発売日: 1983年7月15日
ジャンル: ゴシックロック、ポストパンク、アートロック
Bauhausの4枚目にして最終的なスタジオアルバムBurning from the Insideは、バンド内の葛藤と進化が交錯した複雑な作品である。このアルバムは、バンドメンバー間の不和とPeter Murphyの病気により、Daniel Ash、David J、Kevin Haskinsが中心となって制作されたため、バンド全体のダイナミクスがこれまでの作品とは異なっている。結果として、Bauhausの音楽的冒険心がより広がり、実験的で多様性に富んだサウンドが特徴となった。
このアルバムは、ゴシックロックとしての暗いムードを維持しながら、ポップ、サイケデリック、アコースティックなどの要素を取り入れることで、Bauhausの音楽的幅広さを示している。最終作という背景もあり、バンドの多面的な個性とその進化を感じさせる重要な一枚だ。
各曲ごとの解説
1. She’s in Parties
アルバムのリードシングルであり、Bauhausの代表曲のひとつ。映画産業の影響と文化的な崩壊をテーマにした歌詞が印象的で、シンプルながらも中毒性のあるリズムとメロディが特徴。ギターリフとベースラインが心地よいトラックで、リスナーをアルバムの世界へと引き込む。
2. Antonin Artaud
劇作家アントナン・アルトーへのオマージュとして書かれた楽曲で、詩的かつシュールな歌詞が魅力的。アコースティックギターを主体としたサウンドが、これまでのBauhausのダークなスタイルとは一線を画している。
3. Wasp
短く鋭いインストゥルメンタルトラック。実験的な要素が強く、次曲へのブリッジとして機能している。
4. King Volcano
フォークロック的なアプローチを感じさせる楽曲で、穏やかなアコースティックサウンドが特徴。Bauhausらしい暗さを保ちながらも、どこか温かみを感じさせる。
5. Who Killed Mr. Moonlight?
ジャズやアートロックの要素を取り入れた一曲。David Jのボーカルがリードを取っており、バンドの多様な才能を感じさせる楽曲だ。ピアノのメロディが哀愁を漂わせ、楽曲に深みを与えている。
6. Slice of Life
ポップ寄りのサウンドが新鮮な楽曲。アップテンポのリズムとキャッチーなメロディが特徴で、Bauhausの柔軟な音楽性を象徴する一曲。
7. Honeysuckle Man
実験的な構造と、暗いエネルギーを感じさせる楽曲。歪んだギターサウンドと反復的なリズムが、独特の緊張感を生み出している。
8. Kingdom’s Coming
アコースティックな楽曲で、静けさとドラマチックな雰囲気が共存している。叙情的な歌詞が印象的で、バンドの繊細な一面が表れている。
9. Burning from the Inside
タイトル曲であり、アルバムの中心的な楽曲。内面的な苦悩と変化をテーマにした歌詞が、深い感情を喚起する。エネルギッシュなパフォーマンスとともに、アルバム全体のダイナミズムを体現している。
10. Hope
アルバムの締めくくりにふさわしい穏やかなトラック。静かな美しさが際立ち、リスナーに深い余韻を残す。
フリーテーマ: 解散前夜に描かれた多様な音楽の風景
Burning from the Insideは、Bauhausのキャリアを締めくくるアルバムとして、バンドの全てを詰め込んだ一枚である。Peter Murphyの病気による不在を逆手に取り、他のメンバーが主導したことで、従来のBauhausサウンドに新しい要素が加わった。このアルバムは、内部分裂の象徴であると同時に、創造的エネルギーの爆発でもあり、バンドの多面性を強く感じさせる作品となっている。
アルバム総評
Burning from the Insideは、Bauhausが最後に残した遺産として、彼らの音楽的進化と個々の才能を余すところなく示したアルバムである。ゴシックロックの枠を超えた多様なアプローチが魅力であり、従来のダークでミステリアスなスタイルに加え、ポップやアコースティックの要素が新鮮さをもたらしている。この作品は、バンドが解散という選択をする前に、音楽的な可能性を最大限に追求した証として評価されるべきだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Closer by Joy Division
ポストパンクとダークな感情表現が共通し、Bauhausファンに響く作品。
Pornography by The Cure
陰鬱な雰囲気と内省的な歌詞が、Burning from the Insideのムードと共鳴する。
First and Last and Always by The Sisters of Mercy
ゴシックロックの代表作。暗さとメロディアスさのバランスが似ている。
Hounds of Love by Kate Bush
実験的なアプローチとドラマチックな楽曲が、Bauhausの多様性を好むリスナーに最適。
Ocean Rain by Echo & the Bunnymen
メランコリックで芸術的なサウンドが、Bauhausのファンに響く一枚。
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