発売日: 2014年5月12日
ジャンル: サイケデリックロック、ブルースロック、オルタナティブロック
The Black Keysの8作目のスタジオアルバム「Turn Blue」は、バンドがブルースロックから一歩踏み出し、より内省的でサイケデリックな音楽性を探求した作品である。前作「El Camino」でキャッチーでエネルギッシュなガレージロックを確立した後、本作ではプロデューサーに再びDanger Mouseを迎え、アンビエントで夢幻的なサウンドを作り上げた。
アルバム全体には、Dan Auerbachの離婚による個人的な悲しみや、心の葛藤が色濃く反映されており、バンドのこれまでの楽曲よりも感情的でメランコリックなトーンが特徴的である。ブルースやロックの要素は残しつつも、サイケデリックやR&B、ソウルの影響を強く感じさせるこのアルバムは、The Black Keysの新たな音楽的な領域を示す一枚となっている。
トラック解説
- Weight of Love
アルバムの幕開けを飾る壮大な7分の楽曲で、ゆったりとしたイントロとAuerbachの叙情的なギターソロが印象的。愛の重みをテーマにした歌詞が、楽曲の広がりあるサウンドとともにリスナーを包み込む。 - In Time
グルーヴィーなベースラインとドリーミーなサウンドが特徴のトラック。愛の終焉とそれに伴う痛みをテーマにした歌詞が、どこか切なく響く。 - Turn Blue
アルバムタイトル曲で、サイケデリックなアレンジが際立つ一曲。タイトル通り、憂鬱でブルーな感情を巧みに表現しており、Auerbachの繊細なボーカルが胸に迫る。 - Fever
アルバムのリードシングルで、シンセサウンドとダンサブルなリズムが耳に残るキャッチーなトラック。中毒的な恋愛を描いた歌詞と軽快なビートが絶妙にマッチしている。 - Year in Review
ソウルフルなメロディとリズムセクションが楽曲を支える一曲。歌詞では失敗した関係について振り返りつつも、どこか希望が感じられる。 - Bullet in the Brain
静かに始まるイントロから、劇的な展開を見せるサイケデリックロック。深層心理の葛藤を描いた歌詞と、幻想的なサウンドが融合している。 - It’s Up to You Now
ブルースとロックのエネルギーが感じられるトラックで、The Black Keysのルーツに回帰したような力強さがある。ギターリフが特に印象的。 - Waiting on Words
切なくも美しいメロディが特徴のバラード。恋愛における期待と失望をテーマにした歌詞が、Auerbachのボーカルによって感情的に表現されている。 - 10 Lovers
エレクトロポップの影響が感じられるトラックで、リズミカルなシンセサウンドと軽快なビートが融合している。失恋の痛みと孤独を描いた歌詞が特徴的。 - In Our Prime
ピアノを中心に据えたドラマチックな楽曲で、Auerbachの過去への想いと喪失感が歌詞に込められている。徐々に盛り上がるサウンドスケープがアルバムの中でも際立っている。 - Gotta Get Away
アルバムを締めくくる軽快なロックナンバーで、ロードムービーのような歌詞が自由な雰囲気を醸し出している。アルバム全体の重いトーンから解放感を感じさせるラストにふさわしい一曲だ。
アルバム総評
「Turn Blue」は、The Black Keysがこれまでのブルースロックを超え、より深く感情的でサイケデリックな音楽世界を切り開いた作品である。個人的な悲しみや喪失感を内包した歌詞と、緻密に作り込まれたサウンドプロダクションが調和し、アルバム全体に一貫したテーマ性とアート性をもたらしている。
前作「El Camino」とは対照的に、ダンサブルでポップな面よりも内省的なトーンが際立つ本作は、バンドの新たな挑戦と音楽的成長を示している。特に「Weight of Love」や「Turn Blue」、「Fever」といった楽曲は、The Black Keysの多様な音楽性を象徴する名曲であり、彼らのキャリアにおいて特別な地位を占める一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Brothers by The Black Keys
ブルースロックを基調にした前作。「Turn Blue」の内省的なトーンのルーツを感じられる。
AM by Arctic Monkeys
ダークで洗練されたロックサウンドが、「Turn Blue」の感情的なトーンと響き合う作品。
Dark Side of the Moon by Pink Floyd
サイケデリックなサウンドスケープと哲学的なテーマが、「Turn Blue」と共通する傑作。
Sea Change by Beck
失恋や内省をテーマにしたアコースティックアルバムで、「Turn Blue」と同じ感情的な深みがある。
Attack & Release by The Black Keys
Danger Mouseとの初コラボ作品で、ブルースとサイケデリックロックの融合が楽しめるアルバム。
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