発売日: 2022年1月14日
ジャンル: オルタナティブR&B、ポップ、エクスペリメンタル
アルバム全体の印象
「Caprisongs」は、FKA twigsがこれまでの作品で築き上げた内省的で実験的な世界観を一新し、開放感とポップさを前面に押し出したミクステープである。これまでの作品と比べ、より明るく、友人やリスナーとのつながりを意識した内容で、twigsがこれまで見せてこなかった側面が色濃く反映されている。
制作には、ArcaやEl Guincho、Mike Dean、The Weekndといった多様なアーティストやプロデューサーが参加しており、それぞれのスタイルが曲ごとに異なる雰囲気を生み出している。アルバム全体を通して占星術（特に山羊座）やアイデンティティ、友情、自由といったテーマが一貫しており、twigsのアーティストとしての進化が感じられる。
サウンド面では、エレクトロニカやオルタナティブR&Bをベースに、ダンスホールやヒップホップなど、幅広いジャンルを取り入れている。彼女の軽やかで遊び心あふれるボーカルは、親しみやすさと複雑さの両立に成功しており、彼女の音楽的な柔軟性を改めて証明している。
「Caprisongs」は、FKA twigsがファンや仲間たちとともに作り上げた、祝祭のような作品だ。これまでの彼女を知るリスナーにとっては新鮮な驚きとなり、新たなファンを惹きつける魅力も持ち合わせている。
各曲解説
1. Ride the Dragon
アルバムの幕を開けるこの曲は、twigsの自信に満ちたボーカルとエネルギッシュなビートが印象的。リリックには「龍に乗ってどこまでも行ける」という自由な精神が反映されており、アルバム全体のテーマを象徴している。
2. Honda (feat. Pa Salieu)
イギリスのラッパーPa Salieuをフィーチャーしたダンスホール風のトラック。軽快なリズムとtwigsのリラックスしたボーカルが心地よく、仲間とドライブを楽しむような開放感に溢れている。
3. Meta Angel
自己探求をテーマにした楽曲。twigsが自分自身に問いかけるような歌詞が特徴で、繊細なメロディと高揚感のあるサウンドが美しく融合している。天使に助けを求めるような歌詞が、リスナーの心を打つ。
4. Tears in the Club (feat. The Weeknd)
The Weekndとの共演によるアルバムのハイライトの一つ。クラブの煌びやかな雰囲気と悲しみに満ちた歌詞が対照的で、切なさとカタルシスが同時に押し寄せる。The Weekndとの相性は抜群で、2人のボーカルが絡み合う展開は圧巻だ。
5. Oh My Love
恋愛における不安と期待を描いたキャッチーな楽曲。明るいメロディが印象的だが、歌詞の内容は複雑な感情を描いている。「どうして私だけが愛されないの？」という切実な問いが、リスナーの心に深く響く。
6. Pamplemousse
短いインタールード的な曲で、タイトルはフランス語で「グレープフルーツ」を意味する。跳ねるようなリズムと遊び心のあるアレンジが、アルバムの流れにユニークなスパイスを加えている。
7. Caprisongs Interlude
親しい友人たちとの会話を収録したこのインタールードは、アルバム全体の親密なトーンを強調している。日常の中にあるつながりの温かさを感じることができる。
8. Careless (feat. Daniel Caesar)
カナダのシンガーソングライターDaniel Caesarをフィーチャーした美しいバラード。twigsとDanielのデュエットが、壊れやすい愛とその痛みを詩的に表現している。
9. Minds of Men
緊張感のあるリズムと重厚なベースが特徴的な楽曲。歌詞は、男性優位の社会における女性の葛藤を描いており、twigsの強い意志が伝わる。
10. Which Way (feat. Dystopia)
不安定でミステリアスなサウンドスケープが、楽曲全体に漂う。Dystopiaの存在感あるボーカルがtwigsの声と絡み合い、独特の化学反応を生み出している。
11. Jealousy (feat. Rema)
ナイジェリアのアーティストRemaを迎えたアフロビート調のトラック。軽やかでダンサブルなサウンドが楽しく、twigsの柔軟なボーカルスタイルが光る。
12. Thank You Song
アルバムを締めくくる感動的なバラード。友人やリスナー、そして自分自身への感謝を込めた歌詞が印象的で、温かい余韻を残す。
アルバム総評
「Caprisongs」は、これまでのFKA twigsのイメージを一新した、ポジティブで遊び心あふれる作品だ。占星術や友情、自己発見といったテーマが一貫しており、聴いていると彼女の感情や思考に寄り添うような親密さを感じることができる。サウンド面でも幅広いジャンルを取り入れながら、彼女らしい繊細さとアート性を失っていない点が見事だ。FKA twigsの新たな一面を知りたい人に、ぜひ聴いてほしい一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「MAGDALENE」 by FKA twigs
より内省的でドラマチックな前作。「Caprisongs」との対比が興味深く、どちらもtwigsの多様な魅力を感じられる。
「When I Get Home」 by Solange
個人的で芸術的なアプローチと、実験的なサウンドが「Caprisongs」と通じる部分がある。
「Lemonade」 by Beyoncé
多様なジャンルを取り入れつつ、強いメッセージ性を持つアルバム。twigsのファンにも刺さる要素が多い。
「CTRL」 by SZA
自己探求や恋愛に関するテーマが共通しており、親密な歌詞と洗練されたサウンドが魅力。
「How I’m Feeling Now」 by Charli XCX
ポップスの枠を超えた実験的なサウンドと、個人的な感情を大胆に表現した作品。「Caprisongs」のエネルギーとリンクする。
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