発売日: 1992年9月28日
ジャンル: ブレイクビート・ハードコア、レイブ
1990年代初頭、英国の音楽シーンはレイブカルチャーの熱狂に包まれていた。その中心に現れたのが、エレクトロニック・ミュージックの革新者、The Prodigyである。彼らのデビューアルバム 『Experience』 は、1992年9月28日にXL Recordingsからリリースされ、瞬く間にシーンの象徴的存在となった。
Liam Howlettが全曲の作曲とプロデュースを手掛け、当時のメンバーであるMaxim Realityが最終トラックでボーカルを担当している。アルバムは、SL2、Carl Cox、Moby、Orbital、Aphex Twinなど、当時のブレイクビート・ハードコアシーンのアーティストたちへのリスペクトを込めた作品となっている。
『Experience』は、UKアルバムチャートで最高12位を記録し、英国でプラチナ認定を受けるなど、商業的にも成功を収めた。また、ポーランドでもゴールド認定を獲得している。
以下、各トラックの詳細なレビューをお届けする。
1. Jericho
アルバムの幕開けを飾るこのトラックは、エネルギッシュなシンセサイザーのリフと強烈なビートが特徴的だ。まるで聴き手を一気にダンスフロアへ引き込むかのような勢いがあり、初期レイブシーンの興奮をそのまま伝えてくれる。
2. Music Reach (1/2/3/4)
軽快なピアノリフとボーカルサンプルが融合し、ポジティブな雰囲気を醸し出している。曲全体を通して、リズムの変化やブレイクが巧みに配置されており、飽きさせない展開が魅力的だ。
3. Wind It Up
このトラックは、独特のベースラインとキャッチーなメロディーが印象的である。サンプリングされたボーカルがリズムに乗せて繰り返され、ダンサブルな雰囲気を強調している。
4. Your Love (Remix)
オリジナルバージョンからさらに洗練されたこのリミックスは、深みのあるベースとドリーミーなシンセサウンドが融合している。夜のドライブにぴったりな、心地よい浮遊感を提供してくれる。
5. Hyperspeed (G-Force Part 2)
タイトル通り、高速なビートとエネルギッシュなサウンドが特徴のトラックだ。疾走感あふれる展開は、まるで音のジェットコースターに乗っているかのようなスリルを味わえる。
6. Charly (Trip Into Drum and Bass Version)
子供向けのテレビ番組のサンプルを巧みに取り入れたこの曲は、ユーモラスでありながらも深みのあるビートが印象的だ。ドラムンベースの要素を巧みに取り入れ、レイブミュージックの多様性を感じさせる一曲だ。
7. Out of Space
アルバムの中でも最も有名なトラックの一つ。レゲエボーカルサンプルと疾走感のあるビートが絶妙に融合し、ポップかつダンサブルなサウンドを生み出している。サビ部分の “I’m gonna send you into outer space!” というフレーズが印象的で、ライブでも欠かせない一曲だ。
8. Everybody in the Place (155 and Rising)
シンプルかつ中毒性のあるサウンドが特徴のこのトラック。アップテンポなビートと反復するリフが、フロアを一瞬で熱狂の渦に巻き込む。Liam Howlettのプロデュース力が光る一曲だ。
9. Weather Experience
他のトラックとは一線を画すこの楽曲は、アンビエントなシンセサイザーと自然のサンプリングが融合したサウンドスケープが広がる。タイトルの通り、まるで天候や自然を音で表現したかのような美しさがあり、アルバムの中でも異彩を放っている。
10. Fire (Sunrise Version)
炎のように燃え上がるビートとエネルギッシュなサウンドが特徴のこのトラック。サイレンのような効果音と、アップリフティングなリズムが相まって、ピークタイムのクラブにぴったりな一曲だ。
11. Ruff in the Jungle Bizness
ジャングルビートとハードコアサウンドが絶妙に融合したトラック。躍動感あふれるビートが、まるで密林を駆け抜けるようなスリルを与えてくれる。
12. Death of the Prodigy Dancers (Live)
アルバムの締めくくりを飾るのは、ライブ録音によるエネルギッシュな一曲。Maxim Realityのボーカルが炸裂し、荒々しいサウンドが耳に残る。まさにThe Prodigyのライブパフォーマンスの力強さをそのまま閉じ込めたトラックだ。
The Prodigy の時代を超えた革新
『Experience』は、1990年代初期のレイブカルチャーの象徴でありながら、その後のエレクトロニック・ミュージックシーンにも大きな影響を与えた作品だ。Liam Howlettの類まれな才能によって、サンプリングとビートが革新的に融合され、今なお聴き手を魅了し続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
1. Music for the Jilted Generation by The Prodigy
The Prodigyの2作目で、よりダークかつアグレッシブなサウンドが特徴。レイブからビッグビートへ進化する過程が見える作品だ。
2. Dubnobasswithmyheadman by Underworld
エレクトロニック・ミュージックの革命児Underworldの傑作。アンビエントとレイブの融合が美しく、没入感のあるサウンドが広がる。
3. Selected Ambient Works 85-92 by Aphex Twin
エレクトロニックミュージックの鬼才、Aphex Twinのデビュー作。アンビエントとIDMの原点とも言える名盤。
4. Second Toughest in the Infants by Underworld
テクノ、ブレイクビート、ハウスの要素を完璧に融合させたUnderworldの名盤。エモーショナルなサウンドが耳に残る。
5. Exit Planet Dust by The Chemical Brothers
ビッグビートの旗手The Chemical Brothersのデビュー作。パワフルなビートとサイケデリックなサウンドが印象的。
『Experience』は、レイブカルチャーの熱狂を詰め込んだ歴史的名盤である。The Prodigyの原点を体感するなら、このアルバムを聴かずにはいられない。
コメント