
- イントロダクション:踊ることを、ロックの反抗として鳴らすバンド
- バンドの背景と歴史:サクラメントからニューヨークへ、そして世界のフロアへ
- 音楽スタイル:ダンスパンク、ディスコ、ファンク、ポストパンクの混線
- 代表曲の解説:!!!の楽曲世界
- アルバムごとの進化
- Louden Up Now:ダンスパンクの爆発
- Myth Takes:タイトになったグルーヴとポップ性
- Strange Weather, Isn’t It?:洗練と陰影
- Thr!!!er:ユーモアとキャッチーさの強化
- As If:クラブミュージックへのさらなる接近
- Shake the Shudder:多声的なダンスバンドへ
- Wallop:ブルックリンの部屋から鳴る現代的グルーヴ
- Certified Heavy Kats:EP形式での実験
- Let It Be Blue:青さを受け入れて踊る近年作
- ライブバンドとしての!!!:汗、腰、マイク、そして観客との共犯関係
- 歌詞世界:政治、都市、欲望、ナンセンス
- 影響を受けた音楽:ポストパンクとクラブカルチャーの再発明
- 影響を与えたアーティストと音楽シーン
- 他アーティストとの比較:LCD Soundsystem、The Rapture、Gang of Fourとの違い
- 社会的・文化的意味:踊ることは、軽薄ではない
- まとめ:!!!は、ダンスパンクのエネルギーを生き続けるバンドである
- 関連レビュー
イントロダクション:踊ることを、ロックの反抗として鳴らすバンド
!!!(Chk Chk Chk/チック・チック・チック)は、ダンスパンクという言葉を語るうえで欠かせないバンドである。バンド名は「!!!」と表記され、読み方は任意の3つのクリック音に由来するとされるが、一般的には「チック・チック・チック」と呼ばれる。彼らの音楽は、ポストパンクの鋭さ、ファンクの粘るベース、ディスコの高揚、ハウスの反復、ダブの空間、インディーロックの荒さを一つの汗ばむグルーヴへまとめ上げる。
!!!の魅力は、何よりも身体性にある。頭で分析する前に、足が動く。だが、単なるクラブミュージックではない。ギターはざらつき、ベースはうねり、ドラムは生々しく、Nic Offerのボーカルは叫ぶというより、群衆の中で煽るように跳ねる。彼らの音楽は、ロックバンドがクラブへ乱入し、DJセットのような反復を生演奏でねじ伏せるような感覚を持っている。
2000年代初頭、The Rapture、LCD Soundsystem、Radio 4、Out Hud、Liarsなどと並び、ニューヨーク周辺のダンスパンク/ディスコパンク・シーンが注目を集めた。!!!はその中でも、特にライブバンドとしての熱量が強い存在だった。Me and Giuliani Down by the School Yard (A True Story)、Pardon My Freedom、Hello? Is This Thing On?、Heart of Hearts、Must Be the Moon、AM/FM、Slyd、One Girl / One Boy、Freedom! ’15、The One 2、Serbia Drums、A Little Bit (More) などを聴けば、彼らがいかにロックとダンスの境界を壊してきたかが分かる。
公式サイトに掲載されたディスコグラフィでは、Louden Up Now、Myth Takes、Strange Weather, Isn’t It?、Thr!!!er、As If、Shake the Shudder、Wallop、Let It Be Blue などの主要アルバムが確認できる。近年作 Let It Be Blue は2022年に発表されたアルバムで、公式サイト上でも最新スタジオ・アルバムとして掲載されている。!!!
!!!は、時代の流行としてのダンスパンクを超えたバンドである。彼らは20年以上にわたり、踊ることをロックの反抗として鳴らしてきた。踊ることは軽薄ではない。踊ることは、身体を取り戻すことだ。退屈な日常、政治的な閉塞、都市生活の摩擦、クラブの熱気、仲間との汗、深夜の高揚。!!!の音楽は、それらをまとめてフロアへ投げ込む。
バンドの背景と歴史:サクラメントからニューヨークへ、そして世界のフロアへ
!!!は1990年代半ば、カリフォルニア州サクラメント周辺のアンダーグラウンド・シーンから生まれた。バンドの中心にはNic Offerがおり、メンバーは複数のバンドやプロジェクトをまたぎながら活動していた。Out Hudとの人的なつながりも重要で、初期!!!はポストパンク、ファンク、ダブ、ジャムバンド的な反復を共有する緩やかな共同体の中から出てきた。
1990年代末から2000年代初頭にかけて、ロックとダンスミュージックの関係は再び大きく接近していた。1970年代末から80年代初頭のポストパンク、No Wave、ディスコ、ファンク、ダブの再評価が進み、若いバンドたちはギターで踊る方法を探していた。!!!はその流れの中で、非常に生々しいバンド・グルーヴを鳴らした。
初期のセルフタイトル作!!! では、まだ荒々しいポストパンク・ファンクの衝動が強い。2004年の Louden Up Now で、彼らはダンスパンクの代表格として広く知られるようになる。特に長尺シングル Me and Giuliani Down by the School Yard (A True Story) は、バンドの名前をインディー・ダンス界隈へ一気に広げた。政治的なタイトル、執拗なリズム、長く続くグルーヴ、汗っぽいボーカル。そのすべてが、!!!というバンドの方向性を決定づけた。
2007年の Myth Takes では、よりタイトでロック色の強いダンスパンクへ進化し、Heart of Hearts や Must Be the Moon などの代表曲が生まれる。2010年の Strange Weather, Isn’t It? ではやや洗練されたポップ感覚を、2013年の Thr!!!er ではユーモアとキャッチーさを、2015年の As If ではハウスやクラブミュージックへの接近を強めた。
2017年の Shake the Shudder、2019年の Wallop では、Meah Paceら複数のボーカルを取り入れながら、バンドはよりカラフルでクラブ寄りのサウンドを展開する。Pitchforkは Wallop について、2019年8月30日にWarpからリリースされ、Angus Andrew、Maria Uzor、Cameron Mesirow、Meah Paceらが参加した作品として報じている。
2022年の Let It Be Blue では、バンドはさらにミニマルで多様な方向へ進んだ。Skream!は同作を9作目のアルバムとして紹介し、長年のコラボレーターPatrick Fordがプロデュースを務め、レゲトン、アシッドハウス、Suicide、Kompakt Records的要素などが散りばめられた作品だと伝えている。Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト
音楽スタイル:ダンスパンク、ディスコ、ファンク、ポストパンクの混線
!!!の音楽は、ダンスパンクやディスコパンクと呼ばれることが多い。しかし、その中身はかなり雑食的である。ベースはファンクから来ている。ドラムはポストパンク的な硬さとハウス的な反復を持つ。ギターはカッティングでリズムを作り、シンセやパーカッションが空間を広げる。そこにNic Offerの半分歌、半分MCのようなボーカルが乗る。
彼らの楽曲は、しばしば長い。ロックのAメロ、サビ、ブリッジという形よりも、クラブトラックのように少しずつ要素が重なり、グルーヴが変化していく構造を持つ。Me and Giuliani Down by the School Yard はその典型で、曲というよりも、バンドが一つのリズムを執拗に掘り続けるような体験である。
一方で、!!!は完全にクラブミュージックへ溶け込むわけではない。常にバンドの荒さが残っている。音が少しはみ出す。ボーカルが騒がしい。ベースがうねりすぎる。ドラムが人間臭い。その“整いすぎなさ”が、彼らの魅力だ。
彼らの音楽には、Talking Heads、Liquid Liquid、ESG、A Certain Ratio、Gang of Four、Public Image Ltd、The Pop Group、James Brown、Parliament-Funkadelic、New Order、Primal Scream、Happy Mondays、LCD Soundsystemなどの影響を感じることができる。ただし、!!!はそれらを知的に整理するというより、汗と勢いで混ぜる。知性はあるが、最終的には身体が勝つ。そこが彼ららしい。
代表曲の解説:!!!の楽曲世界
Me and Giuliani Down by the School Yard (A True Story)
Me and Giuliani Down by the School Yard (A True Story) は、!!!の代表曲であり、2000年代ダンスパンクを象徴する楽曲である。タイトルには、ニューヨーク市長Rudy Giulianiへの言及と、Paul Simonの Me and Julio Down by the Schoolyard を思わせる言葉遊びがある。
この曲は、政治的な皮肉とダンスフロアの熱気が結びついている。長尺で、ベースとドラムが執拗に反復し、ギターとボーカルがその上で跳ねる。曲は一気に爆発するのではなく、じわじわと体温を上げていく。
!!!の本質は、この曲に凝縮されている。ロックであり、ファンクであり、クラブトラックであり、政治的冗談でもある。真面目すぎず、軽すぎない。踊りながら都市を笑い飛ばすような曲である。
Pardon My Freedom
Pardon My Freedom は、Louden Up Now に収録された攻撃的な楽曲である。タイトルからして皮肉が効いている。「俺の自由を許してくれ」。自由を主張することすら謝らなければならない社会への嫌味のように聞こえる。
音は荒々しく、バンドのパンク性が前に出ている。ダンスパンクとはいえ、!!!は常にきれいなクラブサウンドではない。汗、怒り、騒音がある。Pardon My Freedom は、彼らのロックバンドとしての危うさを示す曲である。
Hello? Is This Thing On?
Hello? Is This Thing On? は、ライブバンドとしての!!!の魅力がよく出た曲である。タイトルはマイクチェックのようであり、観客へ呼びかける言葉でもある。
この曲では、グルーヴが前へ前へ進む。Nic Offerのボーカルは、歌というよりフロアへの呼びかけだ。曲の中で、バンドと観客の距離が縮まっていく。!!!のライブが強い理由は、こうした曲にある。彼らは観客を眺める対象としてではなく、同じ汗の中へ引きずり込む。
Heart of Hearts
Heart of Hearts は、2007年の Myth Takes を代表する楽曲である。初期の荒さを残しながらも、よりタイトでメロディアスになった時期の曲だ。
この曲では、ダンスパンクの鋭いギターと、クラブミュージック的な反復がうまく噛み合っている。タイトルは「心の奥底」を意味するが、!!!の場合、その心は静かな内省ではなく、リズムの中にある。感情は胸の奥で考えるものではなく、身体を動かすことで現れる。
Must Be the Moon
Must Be the Moon は、Myth Takes の中でも特にキャッチーな楽曲である。ディスコ的な高揚感と、少し怪しい夜の空気がある。
タイトルの「月のせいに違いない」という感覚は、ダンスミュージックによく似合う。夜、酒、欲望、奇妙なテンション。自分がなぜこんなに浮かれているのか分からない。たぶん月のせいだ。そんな軽さがある。
!!!の楽曲には、深刻な時代感覚と同時に、こうした馬鹿馬鹿しい快楽がある。そのバランスが魅力である。
All My Heroes Are Weirdos
All My Heroes Are Weirdos は、タイトルだけで!!!の美学を表している。自分のヒーローはみんな変人だ。これは、ダンスパンクやポストパンクの精神そのものでもある。
!!!は、メインストリームの整ったスター像よりも、奇妙な人々、外れ者、汗まみれのパフォーマー、変なグルーヴを作る人々に惹かれてきたバンドである。この曲には、その自覚がある。
AM/FM
AM/FM は、2010年の Strange Weather, Isn’t It? を代表する曲である。ラジオの周波数を思わせるタイトル通り、通信、電波、都市のノイズ、ポップの受信感覚がある。
この時期の!!!は、初期ほど荒々しくなく、より洗練されたプロダクションへ向かっている。AM/FM には、ダンスパンクの熱だけでなく、ニューウェイヴ的な冷たさもある。
Jamie, My Intentions Are Bass
Jamie, My Intentions Are Bass は、タイトルのくだらなさがまず最高である。「俺の意図はベースだ」。これは冗談でありながら、!!!の核心でもある。彼らの音楽では、ベースが意図であり、動機であり、目的である。
この曲では、低音のグルーヴが曲全体を支配する。歌詞よりも、リズムとベースラインが身体に直接話しかける。!!!は、ベースを単なる伴奏ではなく、思想として扱うバンドである。
Slyd
Slyd は、2013年の Thr!!!er を代表する楽曲である。タイトルはSly Stoneへのオマージュも感じさせる。ファンク、ハウス、インディーダンスが混ざり、非常に滑らかなグルーヴを持つ。
Thr!!!er 期の!!!は、初期の混沌から一歩進み、よりキャッチーで整理されたダンスミュージックへ向かった。Slyd は、その洗練を象徴する曲である。踊れるが、どこかひねくれている。そこが!!!らしい。
One Girl / One Boy
One Girl / One Boy は、Thr!!!er の中でも特にポップな楽曲である。女性ボーカルとの掛け合いも含め、バンドがより開かれたポップ感覚を獲得したことを示している。
この曲には、クラブの明るさと、インディーポップの親しみやすさがある。!!!は長尺ジャムのバンドでありながら、こうしたコンパクトなポップソングも作れる。そこにキャリア中期以降の強みがある。
Freedom! ’15
Freedom! ’15 は、2015年の As If を象徴する楽曲である。タイトルに「自由」が入っているが、!!!の自由は抽象的な理想ではない。ダンスフロアで身体を動かすこと、性別やジャンルやロックの形式から少し解放されること。そのような実践的な自由だ。
この曲では、ハウス的な反復とポップなボーカルが前に出る。初期よりもクラブミュージックへ接近しているが、バンドの生々しさは残る。
The One 2
The One 2 は、2017年の Shake the Shudder を代表する曲のひとつである。複数のボーカル、明るいプロダクション、鋭いリズムが特徴で、!!!がよりカラフルなダンスバンドへ進化したことを示す。
この時期の!!!は、Nic Offerだけに依存しないボーカルの多様性を強めた。Meah Paceらの参加によって、バンドの音はよりソウルフルで広がりのあるものになった。
Serbia Drums
Serbia Drums は、2019年の Wallop からの楽曲である。Pitchforkは、Wallop 発表時にこの曲が公開され、アルバムがNic Offerのブルックリンのアパートで録音されたこと、複数のゲストボーカルが参加していることを報じている。
この曲には、!!!らしいリズムへの偏愛がある。タイトルに“Drums”が入る通り、打楽器的な推進力が中心にある。グルーヴは軽快だが、音の重心はしっかりしている。
UR Paranoid
UR Paranoid は、Wallop 期の!!!が現代的な不安をダンスミュージックへ変換した曲である。タイトルは「あなたは被害妄想的だ」とも読めるし、ネット時代の省略語のようにも見える。
この曲では、パラノイアが踊れる形になる。現代社会の不安、監視、自己意識の過剰さを、そのまま暗く沈ませるのではなく、フロアで燃やす。!!!の音楽は、しばしば不安をグルーヴへ変える。
Do the Dial Tone
Do the Dial Tone は、2020年のEP Certified Heavy Kats に収録された楽曲である。Pitchforkは、同EPが2019年の Wallop に続く作品として2020年7月31日にWarpからリリースされ、Do the Dial Tone が先行曲として公開されたと報じている。
タイトルは電話の発信音を思わせる。ダンスミュージックにとって、反復する機械音や通信音は重要な素材である。!!!はここでも、奇妙な日常音をグルーヴへ変換している。
A Little Bit (More)
A Little Bit (More) は、2022年の Let It Be Blue に収録された楽曲である。Bandcamp掲載のトラックリストでも、同作の2曲目として確認できる。!!!
この曲は、ミニマルでありながらしっかり踊れる。初期!!!のように音を詰め込むのではなく、余白を活かしてグルーヴを作る方向へ進んでいる。Skream!の記事でも、Let It Be Blue は初期の音数の多さとは異なり、より洗練されたミニマルなプロダクションに挑戦した作品として紹介されている。Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト
Storm Around the World
Storm Around the World は、Maria Uzorをフィーチャーした Let It Be Blue 収録曲である。Skream!は、同曲がアルバム発表と同時に公開された新曲であると報じている。Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト
この曲には、!!!の近年の開かれたコラボレーション感覚がよく出ている。バンドは自分たちのグルーヴを保ちながら、外部の声やクラブミュージックの要素を取り込む。固定メンバーのロックバンドというより、踊るための集合体としての柔軟さがある。
アルバムごとの進化
##!!!:荒削りなポストパンク・ファンクの出発点
2001年のセルフタイトル作!!! は、バンドの原点である。まだ後のような洗練は少ないが、ポストパンク、ファンク、ダブ、ジャム的な反復が混ざる初期衝動が記録されている。
この時点で、!!!はすでに普通のロックバンドではなかった。ギターリフで曲を作るというより、リズムとベースを中心に、演奏が少しずつ変化していく。後の長尺ダンスパンクの基礎はここにある。
Louden Up Now:ダンスパンクの爆発
2004年の Louden Up Now は、!!!をダンスパンクの代表格へ押し上げた作品である。Me and Giuliani Down by the School Yard、Pardon My Freedom、Hello? Is This Thing On? などを収録し、荒々しいライブ感とクラブ的な反復が見事に融合している。
このアルバムの魅力は、音が整いすぎていないところにある。グルーヴは強いが、常に少し暴れている。Nic Offerの声も、洗練された歌唱というより、フロアの中で汗だくになって叫ぶように響く。
Louden Up Now は、2000年代のインディーロックが再び踊り始めた瞬間を象徴するアルバムである。
Myth Takes:タイトになったグルーヴとポップ性
2007年の Myth Takes は、!!!の音楽がよりタイトに進化した作品である。Heart of Hearts、Must Be the Moon、All My Heroes Are Weirdos など、代表曲が多い。
このアルバムでは、初期の混沌が少し整理され、曲ごとのフックが強くなった。ダンスパンクの熱量は保ちながら、よりアルバムとして聴きやすくなっている。!!!が単なる一過性のシーンのバンドではなく、継続してグルーヴを更新できることを示した。
Strange Weather, Isn’t It?:洗練と陰影
2010年の Strange Weather, Isn’t It? は、よりクールで洗練された作品である。AM/FM、Jamie, My Intentions Are Bass などを収録し、初期よりも音数を整理しながら、ニューウェイヴ的な質感を強めている。
タイトルは「変な天気だね」という会話のようだが、どこか時代の不穏さも感じさせる。ダンスミュージックでありながら、少し曇った空気がある。!!!はここで、熱狂だけではない陰影を獲得した。
Thr!!!er:ユーモアとキャッチーさの強化
2013年の Thr!!!er は、タイトルからしてMichael Jacksonの Thriller を茶化すようなユーモアを持つ作品である。Slyd、One Girl / One Boy など、キャッチーでポップな曲が目立つ。
このアルバムでは、!!!のダンスバンドとしての技術がかなり洗練されている。グルーヴは軽快で、曲はコンパクトになり、ボーカルのフックも強い。初期の乱暴さを好むリスナーには物足りない部分もあるかもしれないが、バンドのポップセンスが開いた作品である。
As If:クラブミュージックへのさらなる接近
2015年の As If は、ハウスやクラブミュージックの要素をさらに強めた作品である。Freedom! ’15 などでは、ダンスフロアの即効性が前面に出る。
この時期の!!!は、ロックバンドという枠からさらに自由になっている。ギター中心のダンスパンクではなく、よりクラブ的なビートとプロダクションを使いながら、バンドの身体性を残す。そのバランスを探る作品である。
Shake the Shudder:多声的なダンスバンドへ
2017年の Shake the Shudder は、複数のボーカルを活かしたカラフルな作品である。The One 2 などでは、Meah Paceらの声がバンドに新しい色を加えている。
このアルバムでは、!!!はNic Offerのフロントマン性だけに頼らず、より集合体として機能する。ディスコ、ハウス、ポップ、ファンクが自然に混ざり、ライブでも映える曲が多い。バンドが長く続くために必要な柔軟さを示した作品だ。
Wallop:ブルックリンの部屋から鳴る現代的グルーヴ
2019年の Wallop は、!!!の後期代表作のひとつである。Pitchforkは、同作がWarpからリリースされ、Nic Offerのブルックリンのアパートで録音され、Angus Andrew、Maria Uzor、Cameron Mesirow、Meah Paceらが参加したと報じている。
Serbia Drums、UR Paranoid、Let It Change U などでは、ダンスパンクというより、より広い意味でのインディー・ダンス集団としての!!!が聞こえる。音は現代的で、ゲストボーカルも多く、クラブとバンドの境界がさらに曖昧になっている。
Certified Heavy Kats:EP形式での実験
2020年の Certified Heavy Kats はEP作品である。Pitchforkは、同EPについて、バンドが「自分たちの外縁を探る」ような作品だとNic Offerのコメントを紹介している。
EPという形式だからこそ、バンドはより自由に遊んでいる。Do the Dial Tone などには、電話音、ビート、反復、ユーモアが混ざる。!!!はフルアルバムだけでなく、こうした短い作品でも自分たちのグルーヴを更新している。
Let It Be Blue:青さを受け入れて踊る近年作
2022年の Let It Be Blue は、!!!の9作目のアルバムとして紹介された作品である。Skream!は、同作がPatrick Fordのプロデュースによるアルバムで、サブベースやドラムビートを中心に、レゲトン、アシッドハウス、Suicide、Kompakt Records的要素などが散りばめられていると伝えている。Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト
Bandcampの掲載情報では、Normal People、A Little Bit (More)、Storm Around the World、Un Puente、Panama Canal、Let It Be Blue などのトラックが確認できる。!!!
このアルバムでは、!!!は初期のように全員で音を詰め込むのではなく、余白を活かす方向へ進んでいる。Mikikiは同作について、キャリア25年を突破したディスコパンク・バンドが、ブルーを受容して踊り続ける作品として紹介している。
Let It Be Blue は、年齢を重ねたダンスバンドの作品である。若い頃のようにただ騒ぐだけではない。憂鬱も、疲れも、時代の重さもある。しかし、それでも踊る。むしろ、青さを抱えたまま踊る。その姿勢が美しい。
ライブバンドとしての!!!:汗、腰、マイク、そして観客との共犯関係
!!!を語るうえで、ライブの重要性は非常に大きい。彼らの音楽は録音でももちろん楽しめるが、本質はライブにある。Nic Offerは、ステージ上で落ち着いて歌うタイプではない。踊り、腰を振り、観客を煽り、バンドのグルーヴに身体を投げ込む。
!!!のライブでは、曲が録音通りに整然と再現されるというより、伸び、揺れ、熱を帯びる。ベースとドラムがフロアを支え、ギターやシンセがその上で跳ねる。観客は聴くというより、参加する。ここに彼らの強さがある。
ダンスミュージックはしばしばDJ中心に語られるが、!!!はバンド演奏でダンスフロアを作る。その生々しさは、クラブミュージックの正確さとは違う快感を持つ。少しズレる。少し荒れる。だからこそ、人間の身体がそこにあると感じる。
歌詞世界:政治、都市、欲望、ナンセンス
!!!の歌詞は、しばしば聴き取りづらく、意味も断片的である。だが、それが弱点ではない。彼らの歌詞は、明確な物語よりも、フロアで飛び交う言葉、政治的な冗談、都市のざわめき、欲望の断片として機能する。
初期には、Me and Giuliani Down by the School Yard のように政治的な皮肉が前面に出る曲もある。だが、彼らは正面からのプロテストバンドではない。むしろ、政治的な閉塞を笑い、欲望を混ぜ、踊りながら抵抗するタイプのバンドである。
また、彼らの曲名にはユーモアがある。Jamie, My Intentions Are Bass、All My Heroes Are Weirdos、Do the Dial Tone など、真面目なのかふざけているのか分からない。その曖昧さが、!!!の魅力である。ダンスフロアでは、意味は完全でなくてもいい。重要なのは、言葉が身体を動かすかどうかだ。
影響を受けた音楽:ポストパンクとクラブカルチャーの再発明
!!!の背景には、1970年代末から80年代初頭のポストパンクがある。Talking Heads、ESG、Liquid Liquid、A Certain Ratio、Gang of Four、The Pop Group、Public Image Ltdといったバンドは、ロックとファンク、ダブ、ディスコを結びつけた。その精神を、!!!は2000年代に再発明した。
また、ハウス、テクノ、ディスコ、レゲトン、アシッドハウス、Kompakt系のミニマルなクラブミュージックも重要である。近年作 Let It Be Blue では、Skream!が伝えるように、レゲトンやアシッドハウス、Kompakt Records作品などの要素も示唆されている。Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト
!!!は、ロック側からクラブへ行くバンドであり、クラブ側からロックへ戻るバンドでもある。その往復運動が、彼らの長寿を支えている。
影響を与えたアーティストと音楽シーン
!!!は、2000年代のダンスパンク/ディスコパンク・ムーブメントに大きな影響を与えた。LCD Soundsystem、The Rapture、Radio 4、Out Hud、Liars、Hot Chip、Foals初期、Friendly Fires、The Juan MacLean、Cut Copy、Klaxonsなど、ロックとダンスの境界を越えるアーティストたちと同じ時代感覚を共有している。
特に、ロックバンドがクラブ的な反復を取り入れる方法において、!!!の存在は重要だった。彼らは、ギターを捨てずに踊る方法を示した。バンド演奏でありながら、DJセットのように持続するグルーヴを作る。その手法は、多くのインディーダンス系バンドへ影響を与えた。
他アーティストとの比較:LCD Soundsystem、The Rapture、Gang of Fourとの違い
!!!は、LCD SoundsystemやThe Raptureと並べて語られることが多い。LCD Soundsystemが知的で自己批評的なニューヨーク・ダンスロックだとすれば、!!!はもっと汗っぽく、もっと肉体的で、もっとバカ騒ぎに近い。James MurphyがDJ的な知性で曲を組み立てるのに対し、!!!はバンドの身体でグルーヴを押し出す。
The Raptureと比べると、The Raptureはよりポストパンクの鋭さとゴスペル的な高揚を持つ。!!!はよりファンクで、よりジャム的で、より雑食的だ。Gang of Fourと比べると、Gang of Fourが政治とファンクを硬質に切断したのに対し、!!!はもっと快楽的に混ぜる。
!!!のユニークさは、知性と馬鹿馬鹿しさのバランスにある。彼らは音楽史をよく理解している。しかし、最終的には理屈よりも腰である。そこが最高なのだ。
社会的・文化的意味:踊ることは、軽薄ではない
!!!の音楽が今も重要なのは、踊ることを軽薄な行為として扱わないからである。踊ることは、身体を取り戻すことだ。都市生活や社会の不安、情報過多、政治的な閉塞の中で、身体はしばしば置き去りにされる。!!!は、その身体をフロアへ引き戻す。
彼らの音楽は、深刻な時代に対して深刻な顔だけで向き合わない。笑う。ふざける。踊る。汗をかく。誰かと同じリズムに乗る。その行為自体が、小さな解放になる。
Let It Be Blue というタイトルが示すように、憂鬱を消すのではなく、憂鬱を抱えたまま踊ることもできる。そこに、長く続くバンドとしての!!!の成熟がある。
まとめ:!!!は、ダンスパンクのエネルギーを生き続けるバンドである
!!!(Chk Chk Chk)は、ダンスパンクのエネルギーを体現するバンドである。サクラメント周辺のアンダーグラウンドから始まり、ポストパンク、ファンク、ディスコ、ハウス、ダブ、インディーロックを混ぜ合わせ、2000年代のロックシーンに“踊るバンド”の可能性を示した。
2004年の Louden Up Now では、Me and Giuliani Down by the School Yard、Pardon My Freedom、Hello? Is This Thing On? によって、荒々しいダンスパンクの熱を爆発させた。2007年の Myth Takes では Heart of Hearts、Must Be the Moon でよりタイトなグルーヴを獲得し、2013年の Thr!!!er では Slyd、One Girl / One Boy によってポップな開放感を見せた。
2017年の Shake the Shudder、2019年の Wallop では、複数のボーカルや現代的なクラブサウンドを取り込み、バンドはさらに多声的になった。Wallop はWarpからリリースされ、Nic Offerのブルックリンのアパートで録音され、Maria Uzor、Meah Paceらのボーカル参加も含む作品として報じられている。Pitchfork 2022年の Let It Be Blue では、A Little Bit (More)、Storm Around the World、Let It Be Blue などを通じて、ミニマルで余白のある近年のグルーヴへ進化した。Skream!
!!!の音楽は、ロックであり、クラブミュージックであり、ファンクであり、冗談であり、身体の解放である。彼らは難しいことを難しい顔で語らない。ベースを鳴らし、ドラムを叩き、腰を振り、フロアを揺らす。その中に、都市の不安も、政治的な皮肉も、人生の憂鬱も、全部まとめて放り込む。
!!!は、ダンスパンクが一時代の流行ではなく、今も有効な身体の思想であることを証明し続けているバンドである。

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