
発売日:2008年3月25日
ジャンル:ニュー・ウェイヴ、ダンス・ロック、ポスト・パンク、オルタナティヴ・ロック、エレクトロ・ポップ
概要
The B-52’sの『Funplex』は、2008年に発表された通算7作目のスタジオ・アルバムであり、前作『Good Stuff』から約16年ぶりとなるオリジナル・アルバムである。1970年代末からニュー・ウェイヴ/ポスト・パンク・シーンの異端的存在として活動してきたThe B-52’sにとって、本作は単なる復帰作ではなく、バンドが持つ享楽性、奇妙なユーモア、ダンス・ビート、レトロ・フューチャー感覚を、2000年代の音像へ再接続した作品である。
The B-52’sは、ジョージア州アセンズから登場したバンドであり、1979年のデビュー・アルバム『The B-52’s』によって、ニュー・ウェイヴの中でも非常に独自の位置を築いた。サーフ・ロック、ガレージ・ロック、ガール・グループ風コーラス、SF映画やB級カルチャーのイメージ、キッチュなファッション、フレッド・シュナイダーの語りに近いヴォーカル、ケイト・ピアソンとシンディ・ウィルソンの強烈なハーモニーが結びつき、彼らの音楽はパンク以後のロックにおける「楽しさ」と「奇妙さ」の両方を象徴するものとなった。
1980年代後半には『Cosmic Thing』が大きな商業的成功を収め、「Love Shack」や「Roam」によって、アンダーグラウンドなニュー・ウェイヴ・バンドから国際的なポップ・アクトへと認知を広げた。しかし、1990年代以降は活動が断続的になり、長い沈黙を経て発表されたのが『Funplex』である。したがって本作は、The B-52’sが自分たちの過去をなぞるだけでなく、現代のダンス・ロックやエレクトロ・ポップの文脈でも機能するサウンドを再構築できるかという課題を背負っていた。
プロデューサーにはスティーヴ・オズボーンが起用されている。彼はエレクトロニック・ミュージックやオルタナティヴ・ロックのプロダクションに通じた人物であり、本作ではThe B-52’s特有のローファイでキッチュな感覚を残しながら、音の輪郭を現代的に整えている。ギターは鋭く、ビートは太く、シンセサイザーは派手で、低音はクラブ・ミュージック以後の感覚を持つ。それでいて、楽曲の核にはThe B-52’sらしいコール・アンド・レスポンス、ユーモラスな歌詞、奇妙なキャラクター性が明確に残っている。
アルバム・タイトルの『Funplex』は、非常にThe B-52’sらしい造語的な響きを持つ。「fun」と「complex」を組み合わせたような言葉であり、巨大な娯楽施設、消費社会の遊園地、ショッピングモール、ナイトクラブ、欲望の複合施設を連想させる。本作には、現代社会における楽しさの過剰、買い物、パーティー、性的エネルギー、加齢を恐れない身体性、そして消費文化への皮肉が詰め込まれている。The B-52’sは、楽しさを無邪気に肯定するだけではない。彼らの楽しさは常に少し奇妙で、過剰で、人工的で、だからこそ批評性を帯びる。
『Funplex』が重要なのは、バンドの年齢やキャリアの長さを逆手に取り、若作りではなく「成熟したバンドによる享楽の更新」として成立している点である。2000年代のロック・シーンでは、ポスト・パンク・リバイバルやダンス・ロックが再び注目され、The Rapture、LCD Soundsystem、Franz Ferdinand、Yeah Yeah Yeahsなどが、ギターとダンス・ビートを結びつけていた。The B-52’sはそれらの後続バンドにとって先駆的存在であり、『Funplex』はその元祖が現代的な音圧で戻ってきた作品とも言える。
歌詞面では、The B-52’sらしいナンセンス、性的なダブルミーニング、レトロなSF感覚、日常の奇妙な誇張が健在である。ただし、本作ではそこに中年以降の身体性や、消費社会に対する皮肉も加わっている。若さを装うのではなく、年齢を重ねたうえでなお派手に踊る。その姿勢が本作の大きな魅力である。ロックやポップにおいて、年齢を重ねたアーティストはしばしば内省的な方向へ進むが、The B-52’sはむしろ「楽しむこと」を諦めないという形で成熟を示した。
キャリア上の位置づけとして、『Funplex』はThe B-52’sの後期代表作である。デビュー作や『Cosmic Thing』ほど歴史的影響力が大きいわけではないが、長いキャリアを持つバンドが、自身の美学を損なわずに21世紀へ接続した作品として高く評価できる。懐古的な再現ではなく、The B-52’sがもともと持っていた未来的なキッチュさが、時代を越えて再び有効であることを証明したアルバムである。
全曲レビュー
1. Pump
オープニング曲「Pump」は、『Funplex』の方向性を即座に示す力強いダンス・ロック・ナンバーである。冒頭から太いビートと鋭いギターが前面に出て、The B-52’sが単なる懐かしのニュー・ウェイヴ・バンドとして戻ってきたわけではないことを明確にする。サウンドは非常に現代的で、低音の押し出しが強く、クラブ・ミュージックにも接近した肉体性がある。
タイトルの「Pump」は、身体を動かすこと、音量やエネルギーを上げること、あるいは性的なニュアンスを含む言葉として機能している。The B-52’sは初期から、直接的すぎない形で性や身体のイメージをポップなユーモアに変換してきた。この曲でも、その伝統が現代的なビートの上で展開される。
フレッド・シュナイダーのヴォーカルは、相変わらず歌うというよりも宣言し、呼びかけ、煽るようなスタイルである。ケイト・ピアソンとシンディ・ウィルソンのコーラスは、曲に華やかさと厚みを与える。三者の声の組み合わせは、The B-52’sの最大の個性であり、この曲でもその効果は明確である。
歌詞は、身体的なエネルギーとパーティー感覚を中心にしている。深刻な物語ではなく、音楽が身体を動かし、場を熱くし、聴き手を巻き込むことが主題である。アルバムの幕開けとして、「Pump」は非常に機能的であり、『Funplex』が享楽的でダンサブルな作品であることを最初に刻み込む。
2. Hot Corner
「Hot Corner」は、タイトルからして熱気、危険、誘惑、都市の一角を連想させる楽曲である。The B-52’sの楽曲には、しばしば架空の場所や奇妙な空間が登場するが、この曲もその系譜にある。現実の街角でありながら、どこか漫画的で、ダンスフロア的で、B級映画のセットのような雰囲気を持っている。
音楽的には、跳ねるようなリズムと鋭いギターが特徴で、アルバム序盤の勢いをさらに強める。シンセサイザーは派手に鳴り、ビートは軽快だが十分な厚みがある。The B-52’sの初期作品にあったサーフ・ロック的なギターの感覚が、ここではより現代的なダンス・ロックへ変換されている。
歌詞のテーマは、熱を帯びた場所に集まる人々、欲望、視線、ナイトライフの高揚感である。The B-52’sは社会的な場を描くとき、それをリアリズムとしてではなく、過剰に色づけされたポップな空間として表現する。「Hot Corner」も、実在する場所というより、欲望と音楽が交差する象徴的なスポットとして響く。
この曲の魅力は、バンドが作り出す集団的なノリにある。フレッドの語り口、女性ヴォーカルのコーラス、ギターとビートの反復が合わさり、聴き手を奇妙な街角へ引き込む。『Funplex』が描く消費と快楽の複合施設の一部として、この曲は重要な景色を作っている。
3. Ultraviolet
「Ultraviolet」は、The B-52’sのSF的・未来的な感覚が強く表れた楽曲である。タイトルの「紫外線」は、目に見えない光、危険な輝き、人工的なまぶしさ、クラブの照明などを連想させる。The B-52’sはデビュー当初から宇宙、放射線、奇妙な科学、レトロ・フューチャーのイメージを好んできたが、この曲はそれを21世紀的なエレクトロ・ロックとして提示している。
サウンドは、シンセサイザーのきらびやかな質感と、ギターの硬質なリフが組み合わされている。ビートはダンサブルで、全体にネオンのような輝きがある。ケイトとシンディのヴォーカルは、曲に浮遊感とグラマラスな雰囲気を与え、フレッドの声がそこにコミカルで奇妙な角度を加える。
歌詞では、紫外線のように見えない力にさらされる感覚が描かれる。これは恋愛や欲望の比喩としても、現代社会の人工的な刺激の比喩としても読める。光は魅力的でありながら、過剰に浴びると危険でもある。この二面性は、The B-52’sが得意とする「楽しいが少し不気味」な世界観に合っている。
「Ultraviolet」は、『Funplex』の中でも特にレトロ・フューチャー的な色彩が濃い曲である。初期The B-52’sの宇宙的なキッチュさを現代的なプロダクションで更新しており、バンドの美学が長い時間を経ても有効であることを示している。
4. Juliet of the Spirits
「Juliet of the Spirits」は、タイトルからフェデリコ・フェリーニの映画『魂のジュリエッタ』を連想させる楽曲であり、The B-52’sらしい映画的・演劇的な感覚が表れている。彼らの音楽はしばしば、具体的なストーリーよりも、奇妙なキャラクターや場面設定によって成立する。この曲も、現実と幻想が混ざるようなタイトルが、楽曲全体に不思議な奥行きを与えている。
音楽的には、アルバム序盤の直線的なダンス・ロックから少し雰囲気を変え、幻想的な色合いを含んでいる。ビートは依然として明快だが、メロディやヴォーカルの配置にはどこか浮遊感がある。ケイトとシンディの声は、ここで特に演劇的な役割を担い、曲に神秘的で華やかな空気を加えている。
歌詞のテーマは、内面の幻想、女性的な自己解放、スピリチュアルなイメージ、夢と現実の境界に関わるものとして読める。The B-52’sは真面目な神秘主義に向かうのではなく、ポップでキッチュな形で幻想を扱う。そのため、この曲も重々しい内省ではなく、カラフルな夢の中を踊るような印象を持つ。
「Juliet of the Spirits」は、The B-52’sが単なるパーティー・バンドではないことを示す曲である。彼らのパーティー性は、常に映画、ファッション、B級SF、シュールなイメージと結びついている。この曲は、その視覚的な想像力を強く感じさせる一曲である。
5. Funplex
表題曲「Funplex」は、アルバムのコンセプトを最も明確に示す中心的な楽曲である。タイトルが意味するのは、単なる楽しい場所ではなく、楽しさが商品化され、複合施設化され、過剰に演出された現代的な空間である。ショッピングモール、アミューズメント施設、クラブ、広告、消費、欲望が一体となった場所。それが「Funplex」という言葉に凝縮されている。
サウンドは非常にキャッチーで、ギターとシンセのリフが力強く絡み合う。ビートは踊りやすく、サビは明快で、The B-52’sの後期代表曲として十分な存在感を持つ。フレッド・シュナイダーの語りに近いヴォーカルは、消費社会のガイド役のように響き、ケイトとシンディのコーラスがそこに華やかな人工性を加える。
歌詞では、買い物、欲望、誘惑、社会的な過剰さがユーモラスに描かれる。The B-52’sは、消費文化をただ批判するのではなく、その中で踊りながら奇妙さを暴き出す。楽しさに飲み込まれることの滑稽さと、それでも楽しさを求めてしまう人間の性質が同時に表現されている。
この曲の重要性は、『Funplex』というアルバム全体が単なる復活作ではなく、現代の娯楽社会をThe B-52’s流に読み替えた作品であることを示す点にある。彼らは消費社会の中で踊る。しかし、その踊りは無批判な同化ではなく、笑いと誇張による批評でもある。
6. Eyes Wide Open
「Eyes Wide Open」は、アルバムの中でも比較的ストレートなダンス・ロックとして機能する楽曲である。タイトルは「目を大きく開けている」という意味で、覚醒、警戒、欲望への気づき、あるいは現実を直視する姿勢を示している。The B-52’sらしいポップな軽さの中に、少し鋭い観察眼が感じられる。
音楽的には、ギターのリフとビートが前面に出ており、楽曲はタイトに進む。シンセサイザーは派手すぎず、リズムを補強するように使われている。バンド全体のグルーヴは非常に明快で、2000年代のダンス・ロックの文脈にも自然に接続している。
歌詞では、目を開き、何かを見逃さず、刺激的な世界へ入っていく感覚が描かれる。これは恋愛やナイトライフへの期待としても、現代社会の過剰な情報や誘惑に対する反応としても読める。The B-52’sは、深刻な社会批評を直接語るのではなく、こうしたフレーズの中に現代的な感覚を滑り込ませる。
この曲は、表題曲ほどの強烈なコンセプト性はないが、アルバムの中盤を引き締める役割を果たしている。The B-52’sが長いキャリアを経ても、ダンス・ロックのバンドとして十分に身体的な説得力を持っていることを示す一曲である。
7. Love in the Year 3000
「Love in the Year 3000」は、The B-52’sのレトロ・フューチャー感覚を象徴する楽曲である。タイトルは「3000年の愛」を意味し、未来の恋愛、宇宙時代のロマンス、SF的なユーモアを連想させる。The B-52’sは初期から宇宙や未来を題材にしてきたが、その未来像は常に最先端のテクノロジーというより、1950年代や1960年代のB級SFが想像した未来に近い。そのキッチュさが彼らの魅力である。
サウンドは、シンセサイザーの明るい響きとダンス・ビートを中心に構成され、未来的でありながらどこか古めかしい感覚を持つ。これは意図的な美学であり、未来をリアルに描くのではなく、ポップ・カルチャーが夢見た未来を再利用している。ケイトとシンディの声は、宇宙的なラブソングに華やかな色を加える。
歌詞では、未来における恋愛がコミカルに描かれる。3000年という遠い未来を設定することで、愛や欲望がどれだけ時代を越えて続くのかという普遍性も浮かび上がる。一方で、その表現は真面目なSFではなく、あくまで遊び心に満ちている。愛は未来でも奇妙で、派手で、少しばかばかしい。The B-52’sらしい視点である。
この曲は、バンドの原点と『Funplex』の現代性をつなぐ重要なトラックである。彼らの未来趣味は懐古的でありながら、2000年代のエレクトロ・ポップの質感とも相性が良い。The B-52’sが時代遅れではなく、むしろ時代をまたぐ奇妙な未来感を持っていることを示している。
8. Deviant Ingredient
「Deviant Ingredient」は、タイトルからしてThe B-52’sらしい奇妙な魅力を持つ楽曲である。「deviant」は逸脱した、規範から外れたという意味を持ち、「ingredient」は材料を意味する。つまり「逸脱した材料」という言葉は、料理、身体、欲望、人格、社会的な異物感を同時に連想させる。The B-52’sの美学はまさに、ポップ・ミュージックに奇妙な材料を混ぜ込むことにある。
音楽的には、ややダークでグルーヴィーな印象があり、アルバムの中でも毒気のある曲である。ビートは太く、ギターとシンセが不穏な空気を作る。フレッドの声は、怪しい案内人のように響き、女性ヴォーカルのコーラスがそこに妖しさを加える。
歌詞では、規範から外れた存在、変わった欲望、普通ではない魅力が主題になっていると読める。The B-52’sは、初期から「普通ではないこと」を祝祭化してきたバンドである。パンクやニュー・ウェイヴの文脈において、彼らは怒りや政治的主張だけではなく、奇妙さ、キャンプ感覚、性的曖昧さ、ユーモアを通じて、規範への抵抗を示してきた。この曲もその延長にある。
「Deviant Ingredient」は、『Funplex』の中で最もThe B-52’s的な異物感を強く感じさせる曲のひとつである。楽しさの中に毒があり、ポップの中に逸脱がある。そのバランスこそが、彼らの長いキャリアを支えてきた要素である。
9. Too Much to Think About
「Too Much to Think About」は、タイトルの通り、考えることが多すぎる現代的な疲労感を扱った楽曲である。The B-52’sは基本的に享楽的なバンドだが、その楽しさは現実逃避だけではない。むしろ、現代社会の情報過多、消費過多、刺激過多に対して、踊ることや笑うことを防衛手段として提示してきた。この曲はその側面をよく示している。
サウンドは、軽快でポップだが、どこかせわしない感覚がある。ビートは安定しているものの、歌詞のテーマと合わせて聴くと、頭の中が忙しく動いているような印象を与える。ヴォーカルは明るく響くが、その裏には少しの疲労と混乱がある。
歌詞では、あまりにも多くの情報、選択肢、心配ごとに囲まれた状態が描かれる。これは2000年代以降の社会に非常によく合うテーマである。インターネット、広告、消費、社会的な期待が増え続ける中で、人は常に何かを考え、選び、反応し続けなければならない。The B-52’sはその状況を重苦しいバラードにするのではなく、軽快なダンス・ロックとして処理する。
この曲の面白さは、楽しさと疲労が同時に存在している点である。踊っているのに、頭の中は混乱している。明るいのに、少し追い詰められている。『Funplex』というアルバムが、現代の娯楽社会を単純に肯定するだけではないことを示す重要な一曲である。
10. Dancing Now
「Dancing Now」は、タイトル通り、現在進行形のダンスを主題にした楽曲である。The B-52’sにとって、ダンスは単なる音楽的要素ではなく、存在の中心にある行為である。彼らの音楽は、聴くものというより、身体を動かし、集団的な空間を作り、奇妙な自由を生み出すものとして機能してきた。
サウンドは、アルバム後半において再びダンス・ビートを前面に出し、エネルギーを高める。ギターとシンセが絡み合い、リズムは明快に身体を押す。ケイトとシンディのヴォーカルは華やかで、フレッドの声が曲にユーモラスな角度を加える。この三者の声の配置が、The B-52’sのパーティー感覚を支えている。
歌詞のテーマは、今この瞬間に踊ることの重要性である。過去や未来ではなく、「now」という現在が強調されている点が重要である。長いキャリアを持つバンドがこの言葉を歌うとき、それは若さの特権としてのダンスではなく、年齢を重ねてもなお現在を生きるための行為として響く。
「Dancing Now」は、『Funplex』の核心にある姿勢を端的に示す。The B-52’sは、若者のためだけのダンス・ミュージックではなく、誰もが奇妙に、派手に、自由に踊るための音楽を作る。そこには年齢、性別、規範を越えるポップな解放感がある。
11. Keep This Party Going
アルバムの最後を飾る「Keep This Party Going」は、The B-52’sの哲学をそのままタイトルにしたような楽曲である。「このパーティーを続けよう」という言葉は、単なる宴会の延長を意味するだけではない。長い活動休止を経て戻ってきたバンドが、自分たちの音楽、コミュニティ、享楽の精神をまだ終わらせないという宣言として響く。
サウンドは、締めくくりにふさわしく明るく、リズムは力強い。アルバム全体を通じて提示されてきたダンス・ロックの要素がここで再確認される。コーラスは大きく、楽曲全体に祝祭的な雰囲気がある。The B-52’sの音楽がライブ空間でどれほど機能するかを想像させる曲である。
歌詞では、パーティーを続けることが生き方として提示される。これは無責任な現実逃避ではなく、退屈、老い、不安、社会的な抑圧に対する抵抗としての楽しさである。The B-52’sは、真面目さだけが抵抗ではないことを示すバンドである。笑い、踊り、派手な服を着て、奇妙な言葉を叫ぶこともまた、規範への反抗になり得る。
終曲として、この曲は『Funplex』を非常に前向きに締めくくる。アルバム全体が描いてきた消費社会の奇妙な遊園地、未来の恋愛、情報過多、逸脱した欲望、ダンスの現在性が、最後には「続ける」という言葉に集約される。The B-52’sは、過去のバンドではなく、今もパーティーを続ける存在として本作を終える。
総評
『Funplex』は、The B-52’sが長い沈黙を破って発表した復帰作でありながら、単なる懐古的な再結成アルバムではない。むしろ本作は、彼らが1970年代末から提示してきたニュー・ウェイヴのキッチュな享楽性、ダンス・ビート、SF的ユーモア、性的な遊び、集団的な祝祭感を、2000年代の音圧とプロダクションで再起動した作品である。
音楽的には、初期The B-52’sのサーフ・ロック的なギターやガレージ感覚は、より硬質でモダンなダンス・ロックへ変化している。シンセサイザーと低音は太く、ビートはクラブ・ミュージック以後の身体性を持つ。しかし、楽曲の構造やヴォーカルの掛け合いには、紛れもなくThe B-52’sらしさが残っている。フレッド・シュナイダーの語り口、ケイト・ピアソンとシンディ・ウィルソンの強いコーラス、奇妙なタイトル、過剰なイメージの連打は、本作を他のダンス・ロック作品とは異なるものにしている。
本作の中心テーマは、「楽しさの継続」である。ただし、その楽しさは単純な無邪気さではない。表題曲「Funplex」では、消費社会の巨大な娯楽施設が描かれ、「Too Much to Think About」では、情報や刺激の多すぎる現代の疲労が示される。「Deviant Ingredient」では、規範から外れた存在の魅力が語られ、「Love in the Year 3000」では、未来までもポップな冗談の対象になる。The B-52’sの楽しさは、現実を見ないためのものではなく、現実を奇妙に変形し、踊れるものへ変換する力である。
また、『Funplex』は年齢を重ねたバンドによるダンス・アルバムとしても興味深い。ロックにおいて、ベテラン・アーティストはしばしば落ち着いた表現や回顧的な作風へ向かう。しかしThe B-52’sは、本作でむしろビートを強化し、派手さを増し、身体性を前面に出した。これは若作りではなく、彼らがもともと持っていた「年齢不詳のパーティー性」が、長い時間を経ても機能することを示している。彼らの音楽では、若さそのものよりも、奇妙に楽しむ姿勢の方が重要である。
2000年代の音楽シーンとの関係でも、本作は意味を持つ。ポスト・パンク・リバイバルやダンス・ロックの流行によって、The B-52’sの先駆性は再評価されやすい状況にあった。LCD SoundsystemやThe Raptureのようなバンドが、ロックとクラブ・ミュージックを再接続していた時代に、The B-52’sが新作を発表したことは象徴的である。彼らはその潮流に乗ったというより、むしろその潮流の源流のひとつとして、現代のプロダクションを身につけて戻ってきた。
日本のリスナーにとって『Funplex』は、The B-52’sの入門作としても、後期作品としても楽しめるアルバムである。初期の『The B-52’s』や『Wild Planet』にある荒削りなニュー・ウェイヴ感を求める場合、本作はやや整いすぎて聞こえるかもしれない。一方で、『Cosmic Thing』のポップな楽しさや「Love Shack」の祝祭感に親しんでいるリスナーにとっては、その精神が現代的な音で蘇った作品として受け取りやすい。
本作は、革命的な新機軸を提示するアルバムではない。しかし、The B-52’sがThe B-52’sであるために必要な要素を見失わず、それを現代に通じる音へ更新している点で非常に優れている。長いブランクを経たバンドの復帰作には、しばしば過去の再現や無理な方向転換が見られるが、『Funplex』はそのどちらにも偏らない。過去の美学を活かしながら、ビートと音圧を現在形にする。そのバランスが本作の成功である。
総合的に見て、『Funplex』はThe B-52’s後期の重要作であり、彼らの音楽が単なる懐かしいニュー・ウェイヴではなく、今なお踊れる奇妙なポップとして成立することを証明したアルバムである。楽しさ、逸脱、消費社会への皮肉、身体性、SF的ユーモアが一体となった本作は、The B-52’sというバンドの独自性を改めて示している。パーティーは終わっていない。むしろ、このアルバムでは、そのパーティーが現代の巨大な娯楽施設の中で再び始まっている。
おすすめアルバム
1. The B-52’s『The B-52’s』
1979年のデビュー・アルバムであり、The B-52’sの原点を知るために欠かせない作品である。「Rock Lobster」を含み、サーフ・ロック、ポスト・パンク、B級SF的ユーモア、奇妙なヴォーカルの掛け合いがすでに完成されている。『Funplex』の現代的な音像とは異なるが、バンドの美学の核が最も生々しく表れている。
2. The B-52’s『Cosmic Thing』
1989年の大ヒット作であり、「Love Shack」「Roam」を収録した代表作である。バンドのニュー・ウェイヴ的な奇妙さを、よりポップで大衆的な形へ広げたアルバムであり、『Funplex』の祝祭感を理解するうえでも重要である。明るさ、ダンス性、コーラスの強さが高い水準で結びついている。
3. The B-52’s『Wild Planet』
1980年のセカンド・アルバムで、デビュー作の路線をさらに鋭く発展させた作品である。ローファイで奇妙なエネルギー、ポスト・パンク的なリズム、キッチュなイメージが濃く、『Funplex』に受け継がれる逸脱性の源流が分かる。初期The B-52’sの攻撃的な楽しさを味わうのに適している。
4. LCD Soundsystem『Sound of Silver』
2000年代のダンス・ロック/ポスト・パンク・リバイバルを代表する作品である。The B-52’sとは音楽的な質感が異なるが、ロックとダンス・ミュージックを結びつけ、ユーモアと批評性を同居させる点で関連性が高い。『Funplex』が発表された時代のダンス・ロック文脈を理解するうえで有用である。
5. Devo『Freedom of Choice』
ニュー・ウェイヴにおけるユーモア、機械的ビート、消費社会への皮肉を代表するアルバムである。The B-52’sがより有機的でパーティー的な奇妙さを持つのに対し、Devoはより冷笑的で機械的な視点を持つ。両者を比較することで、ニュー・ウェイヴが持っていた批評性とポップ性の幅がよく分かる。

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