発売日: 2005年5月24日
ジャンル: オルタナティブロック、パンクロック、ハードロック
Sleater-Kinneyの7枚目となるスタジオアルバムThe Woodsは、それまでのパンクロック中心のサウンドからさらに一歩踏み込み、ノイジーでヘヴィなギターとダイナミックなアレンジを取り入れた意欲作だ。このアルバムは、バンドが持つエネルギーと創造性を最大限に引き出し、90年代のライオット・ガールムーブメントの象徴的な存在から、ロックバンドとしての地位を確固たるものにした。
プロデューサーには、NirvanaやPixiesを手掛けたDave Fridmannが起用され、ギターの歪みや厚みのあるサウンドスケープを強調したアプローチが特徴だ。アルバム全体を通じて、Sleater-Kinneyのこれまでのパンク的な勢いはそのままに、より複雑で重厚な楽曲が展開されている。
各曲ごとの解説
1. The Fox
アルバムのオープニングを飾る力強いロックナンバー。ノイジーなギターリフと、キャリー・ブラウンスタインのエモーショナルなボーカルが、アルバム全体の方向性を示している。
2. Wilderness
アップテンポでダイナミックな楽曲。自由への渇望を歌った歌詞が、力強いリズムと絡み合い、リスナーを圧倒する。
3. What’s Mine Is Yours
重厚なギターリフとスローテンポのビートが印象的なトラック。支配や所有をテーマにした歌詞が、ドラマチックな展開とともに心に響く。
4. Jumpers
実際の出来事に触発された、痛みと絶望を描いた楽曲。メロディアスなギターとタッカーの感情的なボーカルが、曲全体を引き締めている。
5. Modern Girl
アルバム中でも異色のトラックで、控えめなアコースティックギターと皮肉に満ちた歌詞が印象的。徐々に増していくノイズが、曲のテーマに不穏なエッジを加えている。
6. Entertain
アルバムのリードトラックであり、娯楽と芸術の境界線を問う挑発的な楽曲。力強いリフとブラウンスタインのボーカルが、曲に迫力を与えている。
7. Rollercoaster
スリリングなギターとスピード感のあるリズムが印象的な一曲。ジェットコースターのような感情の揺れを描写した歌詞が特徴的。
8. Steep Air
不穏で緊張感のあるサウンドが特徴の楽曲。複雑な感情や葛藤をテーマにした歌詞が、深い印象を与える。
9. Let’s Call It Love
11分を超える大作で、アルバムのハイライトとも言える楽曲。長尺のギターソロとジャムセッション的な展開が、バンドの大胆なアプローチを象徴している。
10. Night Light
アルバムを締めくくる壮大なバラード。希望と再生をテーマにした歌詞が、美しいメロディとともに心に残る。
フリーテーマ:ロックへの挑戦と進化
The Woodsは、Sleater-Kinneyが自らの音楽性を再定義したアルバムだ。ノイズ、ディストーション、長尺の構成といった要素を取り入れることで、従来のパンクロックの枠を超えたダイナミックな作品となっている。このアルバムを通じて、バンドは単なるライオット・ガールの象徴から、本格的なロックバンドとしての地位を確立した。
アルバム総評
The Woodsは、Sleater-Kinneyの音楽的野心と進化が結実した一枚だ。ヘヴィでノイジーなサウンドと感情的な歌詞が見事に融合し、これまでの作品とは一線を画す力強い作品となっている。特に「Entertain」や「Jumpers」、「Let’s Call It Love」などの楽曲は、バンドの新たな魅力を象徴する楽曲として長く語り継がれるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Dig Me Out by Sleater-Kinney
パンクロック中心のエネルギーに満ちた名作。
Daydream Nation by Sonic Youth
ノイジーなギターと芸術性の高い楽曲が共通するアルバム。
Rid of Me by PJ Harvey
激しい感情表現と大胆なアプローチが共通する作品。
Fun House by The Stooges
ロックの原点に立ち返るようなエネルギッシュなサウンドが楽しめる。
To Bring You My Love by PJ Harvey
ダークで挑戦的なサウンドと深い歌詞が共通する一枚。
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