1. 歌詞の概要
「Might Be Stars(マイト・ビー・スターズ)」は、The Wannadies(ザ・ワナダイズ)が1994年にリリースしたアルバム『Be a Girl』に収録された、胸を焦がすような青春の衝動と、無限の可能性を高らかに歌い上げた名曲である。
タイトルの「Might Be Stars(星になれるかもしれない)」というフレーズは、夢を追いかける者たちの希望と不安を同時に孕んでおり、「今はまだ何者でもないけれど、いつかきっと」という切実な願いがそのまま言葉になっている。
この楽曲が描くのは、若さと未完成の美しさだ。
確信はないけれど、信じたい気持ち。答えはないけれど、走り続けたい衝動。
そんな“青さ”そのものを、シンプルかつストレートに、そして瑞々しく表現しているのがこの「Might Be Stars」なのである。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Wannadiesは、スウェーデン北部の小都市スンツヴァル出身のバンドで、1988年に活動を開始した。
90年代前半にはスウェーデン国内で人気を博し、やがてイギリスのインディー・ロック・シーンに進出し頭角を現す。
彼らの音楽性は、Buzzcocks的なパンクのスピード感、Teenage Fanclubのようなギター・ポップの甘さ、そして北欧らしいメロディの叙情性を併せ持っており、「Might Be Stars」もその特徴が凝縮された一曲である。
アルバム『Be a Girl』の中では、「You and Me Song」に次いで広く知られるこの曲は、リリース当初こそ目立たなかったが、後にバンドのコア・ファンを中心に支持を集める“隠れた代表曲”となった。
当時のヨーロッパでは「脱構築された青春」がサブカルチャーの中核となっており、The Wannadiesのようなバンドは、その象徴的存在だった。

3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Might Be Stars」の印象的なフレーズを抜粋し、和訳を併記する。
“We don’t know what we’re doing / We don’t care what’s going on”
「自分たちが何をしてるかなんて分からない / でも、それがどうしたっていうの?」
“You and I / We might be stars”
「君と僕 / 星になれるかもしれないんだ」
“If we just keep on shining / If we just keep on trying”
「ただ輝き続ければ / ただ頑張り続ければさ」
“And never stop dreaming / Never stop believing”
「夢を諦めずに / 信じることをやめなければ」
歌詞全文はこちらで確認できます:
The Wannadies – Might Be Stars Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「Might Be Stars」は、まさに“根拠なき確信”を讃えるような曲である。
“今は分からない”“何も見えていない”という状態を否定するのではなく、むしろそれこそが若さの特権であると歌っているのが最大の魅力だ。
この曲における“星”とは、単なる名声や成功を意味するのではない。
それはむしろ、自分だけの光を見つけて輝くこと。世界の片隅でも、自分らしく在ることの象徴だ。
“Shining”や“Trying”という単語が繰り返されることで、夢を叶えるかどうかよりも、「あきらめない姿勢」そのものが尊いのだという哲学が強調されている。
また、「You and I」という形で“2人”が常に主語になっていることも特徴的だ。
それは、決して孤独な戦いではないという連帯感、共に走る誰かがいるからこそ、“星になれるかもしれない”という希望が生まれるのだと伝えてくれる。
この曲は、10代や20代の“どうしようもない衝動”を肯定するようなエネルギーに満ちているが、同時にどこか大人の視点からそれを懐かしむような温度も感じられる。
だからこそ、「Might Be Stars」は、青春の最中に聴いても、青春を振り返る立場で聴いても、胸に残る名曲なのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Star Sign by Teenage Fanclub
星座をモチーフにした甘酸っぱい青春讃歌。ギター・ポップの金字塔的ナンバー。 - She’s in Fashion by Suede
若さと刹那をまとった一瞬のきらめきを、美しくも儚く歌い上げた名バラード。 - This Is the Day by The The
日常の中の希望と予感を、ゆったりとしたグルーヴの中に閉じ込めた一曲。 - Gigantic by Pixies
ひたむきな衝動と曖昧な憧れを、荒々しくもロマンティックに奏でたロック・ソング。 -
Here’s Where the Story Ends by The Sundays
誰にでも訪れる“ひとつの終わり”を、そっと見つめるような優しい視点の名曲。
6. “星になるかもしれない――その可能性が、すでに美しい”
「Might Be Stars」は、あえて確証のない未来に向かって手を伸ばすすべての人に捧げられた、無垢で、まっすぐなアンセムである。
それは、“何者でもない僕たち”が、“何者かになるかもしれない”ことを夢見ながら日々を過ごすことの意味を、全力で肯定する音楽だ。
この曲は、輝くことそのものではなく、“輝きたいと願うこと”の美しさを讃えるラブレターであり、青春という名の未完成な夜空に打ち上げられた、静かな花火のような一曲なのだ。
だからこそ、人生のどの瞬間にこの曲と出会っても、「もしかしたら自分もまだ星になれるかもしれない」と思わせてくれる。そんな、永遠の予感を宿した楽曲である。
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