発売日: 2019年4月19日
ジャンル: インディーポップ、オルタナティブロック
概要
『Wild Stare』は、ドイツ・ハム出身のインディーバンド、Giant Rooksが2019年にリリースしたEPであり、彼らの音楽的成熟と国際的な注目度を一気に高めた作品である。
これまで『New Estate』などで瑞々しい感性を発揮してきた彼らは、本作『Wild Stare』で、より洗練されたソングライティングと多彩なサウンドアプローチを披露している。
伸びやかで透明感に満ちたフレデリック・リーフェンドのボーカル、メロディアスかつドラマティックな楽曲構成、そして躍動感のあるリズムワーク。
それらすべてが高いレベルで結実し、Giant Rooksは名実ともに「ドイツ発・世界基準のインディーポップバンド」としての地位を固めた。
EPタイトル『Wild Stare』は、若さゆえの無鉄砲さ、そして未来を真っ直ぐに見据えるまなざしを象徴している。
アルバム全体を通して、夢と不安、愛と孤独の間を揺れ動く繊細な感情が、美しく、力強く描かれているのである。
全曲レビュー
1. Wild Stare
EPのタイトル曲にして、彼らの代表曲。
疾走感あふれるリズムと、開放的なサビが心を突き抜ける。
夢に向かって走り出す若者たちの高揚感と不安が交錯する、エモーショナルなアンセム。
2. King Thinking
リズミカルなビートと緻密なアレンジが光るミディアムテンポのナンバー。
自己肯定感と不安の間を行き来する、等身大の心情が描かれている。
サウンドの奥行きが豊かで、繰り返し聴くたびに新たな発見がある。
3. Bright Lies
『New Estate』にも収録されていた人気曲の再録バージョン。
都会の夜の孤独と希望を、メロディアスに、しかしどこか切なく歌い上げる。
ギターとシンセが柔らかく絡み合い、幻想的な空気感を醸成している。
4. 100 mg
焦燥感をエネルギッシュに爆発させたロックチューン。
タイトなリズムとアグレッシブなギターサウンドが印象的で、ライブでの盛り上がりも鉄板の一曲。
5. Went Right Down
EPのラストを飾る、内省的なミディアムバラード。
過去を振り返りながら、それでも前に進もうとする姿勢を、静かに、しかし力強く描いている。
控えめなサウンドが、リーフェンドのボーカルの温もりを際立たせる。
総評
『Wild Stare』は、Giant Rooksが単なるインディーバンドの枠を超え、グローバルに通用するポテンシャルを存分に示したEPである。
この作品で彼らは、夢に向かう衝動、不安定な心情、青春の痛みときらめきを、驚くほど瑞々しく、しかも説得力をもって音楽に昇華している。
サウンド面でも、ロック、ポップ、ドリームポップなどを自在に行き来しながら、独自の世界観を築き上げており、そのスケール感はデビューアルバム級と言っても過言ではない。
『Wild Stare』は、人生の転換点に立つすべての人にとっての、力強い伴走者となるだろう。
不安も迷いも抱えたまま、それでも前へ進む――そんなリスナーたちを、静かに、しかし確かに鼓舞する特別な作品なのである。
おすすめアルバム（5枚）
- The 1975『A Brief Inquiry into Online Relationships』
現代の若者の感情を鋭く、ポップに描いた傑作。 - Nothing But Thieves『Moral Panic』
鋭さと繊細さを兼ね備えた現代ロックアルバム。 - Blossoms『Foolish Loving Spaces』
キャッチーなポップサウンドと叙情性を両立した作品。 - Alt-J『Relaxer』
実験性とポップ感覚のバランスが絶妙なインディーロック。 - Half Alive『Now, Not Yet』
リズミカルなアプローチと内省的なリリックが特徴のポップ作品。
制作の裏側（Behind the Scenes）
『Wild Stare』は、バンド自身が深く関与してセルフプロデュースされ、一部の楽曲で外部エンジニアのサポートを受けながら制作された。
レコーディングは主にドイツ国内のスタジオで行われたが、制作過程では「ライブ感」と「細部へのこだわり」を両立させることが重視された。
そのため、エネルギッシュな瞬間と、繊細なエモーションのバランスが絶妙に取られている。
また、リリックはメンバー自身の実体験や感情をベースにしつつ、聴き手が自分自身を重ね合わせられるよう、あえて曖昧な表現や余白が意図的に取り入れられている。
このような制作姿勢が、『Wild Stare』の普遍的な魅力と、時代を超える普遍性を支えているのである。
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