、インディー・ポップへ広がっていく流れを知るうえで重要な名盤である。
初心者におすすめの3枚
最初に聴くなら、Daft Punkの『Discovery』がよい。EDMという言葉が一般化する前の作品だが、電子ダンス音楽をポップに開いた名盤であり、曲のメロディ、ビート、音色の楽しさが非常にわかりやすい。クラブ・ミュージックの入口としても、ポップ・アルバムとしても聴きやすい。
次におすすめしたいのは、Aviciiの『True』である。フォークやカントリーの要素をEDMと組み合わせており、歌から入れるため初心者にも親しみやすい。EDMが巨大なフェス音楽であるだけでなく、幅広いリスナーに届くポップになったことを理解できる。
もう一枚選ぶなら、Swedish House Mafiaの『Until Now』である。フェス型EDMのアンセム性が強く、ビルドアップからドロップへ向かう構成、観客全体で歌えるサビ、大きなシンセの解放感がわかりやすい。EDMのメインステージ感を体験するには最適な作品である。
関連ジャンルへの広がり
EDMは、エレクトロニカと近い場所にありながら、目的や聴かれ方が少し異なる。EDMはクラブやフェスで身体を動かすことを重視する一方、エレクトロニカは音響、質感、リズムの実験に意識が向くことが多い。ただし、Flumeの『Skin』やSkrillexの『Recess』のような作品では、EDMのエネルギーとエレクトロニカ的な音響処理が重なっている。
オルタナティブ・ロックやインディー・ポップとの接点もある。Skrillexの音にはロック的な激しさがあり、Aviciiはフォークやカントリーの歌をEDMへ取り入れた。Flumeはインディー系のボーカルやR&B的な感覚を電子音楽へ接続し、Daft PunkやCalvin Harrisはディスコ、ファンク、ポップの文脈をダンス・ミュージックへ変換している。
EDMは単独で閉じたジャンルというより、さまざまなポップ・ミュージックを大きなダンス・フォーマットへ変える場でもある。そこからハウス、トランス、ダブステップ、フューチャー・ベース、エレクトロニカへ広げていくと、電子音楽全体の地図が見えやすくなる。
まとめ
EDMの名盤をたどると、このジャンルが単なる派手なフェス音楽ではないことがわかる。Daft Punkの『Discovery』は、ハウス、ディスコ、ポップを結びつけ、電子ダンス音楽を世界的なポップ表現へ広げた。Tiëstoの『Elements of Life』とArmin van Buurenの『Imagine』は、トランス由来の高揚感を知るうえで重要である。
David Guettaの『Nothing but the Beat』とCalvin Harrisの『18 Months』は、EDMがポップ・チャートと結びついた時代を象徴する作品である。Swedish House Mafiaの『Until Now』はフェス型EDMのアンセム性を示し、Aviciiの『True』はフォークやカントリーの歌を取り入れてEDMをさらに広い場所へ押し広げた。Skrillexの『Recess』はベース・ミュージックの激しさを、Deadmau5の『Random Album Title』はプログレッシブ・ハウスの精密さを、Flumeの『Skin』はEDM以降の音響的な広がりを示している。
まずは『Discovery』『True』『Until Now』の3枚から聴き始めると、EDMのメロディ、ポップ性、フェス感がつかみやすい。そこからトランス、ダブステップ、プログレッシブ・ハウス、エレクトロニカ寄りの作品へ広げていけば、EDMというジャンルの奥行きが自然に見えてくる。

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