発売日: 2011年10月18日
ジャンル: インディーロック、ドリームポップ
Real Estateの2枚目のアルバム『Days』は、デビューアルバム『Real Estate』のDIY感を残しつつも、さらに洗練されたサウンドと深みを備えた傑作だ。ギターのリフレインが流れるように展開し、アルバム全体に広がるリバーブが日常の憂鬱と安らぎを織り交ぜている。青春の記憶や郷愁をテーマにした本作は、聴く者をかつての穏やかな日々に引き戻すような、不思議な親しみと儚さを持つ。
前作よりもプロダクションが向上し、細部まで練られたアレンジが光る一方で、Real Estateの持つ自然体の魅力はそのまま。マーティン・コートニーのメランコリックなボーカルと、マット・モンダナイルによるギターの繊細なリフが織り成すサウンドスケープは、何度も繰り返し聴きたくなる中毒性を持つ。ノスタルジックでありながらも、前を向く力強さを感じさせる『Days』は、インディーロックの金字塔ともいえる作品だ。
各曲解説
1. Easy
アルバムを軽やかにスタートさせるこの曲は、シンプルながら完璧なギターポップの典型だ。浮遊感のあるギターのメロディと、リズムセクションの穏やかなグルーヴが心地よい。歌詞には「何もしない日々の幸せ」が反映されており、リラックスした空気感が全編を支配する。
2. Green Aisles
このアルバムの中でも特に印象的なトラックで、ゆったりとしたギターワークが郷愁を呼び起こす。歌詞は「過去を振り返ること」と「未来への希望」を描き、聴く者に穏やかな感傷を与える。透明感のあるサウンドはまるで秋の日差しの中を歩いているかのようだ。
3. It’s Real
アップテンポでキャッチーなメロディが耳に残るリードシングル。愛や感情の本質を描いた歌詞が印象的で、「この瞬間こそがリアルだ」と訴えかけるメッセージが込められている。ギターのリフが楽曲全体を支える力強いエネルギーを生み出している。
4. Kinder Blumen
インストゥルメンタルのこの曲は、アルバム全体に漂うリラックスした雰囲気をさらに強調している。ドリーミーなギターラインと繊細なアレンジが見事に融合し、短いながらも鮮烈な印象を残す。
5. Out of Tune
やや憂いを帯びたメロディが特徴のトラックで、モンダナイルのギターが特に際立つ一曲だ。調和を失った関係性をテーマにした歌詞が心に刺さる。
6. Municipality
静かで控えめなサウンドの中に、深い感情が潜んでいる曲。ギターリフが美しく、歌詞には「日常の中で見つけるささやかな幸福」が描かれている。聴くたびに新たな発見がある奥深い楽曲だ。
7. Wonder Years
夢の中にいるような浮遊感のある一曲で、前作の『Real Estate』を彷彿とさせるリバーブの効いたサウンドが魅力的。若き日々の思い出に焦点を当てた歌詞が、リスナーの心をくすぐる。
8. Three Blocks
短くも印象的なこの曲は、親しみやすいメロディと日常的なテーマが特徴だ。ミニマルなアプローチながら、アルバム全体の流れに欠かせない重要な存在となっている。
9. Younger Than Yesterday
タイトルはバーズのアルバム名に由来しており、バンドのルーツへの敬意を感じさせる。ノスタルジーを感じさせる歌詞と、穏やかなサウンドが完璧に調和している。
10. All The Same
アルバムを締めくくる壮大なトラックで、リフレインが印象的。メッセージ性の強い歌詞とダイナミックな展開が、アルバム全体を見事にまとめ上げる。
アルバム総評
『Days』は、緻密に作り込まれたサウンドと、穏やかでノスタルジックなテーマが完璧に融合した作品だ。リアルエステートらしい自然体のスタイルを保ちながらも、さらに一歩進化を遂げた本作は、インディーロックの名盤として記憶されるだろう。特に「Green Aisles」や「It’s Real」は、彼らのキャリアを代表する名曲であり、アルバム全体を通じて一貫した心地よい世界観が楽しめる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Oshin by DIIV
ドリーミーなギターサウンドと叙情的な雰囲気が本作と共通する。海辺や自然を連想させるテーマが心を癒やす。
Shields by Grizzly Bear
緻密なアレンジと感情の深みが『Days』と似ており、秋の午後にぴったりのリスニング体験を提供してくれる。
Innerspeaker by Tame Impala
サイケデリックなサウンドとノスタルジックな感覚が魅力の一枚。ギターワークの美しさが際立つ。
Paracosm by Washed Out
ドリームポップやチルウェーブの要素が心地よいアルバムで、穏やかな日常のサウンドトラックに最適。
Atlas by Real Estate
バンドの後の作品だが、『Days』の続編とも言える一枚。さらに洗練されたサウンドが楽しめる。
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