発売日: 1980年10月3日
ジャンル: ポストパンク、ゴシックロック
In the Flat Fieldは、ゴシックロックの先駆者Bauhausによるデビューアルバムであり、そのジャンルの原点として位置付けられる重要な作品である。このアルバムは、暗闇を纏うような不穏なサウンドと、詩的かつ謎めいた歌詞が特徴的で、当時の音楽シーンに衝撃を与えた。Bauhausの音楽は、ポストパンクの攻撃性と芸術的なアプローチが融合しており、特にこのアルバムでは、メンバーの個性的な才能が結集している。
プロデューサーのOliver Weeksとメンバー自身が手掛けたサウンドは、ギターの鋭いカッティング、重厚なリズムセクション、そしてPeter Murphyのカリスマ的なボーカルが一体となり、独特の世界観を構築している。タイトルの通り、音楽は平坦で単調ではなく、むしろ感情的な起伏に富み、リスナーを不安定な美の世界へと誘う。
各曲ごとの解説
1. Double Dare
アルバムの幕開けを飾る攻撃的なナンバー。Daniel Ashのギターリフが尖った刃物のように切り込んでくる一方で、Murphyのボーカルは威圧的で、曲全体に緊張感が漂う。暗闇の中で声が反響するようなサウンドデザインが特徴的。
2. In the Flat Field
タイトル曲であり、アルバムの核となる楽曲。不安定でカオティックな雰囲気が漂い、メランコリックなギターと反復的なリズムが、感情の渦を巻き起こす。歌詞は詩的で暗示的だが、内面的な苦悩と向き合うような内容となっている。
3. A God in an Alcove
比較的メロディックで聴きやすい楽曲。アイロニカルな歌詞と、コーラスでのキャッチーなフレーズが特徴的で、リズムセクションの躍動感が際立つ。
4. Dive
短く鋭いエネルギーに満ちた楽曲。シンプルながらも強烈なリフとドラムが曲全体を支配し、スピーディーな展開が印象に残る。
5. The Spy in the Cab
ミニマルなベースラインと不気味な雰囲気が漂う楽曲。Murphyの冷たい歌声と、アシュのギターが作り出すサウンドスケープは、リスナーを不安定な心理状態へ引き込む。
6. Small Talk Stinks
反復的なリズムとボーカルが中心の楽曲で、タイトル通り日常の空虚さを皮肉った歌詞が印象的。楽器の絡み合いが曲に独特のテンションを生んでいる。
7. St. Vitus Dance
ユーモアと狂気が混ざり合った楽曲。アップテンポのリズムと奇妙な歌詞が特徴で、アルバムの中で異彩を放つ一曲。
8. Stigmata Martyr
宗教的なイメージを取り入れた暗くドラマチックな楽曲。リズムセクションの深い響きと、Murphyの神秘的なボーカルが楽曲全体を支配している。
9. Nerves
アルバムのクライマックスを飾る長尺の楽曲で、徐々に高まる緊張感が特徴。反復的なリフとダークなムードが、リスナーを深い没入状態に引き込む。
フリーテーマ: ゴシックロックの黎明を告げた作品としての意義
In the Flat Fieldは、ゴシックロックというジャンルの基礎を築いたアルバムとして、後のアーティストに多大な影響を与えた。暗闇に潜む恐怖や不安、孤独感といったテーマを音楽に反映させるアプローチは、後のThe CureやSiouxsie and the Bansheesなどにも影響を与えた。このアルバムは、単なる音楽作品にとどまらず、一種の芸術表現として高い評価を受けている。
アルバム総評
In the Flat Fieldは、Bauhausのキャリアの出発点としてだけでなく、ポストパンクから派生したゴシックロックの基盤を築いた重要な作品である。暗くも美しい音楽と、詩的で内省的な歌詞がリスナーの心を捉え続けている。その影響力は、発売から40年以上経った今でも色褪せることなく、ダークな音楽を愛するファンにとって必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Pornography by The Cure
ダークで感情的なポストパンクの名作。陰鬱なムードと詩的な歌詞が共通する。
Ju Ju by Siouxsie and the Banshees
ゴシックロックの重要作。緊張感のあるサウンドと神秘的なボーカルがBauhausに通じる。
Closer by Joy Division
深い絶望感とミニマルなサウンドが特徴。ゴシックロックへの橋渡し的な作品。
First and Last and Always by The Sisters of Mercy
ゴシックロックをさらに深化させた作品で、Bauhausのファンにも刺さる一枚。
Unknown Pleasures by Joy Division
ポストパンクの金字塔。陰鬱なムードとシンプルなアレンジがBauhaus好きにおすすめ。
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