Morning Blue by Giant Rooks（2020）楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Morning Blue」は、Giant Rooks（ジャイアント・ルークス）が2020年にリリースしたデビュー・アルバム『Rookery』に収録された楽曲であり、新たな始まりと、その朝に差し込む一抹の憂鬱を繊細に描いた作品である。

タイトルの「Morning Blue（朝の青）」は、単に空の色を指しているのではない。
それは夜が明けた直後の、まだ冷たさを残す澄んだ空気の色であり、同時に心に残るわずかな不安や孤独感も象徴している。
この曲では、夜の間に膨らんだ思考や夢が、朝の光の中で冷静に再構成されていく、その繊細な瞬間が捉えられている。

歌詞は明確なストーリーではなく、情景と感情の断片を積み重ねる形で構成されており、聴き手に自らの「朝」を重ね合わせるような普遍性を持っている。
サウンドは、軽やかなギターとリズミカルなドラムが特徴で、そこにFrederik Rabeの柔らかでしなやかなヴォーカルが重なり、爽やかさと憂いを絶妙に共存させている。

2. 歌詞のバックグラウンド

Giant Rooksは、『Rookery』制作時、ツアー生活から一時的に離れ、落ち着いた環境で自分たちと向き合う時間を持っていた。
「Morning Blue」は、そうした生活の中で生まれた、「リセット」と「再出発」にまつわる感情を捉えた楽曲である。

バンドはインタビューで、「Morning Blueは、過去の小さな痛みや後悔を受け入れたうえで、新しい一日を迎える気持ちを描いた」と語っている。
悲しみも不安も消えたわけではない。
それでも朝は来て、新たな光の中で、また歩き出すしかない──
そんな感情が、この曲には静かに、しかし確かに流れている。

サウンド面では、ギターとドラムの軽やかな掛け合いが印象的で、爽やかさの中にもどこか切ない余韻を残すアレンジとなっている。
まるで朝の冷たい空気をそのまま音にしたかのような透明感が、楽曲全体を包んでいる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Morning Blue」の印象的なフレーズを抜粋し、和訳とともに紹介する。

“Morning blue, carry me away”
朝の青よ、僕をどこかへ連れて行って

“Another dream I had to leave behind”
またひとつ、置き去りにしてきた夢

“Woke up feeling older”
目覚めたら、少しだけ年を取った気がした

“Still chasing after something undefined”
いまだに、形にならない何かを追いかけている

これらのフレーズは、成長する過程での失われたもの、そしてそれでもなお続く希望と葛藤を、驚くほど繊細に映し出している。

※歌詞引用元：Genius Lyrics

4. 歌詞の考察

「Morning Blue」の歌詞は、夜が明けたときに訪れる「静かな自己対話」を見事に描き出している。

“Morning blue, carry me away”というラインには、ただ新しい一日を迎えるだけでなく、そこに身を委ねて、過去の痛みや迷いを超えていきたいという切実な願いが込められている。
それは「逃避」ではない。
むしろ、変わり続ける現実を受け止めながら、それでも自分を信じて進もうとする意志なのだ。

また、”Another dream I had to leave behind”という一節は、成長の過程でどうしても置き去りにせざるを得なかった理想や夢を、苦い感情とともに認める姿を描いている。
それは後悔ではない。
むしろ、手放すことによって前に進もうとする、静かな決意なのである。

「Morning Blue」は、希望と哀しみの間で揺れ動く心を、過剰なドラマ性に頼らず、自然体で、しかし確かな筆致で描き切った楽曲と言えるだろう。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

• Youth by Daughter
  　若さと失われた時間への郷愁を、繊細なサウンドで描いたバラード。
• Holocene by Bon Iver
  　小さな存在である自分を認めながらも、生きることを静かに祝福する楽曲。
• The Less I Know the Better by Tame Impala
  　恋愛のほろ苦さと自己矛盾を、ドリーミーなサウンドに乗せた名曲。
• Motion Sickness by Phoebe Bridgers
  　心のもつれと再生を、冷静かつ鋭く描き出したオルタナティブバラード。
• Sofia by Clairo
  　自分らしさを模索する過程を、軽やかなビートに乗せたインディーポップ。

これらの楽曲も、「Morning Blue」と同様に、希望と哀しみ、成長と葛藤を静かに、しかし力強く描き出している。

6. “新しい朝に、そっと希望を乗せて”──Giant Rooksが描く、静かなリスタート

「Morning Blue」は、
失ったものや置き去りにした夢を抱えながら、
それでもなお、新しい一日へと歩み出す人間の姿を描いた楽曲である。

朝の青は、冷たく、澄んでいて、少し寂しい。
けれど、その青の中には、まだ見ぬ未来へのかすかな希望も宿っている。

Giant Rooksは、そんな繊細な感情の揺らぎを、
声高に叫ぶことなく、
ただそっと、しかし確かな温度で描き出してみせた。

聴き終えたあと、私たちはきっと、
「まだうまくいかない自分」も、「まだ探し続ける自分」も、
少しだけ愛おしく思えるようになるだろう。

そしてまた、新しい朝の光の中へ、
静かに、でも力強く、一歩踏み出せるはずだ。

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