発売日: 1977年2月25日
ジャンル: ニューウェーブ / ポストパンク
Ultravox!は、後にニューウェーブの代表的バンドとなるウルトラヴォックスがデビュー作として発表したアルバムである。本作は、パンクロックがシーンを席巻しつつあった1977年という時代背景の中で、ポストパンク的な鋭さとアートロック的な実験精神を融合させた作品として際立つ存在感を放っている。
プロデュースを担当したのは、デヴィッド・ボウイやイギー・ポップとの仕事で知られるブライアン・イーノとスティーヴ・リリー・ホワイト。アルバムには、ロック、エレクトロニカ、グラムロックの要素が混在し、バンドの野心的なサウンドアプローチが感じられる。ジョン・フォックス(ボーカル)の冷たいカリスマ性と、バンドメンバーそれぞれの斬新なプレイが、本作の特異な魅力を形成している。
各曲解説
1 Saturday Night in the City of the Dead
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュな楽曲。パンキッシュなギターリフとジョン・フォックスの抑揚のあるボーカルが印象的で、無秩序な都市の夜を描く歌詞が生々しい。勢いのあるドラムと、疾走感が楽曲全体を駆け抜ける。
2 Life at Rainbow’s End (For All the Tax Exiles on Main Street)
リズムが軽快で、遊び心のある雰囲気を持つ楽曲。歌詞は社会風刺的で、エリート層への皮肉が込められている。ギターとキーボードの絶妙な掛け合いが楽曲に奥行きを与えている。
3 Slip Away
ポストパンク的な緊張感を感じさせるミッドテンポの楽曲。ジョン・フォックスの冷ややかなボーカルとシンセサイザーのミニマルなフレーズが、不穏なムードを作り出している。歌詞は現実逃避と孤独をテーマにしており、アルバムの中でも特に印象深い。
4 I Want to Be a Machine
壮大でメカニカルな雰囲気を持つ一曲。人間性を放棄して機械になりたいというテーマが、ジョン・フォックスの未来的な世界観を象徴している。ギターのディストーションとシンセの音が印象的に絡み合い、アルバムの中でも特に実験的な楽曲だ。
5 Wide Boys
グラムロックの影響を強く感じさせる楽曲。アップテンポでダンサブルなビートが特徴で、歌詞は型破りな生活を送る若者たちを描いている。エネルギッシュな演奏がリスナーを引き込む。
6 Dangerous Rhythm
アルバムの中で特にユニークな雰囲気を持つ楽曲で、ダブやレゲエの影響が感じられる。緩やかなビートとクールなボーカルが融合し、アルバムの中で異彩を放つトラックだ。実験精神が前面に出ており、ウルトラヴォックスの音楽的多様性を示している。
7 The Lonely Hunter
寂寥感漂うミディアムテンポの楽曲。ジョン・フォックスのボーカルが、孤独感を内包する歌詞を効果的に表現している。リズムセクションが楽曲をしっかりと支え、ギターとシンセの緩やかなアレンジが感傷的な雰囲気を作り出している。
8 The Wild, the Beautiful and the Damned
美しくも陰鬱な雰囲気を持つ楽曲。詩的な歌詞が幻想的で、ジョン・フォックスの冷静で抑制されたボーカルが楽曲に深みを加える。メロディアスなギターとシンセの響きが特に印象的だ。
9 My Sex
アルバムの最後を締めくくる、ダークで実験的な楽曲。シンプルなシンセのフレーズとジョン・フォックスの語りに近いボーカルが不気味な雰囲気を作り出している。未来的でありながらも人間の原始的な感情を探求する内容で、ウルトラヴォックスの音楽的可能性を示唆する重要なトラックだ。
アルバム総評
Ultravox!は、パンクとポストパンクの狭間に生まれた作品であり、ジャンルを超えたサウンドの先駆けとして評価されるべきアルバムだ。ジョン・フォックスのカリスマ性と、バンドメンバーの実験精神が融合した本作は、後のニューウェーブムーブメントを予感させる内容となっている。その斬新さと大胆な音楽性は、リリースから40年以上経った今でも新鮮さを失っていない。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Low by David Bowie
プロデューサーのブライアン・イーノが手掛けたアルバムで、実験的なサウンドが本作と共通している。
Entertainment! by Gang of Four
ポストパンクの名盤で、鋭いギターリフと社会的メッセージが特徴。
Roxy Music by Roxy Music
アートロックとグラムロックを融合させたデビューアルバムで、ウルトラヴォックスに影響を与えた作品。
The Pleasure Principle by Gary Numan
シンセサイザーを主体にした未来的なサウンドが、ジョン・フォックス期のウルトラヴォックスと共通する。
Unknown Pleasures by Joy Division
ダークで緊張感のあるポストパンクの代表作で、ウルトラヴォックスのファンに刺さる作品。
コメント