アルバムレビュー:The Future Is Your Past by The Brian Jonestown Massacre

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2023年2月10日

ジャンル:サイケデリック・ロック、ネオサイケデリア、ガレージロック、スペース・ロック、ポストパンク

概要

The Brian Jonestown Massacreの『The Future Is Your Past』は、アントン・ニューコムというソングライター/プロデューサーの長い歩みを踏まえたうえで聴くと、きわめて示唆的な一枚である。1990年代から現在に至るまで、The Brian Jonestown Massacreはネオサイケデリアの重要バンドとして語られてきたが、その本質は単なる60年代趣味やレトロな再演にない。彼らの音楽は、The Rolling StonesThe Velvet UndergroundLove、The 13th Floor Elevators、My Bloody Valentine、Spacemen 3、クラウトロック、ポストパンクなど、複数の系譜を横断しながら、「反復」「浮遊」「退廃」「メロディの甘さ」「政治的・精神的な不穏さ」を一つの感触へとまとめ上げてきた。本作もまた、その延長線上にありながら、近年のBJMの中でもとりわけ鋭利で、張りつめた空気を持つ作品である。

タイトルの『The Future Is Your Past』は非常に印象的だ。未来がすでに過去になっている、あるいは未来そのものが過去によって規定されているという逆説的な表現は、BJMの長年のテーマである時間感覚の歪みを端的に示している。The Brian Jonestown Massacreは昔から、現在を生きながら過去の亡霊と共に鳴るバンドだった。だが本作では、単なるノスタルジアではなく、「反復する歴史」「出口の見えない政治と社会」「感情の摩耗」「未来像の崩壊」といった現代的な不安が、より前景化しているように聞こえる。言い換えればこれは、サイケデリック・ロックの衣をまとった終末的ポップであり、過去の様式を使って現在の閉塞を照らす作品なのである。

キャリア上の位置づけとしては、本作は後期The Brian Jonestown Massacreの中でもかなり引き締まったアルバムにあたる。初期の『Methodrone』『Their Satanic Majesties’ Second Request』『Take It from the Man!』のようなロック史的伝説性や混沌のエネルギーとは異なり、近年のBJMはより整理された音像、より持続的なトランス感覚、そしてアントン・ニューコム個人の作家性が前面に出た作品を重ねてきた。『The Future Is Your Past』もその流れにあるが、本作では特にリズムの張り、ギターの輪郭、そして楽曲ごとの性格の差異がはっきりしており、近作の中でも比較的“ロック・アルバム”としての手応えが強い。

音楽的には、BJMらしい12弦ギターのきらめき、ドローンの持続、タンバリンの細かな揺れ、脱力したヴォーカル、反復的なベースラインが随所に現れる一方で、本作にはポストパンクやガレージロックに接近する緊張感もある。これは重要な点で、BJMのサイケデリアが単なる夢見心地の浮遊ではなく、しばしば都市的な不安や社会への不信と結びついてきたことを改めて思い出させる。アントン・ニューコムは昔から、サイケデリック・ロックを現実逃避ではなく、現実の異常さを露わにする手段として使ってきた。本作はその側面がかなり明瞭に出ている。

歌詞に関しても、BJM特有の曖昧さや断片性は保たれているが、その断片は本作ではより冷たく、より時代的に聞こえる。愛や喪失、自己崩壊といった古くからの主題はもちろん残っているが、それらは純粋な私的感情としてではなく、世界全体のノイズと混ざり合った状態で提示される。タイトル・イメージからも分かる通り、本作において重要なのは「前に進めない感覚」である。だがThe Brian Jonestown Massacreは、その停滞を単なる無気力としては描かない。むしろ反復そのものを音楽の推進力へ変え、出口のなさを独特の美として成立させている。

このアルバムの意義は、The Brian Jonestown Massacreが長い活動歴を経てもなお、自らの様式を惰性ではなく有効な表現として更新している点にある。ネオサイケデリアというジャンルはしばしば「雰囲気の音楽」に回収されやすいが、本作は雰囲気だけでは終わらない。そこには明確な不安、冷笑、諦念、そしてかすかな反抗心がある。歴史的に言えば、BJMは90年代以降のサイケ再興を象徴するバンドの一つだが、本作は彼らが単なる象徴ではなく、今なお現在形の表現者であることを示す作品といえる。

全曲レビュー

1. Do Rainbows Have Ends

アルバム冒頭を飾るこの曲は、本作全体の感触を非常に分かりやすく提示している。タイトルの「虹には終わりがあるのか」という問いは、希望や理想、幻影の有限性をめぐる詩的な主題として機能しており、BJMらしい夢幻性と虚無感が同時に立ち上がる。サウンドは比較的親しみやすいメロディを持ちながら、ギターの揺らぎやリズムの反復によって、単純なサイケ・ポップには収まらない余韻を残す。きらびやかな響きの中に、すでに何かが失われている感覚があるのが印象的で、近年のBJMの洗練と陰影が見事に両立したオープナーである。

2. Nothing Can Stop the Sound

タイトルが示す通り、「音そのものの持続」が主題化された楽曲。BJMにとって音とは、娯楽としての音楽である以前に、意識を浸食し、空間を変質させる波のようなものだ。この曲では反復するギターと一定のビートがじわじわと前進し、まるで止まらない思考や時代のノイズをそのまま音にしたような感覚を生む。メロディは抑制されているが、そのぶんトラック全体のうねりが強く、サイケデリック・ロックとポストパンクの中間のような手触りがある。音が止まらないという宣言は、表現の持続だけでなく、逃れられない現実の継続としても聞こえる。

3. The Light Is About to Change

本作中もっとも象徴的な曲の一つであり、タイトルの時点で終末感と転調の予感を含んでいる。「光が変わろうとしている」という表現は、救済の訪れというより、世界の色調そのものが不穏に変化する瞬間を示しているようだ。サウンドは比較的シンプルだが、ギターのコード感やヴォーカルの配置によって、落ち着きと不穏さが同居する。BJMらしい“分かりやすそうで分かりきらない”メロディの魅力がよく出ており、反復の中でじわじわと印象を深めていく。社会や精神の空気が変質していく感覚を、直接的に告発せずに表現している点がこの曲の強みである。

4. Fudge

やや力の抜けたタイトルとは裏腹に、音像にはねばつくような不穏さがある。BJMはしばしば冗談めいた語感と、深刻なムードを並置するが、この曲もその典型だろう。リフは単純で、テンポも過度に速くはないが、その反復が奇妙な酩酊感を生む。ギターの質感やリズムの緩さが、曲をあえて“決めきらない”方向へ導いており、その中途半端さが逆に魅力となっている。サイケデリック・ロックというより、ガレージ感覚を内包した気怠いオルタナティヴ・ロックとしても聴ける一曲で、アルバムの中盤へ向かう空気を少し濁らせる役割を果たしている。

5. Cross Eyed Gods

この曲ではBJMの持つ宗教的・神秘的な語彙が、どこか歪んだ形で提示される。タイトルの「寄り目の神々」というイメージ自体が、神聖さの崩れや視界の歪みを想起させ、アルバム全体の不安定な世界観とよく合っている。サウンドは比較的タイトで、ギターとリズムの絡み方にポストパンク的な緊張がある一方、ヴォーカルはあくまで距離を保っている。この温度差がBJMらしい。神や信仰を明確に論じるというより、権威や真実の輪郭が崩れていく感覚を、サイケデリックなぼやけとロック的推進力で鳴らしているように聞こえる。

6. As the Carousel Swings

タイトルの回転木馬は、祝祭性と閉じた循環の両方を象徴する。本作のテーマである反復や停滞を考えると、この曲はかなり核心に近い。サウンドは浮遊感が強く、メロディにもどこか甘さがあるが、その甘さは安心感よりも眩暈に近い。回り続けるが進んではいない、という感覚が音の構造そのものに宿っている。BJMのサイケデリアは、しばしば恍惚よりも“戻れなさ”を描くが、この曲ではその性質が特に明瞭だ。リズムは穏やかでも、内側では不穏な遠心力が働いている。アルバムの中でも夢と不安が高い精度で結びついた楽曲である。

7. The Mother of All Fuckers

タイトルの過激さが目を引くが、BJMにおいてこうした表現は単なる挑発ではなく、世界への苛立ちや冷笑の表出として機能することが多い。この曲もまた、怒りを直線的に爆発させるというより、ねじれたユーモアと倦怠の中で毒を吐くような印象を持つ。演奏は比較的ラフで、ガレージロック的な荒さが前に出ており、アルバム中でも生々しい手触りが強い。後期BJMの作品では洗練が目立つことも多いが、この曲には初期に通じる無愛想な攻撃性が残っている。タイトルの下品さと、実際の音の冷たさの落差も効果的だ。

8. All the Feels

現代的な口語表現を思わせるタイトルが印象的な一曲で、BJMの中ではやや異質な語感を持つ。だがその軽さは皮肉として機能しており、“すべての感情”がむしろ摩耗し、整理不能なノイズになっているようにも聞こえる。サウンドは親しみやすい輪郭を持ちつつ、どこか感情移入を拒むような冷たさがある。アントン・ニューコムのヴォーカルはあくまで平熱で、感情を過度にドラマ化しない。そのため、タイトルの多感さと実際の無表情さのギャップが、現代的な感情疲労のようなものを浮かび上がらせる。シンプルだが、かなり時代の空気を吸い込んだ楽曲である。

9. Your Mind Is My Cafe

この曲はBJMらしい言葉遊びと陶酔感が結びついた佳曲である。「君の心は僕のカフェだ」という比喩は、親密さ、寄生、くつろぎ、侵入といった複数の意味を含みうる。サウンドは比較的柔らかく、アルバムの中ではややメロディ志向が強い部類に入るが、それでも完全に甘いラヴソングにはならない。BJMの楽曲はしばしば、愛や接近を歌いながらも、その背後に距離や曖昧さを残す。この曲も同様で、耳触りの良さの中に、相手の精神に入り込むことの危うさがにじむ。アルバム中盤以降において、一種のやわらかな歪みを与える役割を担っている。

10. Stuck to Yous

タイトルの文法的なひっかかりも含めて、執着や粘着性を感じさせる一曲。BJMは古くから「離れられなさ」を反復的なリフとドローンで表現してきたが、この曲もまた、その系譜にある。サウンドは決して劇的ではなく、むしろ一定のテンションを保ったまま進行するが、その持続がかえって逃れられない感覚を強める。恋愛の歌として読むこともできるが、もっと広く、過去、記憶、政治、習慣などに貼りついてしまう精神の状態としても響く。タイトルの軽さに対し、内容は意外に重い。BJMの“反復による感情表現”がよく出た楽曲である。

11. Remember Me This

記憶と存在の問題を扱う、後期BJMらしい内省的な一曲。タイトルの「こんなふうに僕を覚えていて」という響きは、別れの挨拶であると同時に、自己像の演出でもある。The Brian Jonestown Massacreというバンド自体、過去のロック史と現在の自己神話のあいだで鳴り続けてきた存在であり、この曲はそうした“記憶され方”のテーマを静かに思い出させる。メロディは比較的明快で、ギターもきらびやかだが、楽曲の芯には失われることへの諦念がある。感情を爆発させず、余韻として残す手つきが見事で、アルバム終盤にふさわしい深みをもたらしている。

12. The Future Is Your Past

タイトル曲にしてラスト・トラック。アルバム全体の主題を回収するというより、最後にもう一度その逆説を静かに突きつけるような曲である。未来が過去であるという言葉は、歴史の反復、個人のトラウマ、音楽の引用、社会の停滞など、さまざまな層で読める。本曲のサウンドは過度に大仰ではなく、むしろ控えめな反復と陰影の中で、じわじわと意味を浸透させる。BJMの美学に忠実な終わり方であり、結論を与えるのではなく、問いを残したまま去っていく。アルバムを聴き終えたあと、このタイトルの意味がむしろ重くのしかかってくる構造になっており、作品全体の統一感を高めている。

総評

『The Future Is Your Past』は、The Brian Jonestown Massacreの後期作品の中でも、特に引き締まった完成度を持つアルバムである。初期の混沌や伝説性と比べれば、ここにあるのはもっと制御されたサイケデリアだ。しかしその制御は退屈さではなく、むしろ長い経験を経た作家が、自身の語法をどこまで純化できるかという試みとして作用している。結果として本作は、BJMらしい反復、浮遊、退廃、メロディ、皮肉を保ちながら、近年の社会的・心理的閉塞感を鋭く映し出す作品となった。

音楽的な魅力は、サイケデリック・ロックの幻想性と、ポストパンク/ガレージロック的な緊張感が同居している点にある。過度に夢見心地になりすぎず、しかし硬質になりすぎもしない。その絶妙な中間地帯で、アントン・ニューコムは現代の不穏さを語る。ここでは未来は明るい展望ではなく、すでに反復され尽くした過去の変形として現れる。だが、その停滞をBJMは音楽の停止には結びつけない。むしろ反復をそのままグルーヴへ変え、閉塞感を独特の推進力として提示している点が本作の大きな強みである。

The Brian Jonestown Massacreのディスコグラフィの中で、本作は最も有名な作品ではないかもしれない。しかし、現在のBJMを知るには非常に重要だ。初期作が若さと混沌の神話だとすれば、本作は持続する不安と成熟した倦怠の記録である。そしてその倦怠は、単なる老成ではなく、なおも世界に対して敏感であり続けることの証でもある。ネオサイケデリアを愛するリスナーはもちろん、ポストパンクやドリームポップ、現代の陰影あるインディー・ロックを好むリスナーにとっても、本作は高い説得力を持つ一枚である。

おすすめアルバム

直前期のセルフタイトル作で、後期BJMの洗練されたサイケデリアを味わえる一枚。本作との連続性が非常に強い。
– The Brian Jonestown Massacre『Methodrone』

初期の名作で、ドローン感覚とシューゲイズ的な靄の源流が詰まっている。現在の作風の出発点を知るうえで重要。
– Spacemen 3『The Perfect Prescription』

反復、ミニマリズム、陶酔感という点で本作と深い共通性を持つネオサイケの古典。
– The Verve『A Storm in Heaven』

サイケデリックな広がりと英国的な陰影が共存する作品。本作の浮遊感と不穏さが好きなリスナーに適している。
– Wooden Shjips『Back to Land』

現代サイケデリック・ロックの中でも、反復と開放感、ミニマルな推進力のバランスに優れた一枚。BJMの後期作品と相性がよい。

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