発売日: 2021年6月25日
ジャンル: ドリームポップ、インディーポップ、ラテンポップ
The MaríasのデビューアルバムCinemaは、そのタイトルが示す通り、映画のような美しいシーンが次々と展開される感覚を抱かせる一枚だ。過去のEPシリーズSupercleanで示したスタイリッシュで洗練されたサウンドをさらに進化させ、ジャズやソウル、ラテン、エレクトロニカの要素を取り入れた多彩な楽曲が揃っている。
マリア・ズニガの夢のように柔らかいボーカルと、ジョシュ・コンウェイの精巧なプロダクションが見事に融合し、都会的で洗練されたサウンドスケープを作り上げている。英語とスペイン語が交錯する歌詞や、温かみのあるレトロな質感とモダンなビートの融合は、The Maríasの音楽的な個性をさらに確立している。
各曲ごとの解説
1. Just a Feeling
アルバムの幕開けを飾るスムーズなトラックで、映画のイントロのようなムードを演出。メロウなビートとマリアのボーカルが聴き手を引き込む。
2. Call U Back
ダンサブルなリズムが心地よい一曲。恋愛の駆け引きを描いた歌詞が、ポップでキャッチーなメロディに乗せて展開される。
3. Hush
アルバムのリードシングルで、セクシーでミステリアスな雰囲気を持つ楽曲。スリリングなビートと抑えたボーカルが印象的で、映画のサスペンスシーンを彷彿とさせる。
4. All I Really Want Is You
柔らかなギターリフと軽快なリズムが特徴の楽曲。シンプルな愛のメッセージが、楽曲全体に温かみを与えている。
5. The Mice Inside This Room
アルバム中でも特に実験的なトラックで、囁くようなボーカルとミニマルなアレンジが幻想的な雰囲気を作り出している。
6. Spin Me Around
ロマンチックなトラックで、恋愛の高揚感をテーマにしている。シンセの柔らかな音色が楽曲に夢幻的なムードを加えている。
7. Little by Little
スペイン語の歌詞が美しい楽曲で、シンプルなメロディと繊細なボーカルが際立つ。愛や希望をテーマにした詩的な歌詞が印象的。
8. Heavy
リズムセクションが際立つファンキーな楽曲。都会的でセクシーなムードが楽曲全体を支配している。
9. Un Millón
スペイン語の歌詞が特徴的なラテンポップトラックで、ノスタルジックなメロディが心に残る。マリアのボーカルが特に優雅に響く一曲。
10. Fog as a Bullet
控えめなアレンジと囁くようなボーカルが心に響くバラード。霧の中のような曖昧さや内省をテーマにしている。
11. Talk to Her
シンプルなギターメロディとマリアの柔らかなボーカルが際立つ一曲。愛や葛藤を描写した歌詞が心に刺さる。
12. To Say Hello
アルバムのラストを締めくくる感動的なバラード。別れや再会をテーマにした歌詞が、静かで美しいメロディに乗せて語られる。
フリーテーマ:映画的な音楽体験
Cinemaは、そのタイトル通り、映画のサウンドトラックのような体験をリスナーに提供するアルバムだ。各楽曲が異なるシーンを描き出しており、リスナーはそれぞれの物語を追体験するような感覚を味わえる。モダンなエレクトロニカの要素やラテンの影響を取り入れながら、The Marías独自のスタイリッシュな音楽性が全編にわたって感じられる。
アルバム総評
Cinemaは、The Maríasがその音楽的アイデンティティを確立すると同時に、新たな可能性を追求したアルバムだ。ドリーミーで洗練されたサウンド、英語とスペイン語が交差する詩的な歌詞、そしてレトロとモダンが共存するアレンジが、バンドの成熟と進化を示している。特に「Hush」や「Un Millón」、「To Say Hello」といった楽曲は、彼らの代表曲として長く愛されるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Superclean Vol. I by The Marías
The Maríasの音楽の基盤を感じられるデビューEP。
Superclean Vol. II by The Marías
本作の前作とも言えるEPで、洗練されたサウンドが楽しめる。
Devotion by Beach House
ドリームポップ好きにおすすめの、美しいサウンドスケープを持つ作品。
Chilombo by Jhené Aiko
リラックスした雰囲気と感情的な歌詞が共通する一枚。
Mujeres by Y La Bamba
スペイン語の歌詞とエキゾチックな雰囲気が好きな人にぴったりのアルバム。
コメント