アルバムレビュー：Halo in a Haystack by Converge

アルバムレビュー

2025.05.12

発売日: 1994年
ジャンル: ハードコア、メタルコア、ポストハードコア

概要
全曲レビュー
総評
おすすめアルバム（5枚）
ファンや評論家の反応
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概要

『Halo in a Haystack』は、マサチューセッツ州出身のハードコアバンド、Convergeが1994年に発表した記念すべき1stアルバムである。
本作は、のちにメタルコア／カオティック・ハードコアの代名詞となる彼らの最初期の衝動と原点を封じ込めた記録であり、手作業によるDIYリリースで500枚限定プレスという、まさにカルト的存在感を放つ作品である。

当時まだ10代だったメンバーたちによる粗削りな演奏と録音、そして**“暴力的誠実さ”とも言うべきエネルギーが本作には満ちている。
のちに傑作『Jane Doe』（2001）や『You Fail Me』（2004）へと至るConvergeサウンドの萌芽が、ここではハードコア直系のラフさと激情**として展開されている。

ジャケット写真はボーカルのジェイコブ・バノン自身が撮影・デザインし、アートワークと音楽を統合した表現はすでにこの頃から始まっていた。
「干し草の山の中の光輪」というタイトルが示すように、混沌とした世界の中で微かに輝く感情の断片を掘り出すような、そんな作品である。

全曲レビュー

1. Shallow Breathing

不安定なギターと怒号のようなヴォーカルで始まる、極めてプリミティブなオープニング。
“生きること＝苦しみ”という図式が、演奏そのものに刻み込まれている。

2. Fast

タイトル通り、1分半にも満たないハイスピードなスラッシュ・ハードコア。
初期Napalm Death的なミニマルで凶暴な衝動がそのまま突き刺さる。

3. Down

ノイズにまみれたギターと呻くようなボーカルが、“引きずり落とされる感覚”を音像化したような一曲。
すでにこの頃から、Convergeはただの怒りではなく精神のゆらぎや絶望を鳴らしていた。

4. Exhale

前曲からの流れを引き継ぎつつも、ややメタリックな展開とリフが強調される。
疾走のなかに突然のブレイクが挟まれる構成には、のちの“カオティック・ハードコア”の萌芽がある。

5. Undo

中盤のハイライト。
反復されるフレーズとシャウトが渦を巻くように展開され、聴き手の精神を削りながら巻き込んでいく。
「Undo」という語が、記憶や罪をなかったことにしたい欲望として機能している。

6. Antithesis

本作でもっとも長尺（3分超）の楽曲で、ポストハードコア的な静と動の対比が初めて顕著に表れている。
バンドが**“構築された破壊”の道へ向かう最初の分岐点**として重要な曲。

7. Blind

反復とノイズによる空間支配。
リフとドラムが意図的に外れることで、“視えないものを感じ取る”という逆説的な体験を音で実現している。

8. Buried But Breathing

タイトル通り、“埋められているが呼吸している”という死と生の境界線上にある一曲。
この楽曲はのちに再録され、Convergeの代表的レパートリーとして定着していく。

9. Halo in a Haystack

アルバムのタイトル曲にして、最も重たく、感情の起伏が大きいラストナンバー。
“混沌の中にある一筋の光”というテーマを、音圧と断片的なメロディで象徴している。
若さゆえの未熟さではなく、むしろ若さだからこそ届く激情が詰まっている。

総評

『Halo in a Haystack』は、Convergeというバンドの胎動を記録した荒削りな原点であり、のちのハードコア／メタルコア・シーンに決定的な影響を与える**“衝動の純粋培養”**である。

確かに録音はラフで、演奏も不安定だが、そのすべてが感情の正直さと表現の切実さに裏打ちされている。
すでにこの時点でConvergeは、ただ叫ぶのではなく、“自分とは何か”“怒りの根源はどこにあるのか”を問う哲学性を獲得しようとしていた。

このアルバムは、完全に自主制作された限定盤としての希少性もさることながら、90年代以降のハードコアの美学と倫理を先取りしていたという点で、今なお再評価されるべき作品である。
「光輪（Halo）」は見えにくい場所に埋まっているかもしれない。
だが、その光は確かに存在し、音となって私たちの胸を貫いてくるのだ。