アルバムレビュー:Escape by Journey

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1981年7月17日

ジャンル:アリーナ・ロック、AOR、ポップ・ロック、ハードロック、メロディック・ロック

概要

Journeyの『Escape』は、1981年に発表された通算7作目のスタジオ・アルバムであり、1980年代アメリカン・アリーナ・ロックを代表する決定的な作品である。商業的にも批評的にもバンド最大級の成功を収め、「Don’t Stop Believin’」「Who’s Crying Now」「Open Arms」「Still They Ride」など、Journeyの代表曲が多数収録されている。本作によってJourneyは、1970年代のジャズ・ロック/プログレッシヴ・ロック由来のバンドから、巨大なメロディと感情的なヴォーカルを武器にしたアメリカン・ロックの象徴へと完全に変貌した。

Journeyはもともと、Santana周辺のミュージシャンを含むバンドとして結成され、初期にはインストゥルメンタル志向やプログレッシヴ・ロック的な要素を持っていた。しかし、Steve Perryの加入によってバンドの中心は大きく変わる。Perryのソウルフルで伸びやかなヴォーカルは、Journeyの音楽をより歌中心、メロディ中心のロックへ導いた。その後、Gregg Rolieの脱退とJonathan Cainの加入によって、バンドのサウンドはさらに洗練される。Cainのキーボードとソングライティングは、『Escape』の方向性を決定づける重要な要素となった。

本作の大きな特徴は、ハードロックの力強さ、AORの洗練、ポップスとしての親しみやすさ、アリーナ・ロックのスケール感が高度に融合している点にある。Neal Schonのギターは鋭くメロディアスで、Steve Perryの声に対してロック的な熱を与える。Jonathan Cainのキーボードは、楽曲に広がりと都会的な輝きを加え、Ross ValoryのベースとSteve Smithのドラムは、巨大なサウンドを支える安定した土台となっている。『Escape』では、各メンバーの役割が非常に明確で、バンド全体がひとつの巨大なポップ・ロック装置として機能している。

1981年という時代背景も重要である。アメリカのロックは、1970年代のアルバム志向、ハードロック、プログレッシヴ・ロックの流れを受け継ぎながら、FMラジオ、MTV、巨大なコンサート会場に適応する必要があった。Journeyはその時代の要請に完璧に応えたバンドである。彼らの楽曲は、ラジオで一度聴いても記憶に残る強いメロディを持ち、同時に大きな会場で観客が合唱できるスケールを備えている。『Escape』は、そのアリーナ・ロック的な理想を最も美しく実現した作品のひとつである。

アルバム・タイトルの「Escape」は「脱出」「逃避」を意味する。この言葉は、単なる現実逃避ではなく、閉じた状況から抜け出し、新しい場所へ向かう感覚を含んでいる。収録曲の多くには、旅、別れ、孤独、希望、再出発、愛の不確かさといったテーマが見られる。「Don’t Stop Believin’」では小さな町を離れる若者たちの物語が歌われ、「Who’s Crying Now」では傷ついた関係の行方が問われ、「Open Arms」では再び相手を受け入れる愛が描かれる。本作は、ロックの大きな音像の中に、個人が人生の転機で感じる感情を封じ込めたアルバムである。

Journeyの音楽は、しばしば「産業ロック」や「コーポレート・ロック」と呼ばれ、商業的に整えられた音楽として批判的に語られることもある。しかし『Escape』を丁寧に聴くと、その評価だけでは不十分であることが分かる。たしかに本作は非常に洗練され、ラジオ向けの完成度を持っている。しかし、その中心にはSteve Perryの声の切実さ、Neal Schonのギターの情熱、そして曲ごとの明確なドラマがある。商業的な完成度と感情の真実味が両立している点こそ、本作の強みである。

日本のリスナーにとって『Escape』は、1980年代洋楽ロックの典型的な魅力を理解するための重要作である。メロディアスなハードロック、AOR、ロック・バラード、スタジアム級のコーラス、洗練されたアレンジは、日本のロックやポップスにも通じる要素を多く持っている。特に、Steve Perryの歌唱表現は、感情を大きく、しかし明快なメロディの中で伝えるという意味で、日本のリスナーにも非常に受け入れやすい。

『Escape』は、Journeyのキャリアの頂点であると同時に、1980年代アメリカン・ロックのひとつの完成形である。大きな夢、失われた愛、信じ続ける意志、帰る場所を求める心。それらの感情が、巨大なサウンドと完璧なメロディによって世界中に届く形に整えられている。

全曲レビュー

1. Don’t Stop Believin’

「Don’t Stop Believin’」は、Journey最大の代表曲であり、1980年代アメリカン・ロックを象徴する楽曲のひとつである。静かなピアノのイントロから始まり、徐々にベース、ドラム、ギター、ヴォーカルが加わり、最後に巨大なコーラスへ到達する構成は、一般的なポップ・ソングの形とは少し異なる。サビらしいサビが曲の終盤まで現れないにもかかわらず、全体が強い高揚感を持って進む点が、この曲の大きな特徴である。

歌詞では、小さな町を離れた女性と、南デトロイト出身の男性が描かれる。彼らは夜行列車に乗り、どこかへ向かう。物語は明確に完結しない。むしろ、孤独な人々が都会の夜の中で何かを求め、信じ続ける姿が断片的に描かれる。この曖昧さが、曲を普遍的なものにしている。聴き手は自分自身の人生、夢、孤独、希望をこの物語に重ねることができる。

音楽的には、Jonathan Cainのピアノ・リフが曲の核である。そこにSteve Perryのヴォーカルが加わることで、曲は一気に物語性を帯びる。Perryの声は、単に高く伸びるだけではなく、言葉に強い感情の輪郭を与える。Neal Schonのギターは、曲の後半でドラマを増幅し、アリーナ・ロックとしてのスケールを完成させる。

「Don’t Stop Believin’」が長く愛される理由は、単純な励ましの歌に見えて、実際には孤独と希望が同居しているからである。曲は現実が簡単に良くなるとは言わない。ただ、信じることをやめるなと語る。そのメッセージは、成功や勝利を保証するものではなく、不確かな人生の中で前へ進むための精神的な支えとして機能している。

2. Stone in Love

「Stone in Love」は、アルバム序盤にロック・バンドとしてのJourneyの力強さを示す楽曲である。前曲「Don’t Stop Believin’」が壮大な物語性を持つ曲だったのに対し、この曲ではより直接的なロックの疾走感、若さ、恋愛の記憶が前面に出る。

音楽的には、Neal Schonのギターが大きな存在感を持っている。イントロからギターの明るく鋭い響きが曲を引っ張り、Steve Smithのドラムが強い推進力を与える。Jonathan Cainのキーボードは控えめながらサウンドに厚みを加え、Journeyらしい洗練を保っている。ハードロック的なエネルギーとポップなメロディが自然に結びついた曲である。

歌詞では、若い頃の恋愛、夏の夜、街の光、抑えきれない感情が描かれる。「stone in love」という表現は、完全に恋に落ちた状態、あるいは恋の記憶が固く刻まれている状態を示している。Journeyのラヴ・ソングは、単なる甘さだけでなく、青春の一瞬が永遠の記憶として残る感覚をよく表現する。この曲もその典型である。

Steve Perryの歌唱は、ここでは非常に明るく、力強い。彼の声は切ないバラードだけでなく、こうしたロック・ナンバーでも抜群の存在感を示す。感情を大きく解放しながらも、メロディの輪郭は常に明確である。これがJourneyの楽曲をロック・ファンだけでなく、幅広いポップ・リスナーにも届くものにしている。

「Stone in Love」は、『Escape』がバラードや大ヒット・アンセムだけのアルバムではないことを示す重要曲である。Journeyは、ロック・バンドとしての勢いと、ポップ・ソングライティングの完成度を同時に備えていた。この曲は、そのバランスを最も爽快に示している。

3. Who’s Crying Now

「Who’s Crying Now」は、『Escape』からの大ヒット曲のひとつであり、Journeyのメロディックなバラード/ミッドテンポ曲の完成度を示す代表的な楽曲である。静かなキーボードと抑制されたリズムに乗せて、壊れかけた関係、感情のすれ違い、愛と傷の循環が描かれる。

音楽的には、Jonathan Cainのキーボードが曲の雰囲気を決定づけている。シンプルで印象的なコード進行が、冷たさと温かさを同時に感じさせる空間を作る。Neal Schonのギターは曲の後半で強く感情を解放し、Steve Perryのヴォーカルと対話するように響く。ギター・ソロは技巧を見せるだけではなく、歌詞で語られない痛みを代弁する役割を果たしている。

歌詞では、関係の中で傷つけ合う二人が描かれる。どちらが泣いているのか、誰が傷ついているのか、愛はまだ続いているのか。その問いは明確な答えを持たない。タイトルの「Who’s Crying Now」は、勝者と敗者を決める問いではなく、恋愛において最終的には双方が傷つくことを示しているように響く。

Steve Perryの歌唱は、この曲で非常に繊細である。彼は感情を大げさに爆発させるのではなく、抑制された声の中に痛みを込める。そしてサビでは、その感情が大きく広がる。Journeyのバラードが優れているのは、感傷的でありながら過度に甘くなりすぎない点である。この曲でも、メロディの美しさの中に関係の苦さが残っている。

「Who’s Crying Now」は、Journeyがアリーナ・ロックの大きな音だけでなく、大人の恋愛における複雑な感情を表現できるバンドであることを示している。大規模なサウンドの中に、個人的な痛みを丁寧に封じ込めた名曲である。

4. Keep On Runnin’

「Keep On Runnin’」は、アルバムにハードロック的な勢いを取り戻す楽曲である。タイトルが示す通り、走り続けること、止まらないこと、前進し続けることがテーマとなる。Journeyの中では比較的ストレートなロック・ナンバーであり、アルバムのテンションを維持する役割を持つ。

音楽的には、ギター・リフとドラムの力強さが前面に出る。Neal Schonの演奏は鋭く、Steve Smithのドラムはタイトで、曲全体に力強い疾走感がある。Jonathan Cainのキーボードはサウンドに厚みを加えるが、この曲ではギター主体のロック感がより強い。

歌詞では、逃げること、追われること、あるいは何かを求めて走り続けることが描かれる。これは『Escape』というアルバム・タイトルとも響き合う。逃避は必ずしも弱さではない。閉じた状況から抜け出すために走ること、前へ進むことは、Journeyの音楽における重要なモチーフである。

Steve Perryのヴォーカルは、ここでは非常にエネルギッシュである。彼の声はハードなバンド・サウンドの中でも埋もれず、むしろ楽曲の推進力を増幅する。JourneyがAOR的な洗練だけでなく、ライブで映えるロック・バンドであったことを示す曲である。

「Keep On Runnin’」は、アルバムの中では大ヒット曲ほど語られることは少ないが、『Escape』のロック面を支える重要な楽曲である。メロディックな美しさと力強い疾走感を両立するJourneyの基礎体力がよく分かる。

5. Still They Ride

「Still They Ride」は、アルバム前半を締めくくるようなミッドテンポの名曲であり、Journeyの叙情性が強く表れた楽曲である。タイトルは「それでも彼らは走り続ける」という意味を持ち、過去の記憶、街、車、青春の残像を感じさせる。『Escape』の中でも、アメリカ的な風景感覚が特に濃い曲である。

音楽的には、穏やかなテンポと広がりのあるサウンドが特徴である。キーボードとギターが柔らかく重なり、Steve Perryのヴォーカルが情景を描くように響く。曲は大きな爆発ではなく、静かな感傷と広がりによって進む。Journeyのバラード的な魅力とロック的なスケールが自然に融合している。

歌詞では、街を走る若者たち、過ぎ去った日々、変わっていく時代の中で残るものが描かれる。車で夜の街を走るイメージは、アメリカン・ロックにおいて重要なモチーフである。移動、自由、孤独、青春の終わりがそこに重なる。Journeyはこの曲で、派手なロックンロールの興奮ではなく、過去を振り返る静かな視線を提示している。

Steve Perryの歌唱は、非常に感情豊かである。彼は懐かしさを単なる甘いノスタルジーにせず、時間の流れによる痛みとして表現する。「Still They Ride」という言葉には、かつての若者たちが今もどこかで走り続けているような、現実と記憶が重なる感覚がある。

この曲は、Journeyの音楽が単なる恋愛や励ましだけではなく、アメリカの風景と時間の感覚を描く力を持っていることを示している。『Escape』の中でも、深い余韻を残す楽曲である。

6. Escape

表題曲「Escape」は、アルバム後半の幕開けにふさわしい、力強くドラマティックな楽曲である。タイトルが示す通り、閉じ込められた状況から抜け出すこと、自分の道を求めること、自由への衝動がテーマとなっている。アルバム全体のコンセプトを最も直接的に表す曲といえる。

音楽的には、ハードロック寄りのサウンドで、ギターとドラムが強い推進力を作る。Jonathan Cainのキーボードも加わり、曲に80年代的な広がりを与えている。Neal Schonのギターは鋭く、Steve Perryのヴォーカルは高揚感を伴って前へ進む。Journeyのロック・バンドとしての強度がはっきり表れている。

歌詞では、抑圧された状況、そこから抜け出したい欲求、自分自身の未来を探す意志が描かれる。これは若者の独立の歌としても、人生の転機の歌としても読める。『Escape』というアルバム全体には、場所を離れ、過去を越え、新しい世界へ向かう感覚が流れているが、この曲はその中心にある意志を直接歌っている。

Steve Perryの歌唱は、この曲で非常に力強い。彼の声は、閉塞を突き破るように伸びる。Journeyの音楽における「脱出」は、暗く内向的な逃避ではなく、光へ向かう前進として表現される。この点が、バンドのポジティヴなエネルギーを支えている。

「Escape」は、アルバム・タイトル曲として非常に重要な役割を持つ。大ヒット・シングルではないが、本作のテーマを理解するうえで欠かせない曲である。個人が自分の限界を越え、未知の場所へ向かう。そのJourneyというバンド名にも通じる精神が、ここに刻まれている。

7. Lay It Down

「Lay It Down」は、アルバムの中でも比較的ハードで、ギターの存在感が強い楽曲である。タイトルは「それを置け」「さらけ出せ」「打ち明けろ」といった意味を含み、感情や欲望を隠さずに出すことを促すようなニュアンスを持っている。

音楽的には、Neal Schonのギター・リフが中心にある。曲全体にはハードロック的な骨格があり、Steve Smithのドラムも力強い。Journeyのサウンドは洗練されているが、この曲では比較的ラフなロック感も感じられる。Jonathan Cainのキーボードはサウンドの隙間を埋め、全体の厚みを保っている。

歌詞では、関係の中で感情を隠さず示すこと、あるいは迷いを捨てて行動することが求められる。Journeyのラヴ・ソングには、傷ついた関係や距離のある愛を描くものが多いが、この曲ではより直接的な衝動が前面にある。感情を抑えるのではなく、置く、出す、示すという動きが重要になる。

Steve Perryのヴォーカルは、ここではエネルギッシュで、少し荒々しい。彼の声はバラードでの繊細さが注目されがちだが、こうしたロック曲でも十分に力を発揮する。Neal Schonのギターとの組み合わせによって、曲は強い身体性を持つ。

「Lay It Down」は、『Escape』の中でハードロック面を補強する曲である。大きなメロディと洗練だけでなく、ギター・バンドとしてのJourneyの力を示す一曲である。

8. Dead or Alive

Dead or Alive」は、アルバムの中でも特にスピード感と攻撃性を持つ楽曲である。タイトルは西部劇や逃亡者のイメージを想起させ、「生死を問わず」という緊迫した言葉として響く。Journeyの中ではかなりロック色の濃い曲であり、アルバム後半に強いアクセントを加えている。

音楽的には、テンポが速く、ギターとドラムが鋭く絡み合う。Neal Schonのギターは非常に攻撃的で、Steve Smithのドラミングもタイトで力強い。Journeyが単なるラジオ向けバラード・バンドではなく、高い演奏力を持つロック・バンドであったことを示す曲である。

歌詞では、追跡、危険、緊張、逃走のイメージが描かれる。これは『Escape』というアルバム・タイトルとも関連し、逃げる者と追う者、自由と危険が重なる。Journeyの楽曲では、旅や移動がしばしば希望と結びつくが、この曲ではより危険で切迫した移動として表現されている。

Steve Perryのヴォーカルは、速いテンポの中でも明瞭で力強い。高音域の伸びだけでなく、リズムに乗る鋭さもある。彼の歌唱力が、バラードだけでなくハードな曲にも対応できることを改めて示している。

「Dead or Alive」は、アルバム全体の中では比較的短くストレートな曲だが、Journeyの演奏力とロック的な攻撃性を示す重要な一曲である。洗練されたAORの表面の下にある、バンドの硬い芯を感じさせる。

9. Mother, Father

「Mother, Father」は、『Escape』の中でも最もドラマティックで重い感情を持つ楽曲のひとつである。タイトルが示す通り、家族、親子関係、崩壊した家庭、孤独、救いを求める心がテーマとなっている。Journeyの楽曲の中でも、個人的な痛みを大きなロック・ドラマへ昇華した重要曲である。

音楽的には、静かな導入から徐々に感情が高まり、強いサビへ向かう構成を持つ。Jonathan Cainのキーボードが不安定な空気を作り、Neal Schonのギターが感情の起伏を支える。Steve Perryのヴォーカルは非常に表現力豊かで、アルバム中でも屈指の熱量を持つ。

歌詞では、家族の中で傷ついた人物が、母と父へ向けて問いかけるように歌う。そこには、愛を求める気持ち、失われた絆への痛み、家庭の崩壊による孤独がある。Journeyの音楽は恋愛のテーマで知られるが、この曲ではより根源的な家族の問題が扱われている。

Steve Perryの歌唱は、ここで圧倒的である。彼は単に美しく歌うのではなく、言葉の中に悲痛な叫びを込める。高音域へ上がる瞬間には、抑えていた感情が一気に噴き出すような迫力がある。この曲を通じて、Journeyが単なる大衆的ロック・バンドではなく、深い情緒を扱えるバンドであることが分かる。

「Mother, Father」は、『Escape』の中で最もシリアスな楽曲のひとつであり、アルバムに深い陰影を与えている。逃避、旅、愛、希望というテーマの背後に、家庭や過去から逃れられない痛みが存在することを示す重要曲である。

10. Open Arms

アルバムの最後を飾る「Open Arms」は、Journeyを代表するバラードであり、1980年代ロック・バラードの歴史に残る名曲である。非常にシンプルで美しいメロディ、抑制されたピアノ、Steve Perryの感情豊かな歌唱によって、再会、許し、愛を受け入れる姿勢が描かれる。

音楽的には、派手な装飾を抑え、メロディと声を中心に構成されている。Jonathan Cainのピアノが静かに曲を導き、バンドは必要な場所でだけ大きく広がる。Neal Schonのギターも過度に前へ出ず、楽曲の感情を支える。Journeyのバラードの完成形ともいえる構成である。

歌詞では、離れていた相手を再び「開かれた腕」で迎え入れる姿が描かれる。愛は失われたかもしれないが、まだ戻ることができる。ここでの「Open Arms」は、単なる恋愛の受け入れではなく、傷ついた関係をもう一度信じるための勇気を象徴している。曲全体には、弱さをさらけ出すことの美しさがある。

Steve Perryの歌唱は、この曲の核心である。彼は最初は非常に抑制して歌い、徐々に感情を広げていく。高音域に達しても、技術の誇示ではなく、感情の必然として響く。彼の声がなければ、この曲はここまで普遍的なバラードにはならなかったといえる。

「Open Arms」は、『Escape』の終曲として非常に効果的である。アルバムは「Don’t Stop Believin’」の旅立ちと希望で始まり、さまざまな愛、逃避、孤独、家族の痛みを経て、最後に受け入れと和解へたどり着く。この構成によって、本作は単なるヒット曲集ではなく、感情の旅として完結する。

総評

『Escape』は、Journeyの最高傑作として広く認識されるアルバムであり、1980年代アメリカン・アリーナ・ロックの理想形を示す作品である。ヒット曲の多さだけでなく、アルバム全体の構成、演奏、歌唱、メロディ、サウンド・プロダクションの完成度が非常に高い。Journeyというバンドが持つ複数の強みが、最もバランスよく結晶化している。

本作の中心にあるのは、Steve Perryのヴォーカルである。彼の声は、ロック・シンガーとしての力強さ、ソウル・シンガーの情感、ポップ・シンガーの明快さを兼ね備えている。「Don’t Stop Believin’」では希望を、「Who’s Crying Now」では痛みを、「Mother, Father」では家族の悲しみを、「Open Arms」では愛の受容を歌い分ける。Perryの声があることで、Journeyの巨大なサウンドは単なる商業的なロックではなく、人間の感情を運ぶ器となっている。

Neal Schonのギターも、本作の重要な柱である。JourneyはAORや産業ロックという言葉で語られることが多いが、Schonのギターには常にハードロックの熱がある。彼は技巧を見せるだけではなく、楽曲の感情に寄り添うプレイを行う。「Who’s Crying Now」のソロや「Stone in Love」「Dead or Alive」での力強い演奏は、Journeyが本格的なロック・バンドであることを証明している。

Jonathan Cainの加入は、本作の成功において決定的である。彼のキーボードとソングライティングは、Journeyの音楽に新しい洗練とポップな構造をもたらした。「Don’t Stop Believin’」のピアノ、「Open Arms」のバラード構成、「Who’s Crying Now」の静かなコード感は、Cainの存在なしには成立しなかった。Journeyは本作で、ギター・ロックとキーボード主体のAORを非常に自然に融合させている。

アルバム全体のテーマとしては、旅立ち、脱出、愛、孤独、記憶、和解が重要である。「Don’t Stop Believin’」では知らない世界へ向かう若者たちが描かれ、「Escape」では閉塞から抜け出す意志が歌われる。「Still They Ride」では過去の街と青春が、「Mother, Father」では家庭の痛みが、「Open Arms」では再び受け入れる愛が描かれる。つまり本作は、人生のさまざまな転機にある人々を歌ったアルバムである。

『Escape』は、アリーナ・ロックの巨大さと、個人的な感情の親密さを両立している。大きな会場で何万人が歌える曲でありながら、歌詞は一人の孤独や一つの関係の痛みに根ざしている。このスケールの変換こそ、Journeyの最大の才能である。個人の感情を、集団で共有できるアンセムへ変える力がある。

一方で、本作は非常に洗練されているため、ロックの荒々しさや実験性を求めるリスナーには整いすぎているように感じられるかもしれない。だが、その整えられたサウンドの中に、確かな演奏力と感情の強度がある。『Escape』は商業的成功を狙っただけのアルバムではない。むしろ、商業的な明快さの中で、どれだけ深い感情を届けられるかを追求した作品である。

日本のリスナーにとって、本作はAORやメロディック・ロックの基本作品として非常に重要である。日本では、メロディの強い洋楽ロック、ロック・バラード、ハイトーン・ヴォーカル、ギターとキーボードの融合が長く支持されてきた。Journeyの『Escape』は、その美学の源流のひとつとして聴くことができる。特に「Open Arms」や「Don’t Stop Believin’」のような楽曲は、洋楽ロックの枠を越えて、ポップスとしての普遍性を持っている。

『Escape』は、1980年代アメリカン・ロックが最も大きく、最も明快に鳴っていた時代の記録である。しかし、その大きさは空虚ではない。そこには、信じ続けること、愛を失うこと、もう一度受け入れること、過去から逃れようとすること、それでも走り続けることが歌われている。巨大な音の中に個人の人生がある。その点で、本作は時代を超えて聴かれる力を持っている。

総じて、『Escape』はJourneyのキャリアを代表するだけでなく、アリーナ・ロック/AORの歴史において欠かせない名盤である。完成されたメロディ、圧倒的なヴォーカル、洗練されたプロダクション、ロック・バンドとしての力強さ、そして普遍的な感情。これらが高い水準で結びつき、1980年代ロックのひとつの頂点を形成している。

おすすめアルバム

1. Journey – Frontiers

『Escape』の次作であり、Journeyの黄金期を代表するもう一つの重要作。「Separate Ways」「Faithfully」「Send Her My Love」などを収録し、より硬質でドラマティックな80年代ロックへ進んでいる。『Escape』の成功を受けて、バンドがどのようにスケールを拡大したかを理解するうえで欠かせない。

2. Journey – Departure

『Escape』以前のJourneyを知るために重要な作品。Steve Perry加入後のメロディック・ロック路線が確立されつつあり、まだプログレッシヴ・ロックやハードロックの名残も感じられる。『Escape』で完成するポップ・ロック路線の前段階として聴く価値がある。

3. Foreigner – 4

1981年発表のアリーナ・ロック/AORの代表作。ハードロックの力強さとポップなメロディ、シンセサイザーを取り入れた洗練が共存しており、『Escape』と同時代のアメリカン・ロックの完成度を比較できる。「Urgent」「Waiting for a Girl Like You」などを収録。

4. Toto – Toto IV

AORとスタジオ・ミュージシャン的な精密さを代表する作品。「Africa」「Rosanna」を収録し、演奏力、アレンジ、プロダクションの完成度が非常に高い。Journeyよりも洗練されたスタジオ志向が強いが、80年代メロディック・ロックの美学を理解するうえで関連性が高い。

5. REO Speedwagon – Hi Infidelity

アメリカン・ロックにおけるメロディックな大衆性を代表するアルバム。「Keep On Loving You」などのヒット曲を含み、ロック・バラードと親しみやすいポップ・ロックのバランスが優れている。Journeyのバラードやアリーナ・ロック的な感情表現と比較して聴く価値がある。

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