発売日: 1984年4月6日
ジャンル: ニューウェーブ / シンセポップ
Lamentは、ウルトラヴォックスの6作目のスタジオアルバムであり、1980年代中盤のニューウェーブシーンを象徴する一作である。前作Quartetのポップで洗練されたサウンドをさらに深化させると同時に、暗くエモーショナルな雰囲気を強調した本作は、バンドの音楽的成熟を示している。
プロデュースは、ウルトラヴォックス自身と、エンジニアのコンニィ・プランクが手掛けており、緻密なサウンドデザインが際立っている。アルバムは、個人的なテーマと社会的なテーマを織り交ぜた内容で、シングルとしてリリースされたDancing with Tears in My EyesやOne Small Dayなどの楽曲が商業的成功を収めた。壮大なシンセサイザーサウンドとドラマチックなアレンジが全体を通して特徴的であり、80年代の音楽の真髄が詰まったアルバムだ。
各曲解説
1 White China
アルバムの幕開けを飾る力強い楽曲で、社会的なテーマを扱った歌詞が印象的。シンセサイザーの層が厚く、リズムセクションの重厚感が曲にダイナミズムを与えている。ダークなトーンの中に希望の兆しを感じさせる一曲だ。
2 One Small Day
アルバムからのリードシングルで、エネルギッシュでアップテンポな楽曲。前向きなメッセージが込められた歌詞と、キャッチーなメロディが特徴で、ライブでも盛り上がる定番曲だ。シンセリフとギターの掛け合いが耳に残る。
3 Dancing with Tears in My Eyes
アルバムの中でも特に有名な楽曲で、核戦争を背景にした悲劇的なテーマを持つ。感情的な歌詞と壮大なシンセサイザーの旋律が融合し、リスナーに深い印象を残す。サビのメロディは特に力強く、80年代を代表する名曲として広く知られている。
4 Lament
アルバムのタイトル曲で、静かなイントロから徐々に盛り上がるドラマチックな一曲。失恋や喪失感をテーマにした歌詞が、ジョージ・ユーレの感情豊かなボーカルで表現されている。シンセサイザーの美しいアレンジが楽曲に深みを加えている。
5 Man of Two Worlds
スコットランドの伝統音楽を取り入れたユニークな楽曲で、ゲール語の歌詞が一部に使用されている。異文化を融合させたサウンドが印象的で、アルバムの中でも異彩を放つトラックだ。シンセサウンドと伝統楽器の調和が見事。
6 Heart of the Country
広がりのあるサウンドスケープが特徴的な楽曲。自然との調和をテーマにした歌詞と、ゆったりとしたリズムがリスナーを穏やかな気分にさせる。シンセサイザーの層が織りなす音の豊かさが際立つ。
7 When the Time Comes
感傷的で緊張感のある楽曲。未来への期待と不安を描いた歌詞が、緩やかなリズムとシンセサウンドに支えられている。ミッジ・ユーレのボーカルが静かに盛り上がり、楽曲にドラマを加えている。
8 A Friend I Call Desire
アルバムの最後を飾るエモーショナルな楽曲。欲望と内面の葛藤をテーマにした歌詞が、繊細なシンセサウンドとともに展開される。壮大なフィナーレとして、アルバムを締めくくるにふさわしい一曲だ。
アルバム総評
Lamentは、ウルトラヴォックスが音楽的にさらに進化し、感情的な深みと緻密なサウンドデザインを融合させた傑作である。特にDancing with Tears in My EyesやLamentといった楽曲は、80年代ニューウェーブの象徴的な存在として今も愛されている。個々の楽曲が持つテーマの多様性と、それをまとめ上げるバンドの技量は見事で、リリースから数十年経った現在でも色褪せることのない一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Quartet by Ultravox
前作で、ニューウェーブとシンセポップの融合をさらに深化させたアルバム。メロディアスな楽曲が多い。
Songs from the Big Chair by Tears for Fears
ドラマチックで深みのあるサウンドが共通する名盤で、本作のファンにも響く一枚。
The Hurting by Tears for Fears
感情的なテーマとシンセサウンドが特徴のアルバムで、同じ時代の空気感が感じられる。
Ocean Rain by Echo & the Bunnymen
壮大なアレンジとエモーショナルな楽曲が楽しめるアルバムで、Lamentと通じる部分がある。
The Lexicon of Love by ABC
シンセポップの洗練されたサウンドと感情的な楽曲が印象的な一枚で、ニューウェーブファンにおすすめ。
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