アルバムレビュー：New Day Rising by Hüsker Dü

アルバムレビュー

2024.12.05

発売日: 1985年1月
ジャンル: ポストハードコア、オルタナティヴロック

Hüsker Düの4枚目のアルバム『New Day Rising』は、バンドが音楽的成熟を迎え、ポストハードコアの新たな方向性を切り開いた重要な作品である。前作『Zen Arcade』で壮大なコンセプトアルバムを完成させた後、本作ではその実験性を維持しながらも、よりシンプルで直接的な楽曲構成を採用している。

アルバム全体を通じて、攻撃的なエネルギーと叙情的なメロディーが見事に融合しており、荒削りなギターサウンドと感情的なボーカルが特徴的だ。Bob MouldとGrant Hartという2人のソングライターがそれぞれの個性を発揮し、疾走感のあるパンク的アプローチとメロディックな要素のバランスが絶妙に取られている。DIY精神を反映したラフなプロダクションが、アルバム全体に生々しさと力強さを与えている。

トラック解説

1. New Day Rising
アルバムタイトル曲で、力強いギターリフと繰り返されるタイトルフレーズが印象的なオープニングナンバー。アルバム全体を象徴するエネルギーに満ちた楽曲である。

2. The Girl Who Lives on Heaven Hill
Grant Hart作の楽曲で、パワフルなメロディーと叙情的な歌詞が特徴。攻撃的なサウンドの中に美しさが漂う。

3. I Apologize
Bob Mouldによる感情的なトラック。個人的な葛藤をテーマにした歌詞とキャッチーなメロディーが絶妙に融合している。

4. Folk Lore
不穏な雰囲気を持つ楽曲で、ミニマルな構成が印象的。バンドの実験的な側面が感じられる一曲。

5. If I Told You
Grant Hartの作品で、リズムセクションとメロディックな要素が際立つ。切迫感のあるボーカルが楽曲を引き立てている。

6. Celebrated Summer
アルバムのハイライトのひとつで、ノスタルジックな歌詞と疾走感のあるサウンドが特徴的。Bob Mouldのソングライティングが光る名曲。

7. Perfect Example
落ち着いたテンポの楽曲で、メランコリックな雰囲気が漂う。アルバム全体のダイナミズムを支える重要なトラック。

8. Terms of Psychic Warfare
Grant Hartによるユニークな楽曲で、皮肉な歌詞と軽快なメロディーが特徴。バンドの幅広い音楽性が感じられる。

9. 59 Times the Pain
激しいギターリフとエモーショナルなボーカルが特徴のBob Mould作の楽曲。内省的な歌詞が心に響く。

10. Powerline
疾走感のあるトラックで、エネルギッシュなサウンドが印象的。シンプルな構成が曲の勢いを強調している。

11. Books About UFOs
ピアノをフィーチャーしたGrant Hart作の楽曲。明るいメロディーとユーモラスな歌詞が、アルバム全体の中で異彩を放つ。

12. I Don’t Know What You’re Talking About
Bob Mouldの作品で、攻撃的なギターとキャッチーなフックが融合した一曲。感情的なボーカルが際立つ。

13. How to Skin a Cat
実験的でカオスな雰囲気を持つ楽曲。ノイズとリズムの融合が印象的で、アルバムの変化をもたらす。

14. Whatcha Drinkin’
短く攻撃的な楽曲で、疾走感が際立つ。ライブでの盛り上がりを想像させる一曲。

15. Plans I Make
アルバムを締めくくるドラマチックなトラック。荒々しいサウンドとカタルシスを感じさせるボーカルが、圧巻のフィナーレを演出する。

アルバム総評

『New Day Rising』は、Hüsker Düが持つエネルギーと叙情性を完璧に融合させたアルバムである。タイトル曲「New Day Rising」や「Celebrated Summer」といった楽曲は、バンドのキャリアの中でも特に輝きを放つ名曲であり、アルバム全体のダイナミズムを牽引している。荒削りなプロダクションがバンドのDIY精神を際立たせつつ、楽曲の緻密さや感情的な深みを損なうことはない。この作品は、ハードコアパンクからオルタナティヴロックへと進化する過程を描いた、重要なマイルストーンである。