発売日: 1992年9月28日
ジャンル: アートロック / ワールドミュージック / アンビエント
Usは、ピーター・ガブリエルが前作Soから6年の歳月をかけて完成させた6作目のスタジオアルバムである。個人的なテーマに深く根ざした本作は、愛、失恋、孤独、自己探求といった感情を音楽で表現した作品だ。アルバム制作中にガブリエルは結婚生活の破綻や新しい関係の形成を経験し、それらが歌詞やサウンドに影響を与えている。
前作のポップな要素を引き継ぎながらも、エスニックなリズムや深いアンビエントサウンドをさらに追求しており、ワールドミュージック、エレクトロニカ、オーケストラといった多彩な音楽スタイルが融合している。プロデュースはガブリエル自身と盟友ダニエル・ラノワが担当し、彼のサウンドの奥行きを際立たせている。特に、シングルカットされたDigging in the DirtやSteamは、彼の感情的な深みと音楽的な野心を象徴する楽曲だ。
各曲解説
1 Come Talk to Me
アルバムのオープニングを飾る壮大な楽曲。父と娘の疎遠な関係をテーマにした歌詞が、エモーショナルに響く。ゲストとしてシネード・オコナーが参加しており、彼女の声が楽曲に深みを加えている。バグパイプのような旋律とリズムが印象的で、ドラマチックな展開が聴き手を引き込む。
2 Love to Be Loved
静かなイントロから始まり、徐々にエモーショナルな盛り上がりを見せる楽曲。孤独と自己愛をテーマにした歌詞が、繊細なメロディと共鳴する。ガブリエルの内省的な一面が強く感じられる一曲だ。
3 Blood of Eden
失恋の痛みと愛の神聖さを描いた楽曲。シネード・オコナーが再びゲストボーカルとして参加し、2人の声が織りなすハーモニーが心に響く。シンプルながらも壮大なアレンジが特徴的で、アルバムの中でも特に感情的な楽曲の一つ。
4 Steam
Sledgehammerを彷彿とさせるファンキーでダンサブルな楽曲。キャッチーなメロディとホーンセクションが際立ち、アルバムの中でも商業的な一面を感じさせるトラックだ。情熱的な歌詞がユーモラスなサウンドと対照的に響く。
5 Only Us
ミニマルなリズムとアンビエントなサウンドが特徴の楽曲。愛と孤独をテーマにした歌詞が、静かな力強さを持つメロディに乗せられている。深みのあるベースラインが楽曲全体を支えている。
6 Washing of the Water
ガブリエルのピアノが中心となる静謐なバラード。水を象徴的に用いた歌詞が、浄化と再生のテーマを描き出している。アルバムのエンディングを飾る感動的な一曲で、彼の歌声が特に力強く響く。
7 Digging in the Dirt
アルバムの中核をなす楽曲で、自己探求と内面の闇に向き合う歌詞が特徴。激しいビートとヘヴィなギターが、不安と葛藤を効果的に表現している。ミュージックビデオも話題を呼び、アルバムの象徴的な存在となった。
8 Fourteen Black Paintings
アンビエントな雰囲気が漂う実験的なトラック。タイトルはチリの画家アルフォンソ・オセアの作品からインスパイアされており、静かな中にも深い感情が込められている。リズムとシンセサイザーが不穏なムードを作り出している。
9 Kiss That Frog
遊び心に満ちたアップテンポの楽曲。寓話的な歌詞とキャッチーなメロディが特徴で、アルバムの中でも軽快なアクセントとなっている。ファンクやブルースの要素が楽曲に活気を与えている。
10 Secret World
壮大で感動的な楽曲で、アルバムのクライマックスを飾る一曲。愛と人間関係の複雑さをテーマにした歌詞が、シンプルなメロディと美しいアレンジに支えられている。ライブでも人気の高い楽曲で、アルバムを力強く締めくくる。
アルバム総評
Usは、ピーター・ガブリエルが内面的なテーマを掘り下げると同時に、音楽的にさらなる高みを目指した作品だ。ワールドミュージック、アンビエント、ロックといった要素が統一感のあるサウンドに融合し、深い感情と普遍的なテーマが描かれている。特にDigging in the DirtやSteamのようなダイナミックな楽曲と、Come Talk to MeやBlood of Edenのような静謐でエモーショナルな楽曲が絶妙なバランスで並び、聴く者に強い印象を与える。ガブリエルの音楽的成熟と彼の個人的なストーリーが、美しく融合したアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
So by Peter Gabriel
ポップでありながら深い感情を描いた作品で、本作の前作として必聴。
Passion by Peter Gabriel
ワールドミュージックとアンビエントを融合させたサウンドトラックで、Usのサウンドの源流を感じられる。
Hounds of Love by Kate Bush
感情的で実験的なサウンドが特徴で、ガブリエルのファンにも響く一枚。
The Sensual World by Kate Bush
感情豊かな歌詞と多彩なアレンジが、本作と共通する魅力を持つ。
Peter Gabriel (Melt) by Peter Gabriel
社会的テーマや実験的なサウンドが凝縮されたアルバムで、ガブリエルのルーツを感じられる。
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