発売日: 2014年11月11日
ジャンル: インディーロック、エモ、ローファイ
『Bury Me at Makeout Creek』は、ミツキのキャリアを決定づけた重要な作品であり、彼女がクラシカルなアレンジからローファイでパンキッシュなインディーロックへと転向した記念碑的なアルバムだ。本作では、ギター主体の荒々しいサウンドとミツキの率直な歌詞が融合し、感情の生々しさと衝撃を存分に感じられる仕上がりとなっている。タイトルはテレビアニメ『ザ・シンプソンズ』のセリフから取られており、ミツキのユーモアやアイロニーも垣間見える。
テーマは孤独やアイデンティティ、愛、そしてそれに伴う痛みや不安。アルバム全体を通じて、抑えきれない感情が爆発する瞬間と、それを静かに受け入れる瞬間が交互に現れる。音楽的には荒削りでありながら、その不完全さがアルバムの魅力を際立たせ、聴き手の心に直接刺さるような力強さを持つ作品だ。
トラック解説
- Texas Reznikoff
静かなギターアルペジオで始まるイントロから、ミツキの声が優しく響く一曲。歌詞では愛や居場所に対する願望が描かれ、シンプルなアレンジがその切実さを際立たせている。 - Townie
激しいギターリフとエネルギッシュなボーカルが特徴の楽曲。小さな町に閉じ込められた若者の欲求不満や反抗心が、力強いサウンドとともに爆発する。「I want a love that falls as fast as a body from a balcony」という歌詞が強烈に心に残る。 - First Love / Late Spring
ピアノとギターが織りなす切ないイントロから始まる楽曲。初恋の甘さと、それが終わった後に訪れる喪失感が美しくも痛々しく描かれている。ミツキの歌声が感情のピークを的確に捉えている。 - Francis Forever
軽快なギターポップ風のメロディーが特徴の楽曲だが、歌詞には孤独や渇望が込められている。「I’ll love some Francis forever」というフレーズに、片想いの切なさと諦めが滲む。 - I Don’t Smoke
ギターとミツキの低めのボーカルが印象的な楽曲。タイトルとは裏腹に、煙草を吸わずにはいられないような衝動的な感情が描かれる。リフレインがじわじわと心に染み込む。 - Jobless Monday
ピアノを中心とした穏やかなアレンジの中に、生活の不安や絶望がリアルに描かれる一曲。タイトルの「Jobless Monday」という言葉が、無力感と時間の虚しさを象徴している。 - Drunk Walk Home
激しいノイズと歪んだギターが特徴の楽曲。酔い歩く帰り道を描いたこの曲は、怒りと悲しみが渦巻くカタルシスのような存在感を放つ。 - I Will
穏やかで癒やしのようなメロディーが流れる中で、献身的な愛を歌うバラード。「I will take good care of you」という繰り返しが、愛する人への深い思いを伝える。 - Carry Me Out
スローテンポな楽曲ながらも、感情の揺れを感じさせる曲構成が印象的。愛と死に対するミツキの複雑な感情が静かに響く。 - Last Words of a Shooting Star
アルバムのラストを飾るこの曲は、切なくも美しいフィナーレにふさわしい一曲。タイトル通り、流星の最後の輝きを描くように、人生や愛の儚さを歌う。シンプルなアコースティックアレンジが深い余韻を残す。
アルバム総評
『Bury Me at Makeout Creek』は、ミツキの音楽的アイデンティティを確立し、彼女をインディーロック界の新星として押し上げた作品だ。ローファイなサウンドと感情的な歌詞が融合し、聴き手に直接語りかけるような親密さがある。その荒々しさと正直さが、アルバム全体を通じて心を揺さぶり、繰り返し聴くたびに新たな発見をもたらす。この作品は、ミツキの魅力を凝縮したターニングポイントであり、インディーロックの名盤のひとつと言えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Stranger in the Alps by Phoebe Bridgers
繊細な歌詞と感情的なボーカルが特徴で、ミツキの持つ内面的な表現と共鳴するアルバム。
Home, Like Noplace Is There by The Hotelier
ローファイなエモサウンドと、個人的な物語を切実に描く歌詞が共通点として挙げられる。
Puberty 2 by Mitski
ミツキの進化を感じるアルバム。『Bury Me at Makeout Creek』の世界観をさらに洗練させたサウンドが楽しめる。
Turn Out the Lights by Julien Baker
孤独や痛みをテーマにした深い内省的なアルバムで、感情的なカタルシスがミツキ作品に通じる。
American Football by American Football
エモの名盤で、感情的な歌詞とメロディーが、ミツキの持つ繊細さや誠実さと響き合う。
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