発売日: 1967年3月17日
ジャンル: サイケデリック・ロック / ブルースロック
The Grateful Deadのセルフタイトルデビューアルバムは、1960年代のカウンターカルチャーとサイケデリックシーンの象徴として知られるバンドの原点であり、彼らのブルースロックやジャムバンドとしてのルーツを色濃く反映した作品だ。このアルバムでは、彼らがライブパフォーマンスで磨き上げた即興的な要素をスタジオ録音に落とし込む試みが行われている。
Producerには、サイケデリックロックの黎明期を支えたDavid Hassingerが起用され、録音の舞台となったロサンゼルスのRCAスタジオでは、バンドの勢いをそのまま捉えたような活気あふれるサウンドが作り上げられた。以下に、全9曲を解説する。
1. The Golden Road (To Unlimited Devotion)
アルバムのオープニングを飾るアップテンポなナンバーで、1960年代のサイケデリックシーンのエネルギーを体現している。キャッチーなメロディと陽気なコーラスが印象的で、バンドの楽しい一面を強調した楽曲。
2. Beat It On Down the Line
ブルースの影響が強い楽曲で、リズミカルなギターリフと軽快なドラムが特徴的。ダンスフロアを意識した軽快なビートが、ライブ感を生み出している。
3. Good Morning Little School Girl
ブルースの名曲をカバーした一曲で、Ron “Pigpen” McKernanのソウルフルなボーカルが際立つ。ギターとハーモニカの絡み合いが絶妙で、バンドのブルースへの愛が伝わる。
4. Cold Rain and Snow
トラディショナルな楽曲をアレンジしたナンバーで、Jerry Garciaの温かみのあるボーカルと、繊細なギターワークが楽曲に深みを与えている。サイケデリックなアプローチも垣間見える一曲。
5. Sitting on Top of the World
またもやブルースのカバーだが、エネルギッシュで軽快なアレンジが特徴。フィドル風のギターワークとタイトなリズムセクションが、曲に陽気な雰囲気を加えている。
6. Cream Puff War
アルバム唯一のJerry Garcia作詞・作曲のオリジナル曲で、ガレージロックのような攻撃的なエネルギーを持つ。サイケデリックなギターソロが特に印象的で、バンドのロック志向を感じさせる。
7. Morning Dew
Bonnie Dobsonのフォークソングをカバーした、アルバムの中でも最もドラマチックな楽曲。核戦争後の静けさを描いた歌詞と、感情豊かな演奏が融合し、バンドの表現力を示す名演だ。
8. New, New Minglewood Blues
トラディショナルなブルースをベースにした楽曲で、Bob Weirの荒々しいボーカルが際立つ。ギターのスライドプレイと躍動感のあるリズムが、ブルースロックの楽しさを伝える。
9. Viola Lee Blues
アルバムのラストを飾る10分を超えるジャムセッション的な楽曲。ブルースをベースにした即興演奏が展開され、The Grateful Deadの真骨頂とも言える一曲。緩急をつけた構成が聴き手を没入させる。
アルバム総評
The Grateful Deadは、ブルースやフォークを基調にしながらも、サイケデリックな要素やジャムバンド的な即興演奏が随所に散りばめられた、バンドの原点とも言えるアルバムだ。ライブでのパフォーマンスが中心だったバンドが、スタジオ録音でそのエネルギーを表現しようとした試みが感じられる。
ただし、後年の代表作と比べると、アルバム全体にまとまりが欠ける面もあるが、それが初期の荒削りな魅力ともなっている。The Grateful Deadのルーツを探る上で欠かせない作品であり、ブルースやフォークロックが好きなリスナーには特におすすめだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Anthem of the Sun by The Grateful Dead
サイケデリックとジャムセッションの融合が深化した2ndアルバム。スタジオ録音とライブ録音を組み合わせた実験作。
Workingman’s Dead by The Grateful Dead
フォークやカントリーの影響を色濃く受けた1970年の名盤。初期のブルース志向とは異なる成熟したサウンドが楽しめる。
The Doors by The Doors
同時代のサイケデリックシーンを代表するアルバムで、ブルースやロックの融合が聴ける。
Surrealistic Pillow by Jefferson Airplane
The Grateful Deadと同じサンフランシスコシーンから登場したバンドの名盤。サイケデリックロックのクラシック。
Electric Music for the Mind and Body by Country Joe and the Fish
サイケデリックロックの初期名作。ブルースやフォークの要素が好きなリスナーにおすすめ。
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