NSYNCとは?ポップの黄金時代を築いたボーイバンドの経歴・音楽性・代表曲・アルバムを解説
NSYNC(イン・シンク)は、1995年にアメリカ・フロリダ州オーランドで結成された5人組ボーイバンドである。メンバーはJustin Timberlake、JC Chasez、Chris Kirkpatrick、Joey Fatone、Lance Bass。1990年代後半から2000年代初頭にかけて世界的な人気を集めた。
最大の特徴は、5人の声を重ねた厚いハーモニーと、R&Bのリズムを取り入れたポップソング、そしてダンスを含めた華やかなパフォーマンスにある。「Bye Bye Bye」「It’s Gonna Be Me」などは、当時のティーン・ポップを代表するヒット曲となった。
同時代のBackstreet Boysと並んでボーイバンド・ブームの中心に立った存在だが、NSYNCは活動後半になるほどR&B、ファンク、ヒップホップ、電子音を積極的に取り入れていった。単なるアイドルグループから、メンバー自身も制作に関わる現代的なポップグループへ変化していった点が、彼らのキャリアを理解する重要なポイントである。
NSYNCの背景と歴史
NSYNCは、1990年代半ばのオーランドで結成された。
Chris Kirkpatrickを中心にメンバーが集められ、Justin TimberlakeとJC Chasezが参加する。2人は子どもの頃にテレビ番組『The All-New Mickey Mouse Club』に出演しており、すでに歌やダンスの経験を持っていた。そこへJoey Fatoneが加わり、最終的にLance Bassが加入して5人編成が完成した。
グループ名のNSYNCは、Justin、Chris、Joey、Jason、JCという当初のメンバーの名前の最後の文字をつないだものとされる。Jason Galassoが離れた後にLance Bassが加入したが、Bassには「Lansten」というニックネームが使われ、名前とのつながりが保たれた。
NSYNCは最初からアメリカで大成功したわけではない。初期にはドイツを中心とするヨーロッパで活動し、1997年にデビューアルバム’N Syncを発表した。
その後アメリカでも人気が急上昇する。「I Want You Back」「Tearin’ Up My Heart」などがヒットし、Backstreet Boys、Britney Spears、Christina Aguileraらとともに、1990年代末のティーン・ポップ・ブームを代表する存在となった。
しかし、成功の裏ではマネージメントや契約をめぐる問題が起こっていた。NSYNCはマネージャーのLou Pearlmanらとの関係を解消し、法的な争いを経てJive Recordsへ移る。
この出来事の後に発表されたのが、2000年のNo Strings Attachedだった。
タイトルには「ひもで操られていない」という意味があり、操り人形を使ったジャケットや「Bye Bye Bye」のミュージックビデオも、自由を取り戻すというイメージと結びついていた。アルバムは発売直後から驚異的な売り上げを記録し、NSYNCはアメリカのポップ市場の中心に立つ。
2001年にはCelebrityを発表。ここではJustin TimberlakeやJC Chasezが曲作りと制作へさらに深く関わり、R&Bやヒップホップ、電子音を強めていった。
ツアー終了後の2002年頃からNSYNCは活動休止状態となる。Justin Timberlakeはソロ活動を開始し、やがて世界的なソロスターとなった。JC Chasezもソロ作品を発表し、ほかのメンバーも音楽、俳優、テレビなどそれぞれの道へ進んだ。
正式な解散を大々的に発表したわけではないため、その後も節目でメンバーが集まることがあった。2013年にはMTV Video Music Awardsで短い再結成パフォーマンスを披露。2023年には映画『Trolls Band Together』のため、5人による約20年ぶりの新曲「Better Place」を発表した。
NSYNCの音楽スタイルと特徴
NSYNCの音楽を理解するうえで、まず重要なのがボーカルのハーモニーである。
5人全員が歌えることを生かし、主旋律の周囲に複数の声を重ねる。特にサビでは一人の歌手だけでは出せない厚みが生まれる。グループ名の「in sync=同調して」という言葉を思わせるほど、声をそろえることが重要だった。
その中心となったのがJustin TimberlakeとJC Chasezである。2人がリードボーカルを担当することが多く、Justinの軽く柔らかな高音と、JCの力強く伸びる声が曲によって使い分けられた。
初期の楽曲は、当時のヨーロッパで流行していたダンス・ポップの影響が強い。電子的なビートとシンセサイザーを使い、覚えやすいサビへ一気に進む構成が多かった。
No Strings Attachedの頃になると、音はより強くアメリカのR&Bへ接近する。ドラムの音を細かく切ったビートやファンク的なベースを使い、単純な明るいポップとは違うリズムの面白さが増えていった。
さらにCelebrityでは、声そのものを機械的に加工したり、ビートボックスを使ったりする。2000年代のポップやR&Bにつながる音作りをかなり早い段階で試していた。
そして音楽と同じくらい重要だったのがダンスである。5人が細かく動きをそろえるパフォーマンスはNSYNCの大きな魅力であり、ミュージックビデオやライブも含めて一つの作品として見せていた。
NSYNCの代表曲
「Tearin’ Up My Heart」
初期NSYNCを代表する曲である。アメリカでグループの知名度を大きく高めた楽曲の一つで、デビュー時代の音楽性がよく表れている。
電子的なリズムと明るいキーボードを中心にしたダンス・ポップで、サビでは5人のコーラスが一気に広がる。後期作品と比べると音はシンプルだが、強いメロディ、ハーモニー、ダンスというNSYNCの基本はすでに完成している。
「Bye Bye Bye」
2000年のNo Strings Attachedから発表された、NSYNC最大の代表曲の一つである。
冒頭から硬いビートと印象的なフレーズが入り、サビでは「Bye Bye Bye」という短い言葉を何度も繰り返す。失敗した恋愛関係から離れようとする歌詞と、マネージメントから独立した当時のグループの状況が重なって受け取られることも多かった。
人形のように操られる5人を描いたミュージックビデオとダンスも強い印象を残した。2000年前後のボーイバンド文化を代表する一曲である。
「It’s Gonna Be Me」
No Strings Attachedからのもう一つの大ヒット曲で、NSYNCにとって初のBillboard Hot 100首位曲となった。
「Bye Bye Bye」よりR&Bの感覚が強く、リズムには細かな跳ねがある。Justin Timberlakeの特徴的な歌い方も目立ち、後のソロ活動につながる要素を聞き取ることができる。
一方、サビでは5人の声がしっかり重なる。個人の声とグループとしてのハーモニーを両立した、全盛期NSYNCの完成度が分かりやすい曲だ。
「This I Promise You」
同じNo Strings Attachedに収録されたバラードである。
派手なダンス曲とは違い、ここでは5人の歌唱力が中心となる。Richard Marxが書いた曲で、ゆっくりした伴奏の上にメンバーの声が重なり、後半へ進むほどハーモニーが厚くなる。
NSYNCをダンス中心のアイドルグループとしてしか知らない場合、その印象を変えてくれる曲でもある。彼らの土台にボーカルグループとしての能力があったことがよく分かる。
「Pop」
2001年のCelebrityを代表する曲であり、活動後期のNSYNCを理解するうえで特に重要である。
タイトル通り「ポップ」というジャンルそのものを扱いながら、音楽は従来のティーン・ポップよりかなり奇妙だ。電子音、R&B、ファンク、ヒップホップ的なビートを混ぜ、Justin Timberlakeのビートボックスも取り入れている。
「作られたアイドル」という見方に対し、自分たちの音楽を自分たちの言葉で主張しようとする内容でもある。初期から数年間でNSYNCがどれだけ変化したかが一曲で分かる。
アルバムごとに見るNSYNCの進化
’N Sync(1997年)
NSYNCのデビューアルバムである。最初にドイツで発表され、その後アメリカでも展開された。
「I Want You Back」「Tearin’ Up My Heart」など、初期を代表する曲を収録している。音楽的にはヨーロッパのダンス・ポップとアメリカのR&Bを組み合わせたスタイルだ。
電子的なビートはかなり明るく、曲の構造も分かりやすい。そこへ5人のハーモニーを乗せることで、単なるダンス・ミュージックとは違う個性を作っている。
Backstreet Boysと比較されることが多かった時期だが、NSYNCはより激しいダンスと、リズムを強調したパフォーマンスを前面に出していくことになる。
Home for Christmas(1998年)
クリスマス作品ではあるものの、NSYNCのボーカルグループとしての特徴を理解するには興味深いアルバムである。
派手なダンスが使えない分、声の重なりがはっきり聞こえる。伝統的なクリスマスソングと新曲を組み合わせながら、R&B的なコーラスや当時らしいポップ・アレンジを取り入れた。
NSYNCの人気が急上昇していた時期の作品でもあり、グループがアメリカのティーン・ポップ市場で大きな存在になっていく過程を伝えている。
No Strings Attached(2000年)
NSYNCのキャリアを代表するアルバムである。
「Bye Bye Bye」「It’s Gonna Be Me」「This I Promise You」などを収録。発売初週にアメリカで約240万枚を売り上げ、当時の記録を更新した。
ただし重要なのは売り上げだけではない。デビュー作と比べると、R&Bのリズムが強まり、ビートの音も硬くなった。明るいティーン・ポップから、より力強い2000年代型のポップへ変化している。
アルバムタイトルやビジュアルには、以前の契約問題から自由になったという意味も重ねられていた。商業的にも音楽的にも、NSYNCの全盛期を示す作品である。
Celebrity(2001年)
結果的に、活動休止前最後のスタジオアルバムとなった。
ここではJustin TimberlakeとJC Chasezが制作へさらに深く参加している。特にJustinは、後のソロ活動につながるR&Bやヒップホップへの関心を強く見せるようになった。
「Pop」では電子音やビートボックスを大胆に使い、「Gone」ではより落ち着いたR&Bへ進む。「Girlfriend」ではヒップホップとの距離がさらに近くなった。
デビュー当時の明るいダンス・ポップから比べると、かなり大きな変化である。もしNSYNCがその後もアルバム制作を続けていたなら、どの方向へ進んでいたのかを想像させる作品でもある。
NSYNCが影響を受けた音楽
NSYNCの重要な土台となったのは、Boyz II Menなどに代表されるR&Bボーカルグループの伝統である。
メンバーそれぞれに役割を持たせながら、複数の声を細かく重ねる方法は、R&Bやソウルのボーカルグループと深いつながりがある。ダンスだけではなく、アカペラでも成立するハーモニーを重視していた。
Michael Jacksonの影響も大きい。歌とダンスを完全に分けず、ステージ全体を一つのショーとして見せる考え方は、NSYNCのパフォーマンスにも強く表れている。
活動後半になると、現代的なR&Bやヒップホップの影響がさらに目立つようになる。特にJustin TimberlakeとJC Chasezが制作に関わる曲では、単純なポップビートから離れ、細かく変化するリズムや変わった電子音が増えていった。
その変化はJustin Timberlakeのソロ作品にもつながっていく。
NSYNCが後のポップに残した影響
NSYNCはBackstreet Boysとともに、1990年代末から2000年代初頭のボーイバンド・ブームを世界規模に広げた存在である。
5人それぞれに異なる個性を持たせ、歌、ダンス、ミュージックビデオ、ファッションまで含めてグループの魅力を作る方法は、その後の多くのポップグループにも受け継がれた。
ただしNSYNCの影響を考えるとき、人気だけを見ると重要な部分を見落とす。Celebrityで見せたように、彼らは活動後半になるほどR&Bやヒップホップとポップの境界を薄くしていった。
この流れをさらに進めたのがJustin Timberlakeのソロ活動だった。2002年のJustified以降、彼はR&B、ファンク、ヒップホップを中心とした音へ進み、ボーイバンド出身者がより広い音楽性を持つソロアーティストへ移行する代表的な成功例となった。
また、2000年代後半以降に再びボーイバンドが人気を集めると、NSYNCの名前も頻繁に参照されるようになった。大人数のハーモニーと統一されたダンスをポップ・エンターテインメントとして成立させた方法は、後の時代にもつながっている。
まとめ
NSYNCは、1990年代末から2000年代初頭のポップ黄金期を代表する5人組である。5人の厚いハーモニー、激しいダンス、覚えやすいサビを組み合わせ、「Bye Bye Bye」や「It’s Gonna Be Me」といった時代を代表するヒット曲を生み出した。
一方で、キャリアを通して同じ音を繰り返したグループではない。初期のダンス・ポップから、No Strings AttachedではR&B色を強め、Celebrityではヒップホップや電子音まで取り込んだ。活動期間は比較的短かったものの、ボーイバンドを巨大なポップ文化へ押し上げると同時に、2000年代のR&Bとポップが接近していく流れにもつながった。その両面を持つことが、NSYNCが現在も1990年代末のポップを語るうえで欠かせない存在である理由だ。


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