発売日: 1977年11月4日
ジャンル: パンクロック
Ramonesの3作目となるアルバム『Rocket to Russia』は、1970年代パンクロックの最高峰と称される作品の一つである。デビューアルバム『Ramones』で提示したシンプルかつエネルギッシュなスタイルを洗練させ、さらに幅広いリスナーに訴えかける楽曲を多数収録。プロデューサーには、前作『Leave Home』に続きトミー・ラモーンとエド・スタジオームが参加しており、バンドの持つ生々しいエネルギーをそのままに、ポップさと親しみやすさを加えた音作りが特徴だ。
本作は、短くキャッチーな楽曲を多数収録しており、ラモーンズらしい疾走感と、50年代のロックンロールやポップソングへのオマージュが融合した仕上がりとなっている。特に「Sheena Is a Punk Rocker」や「Rockaway Beach」といった楽曲は、パンクロックを超えた普遍的な魅力を持ち、バンド最大のヒット曲として愛されている。また、ノスタルジックなサウンドの中にシニカルで風刺的な歌詞が織り込まれており、単なるロックンロールの復興ではなく、1970年代の社会や文化への批評を感じさせる内容となっている。
『Rocket to Russia』は、商業的にも評価的にも成功を収め、ラモーンズがパンクロックの枠を超えてメインストリームに接近するきっかけとなった。しかし、同年にはセックス・ピストルズの『Never Mind the Bollocks』がリリースされるなど、パンクロックの主流化が進んでいく中で、本作はラモーンズの音楽的成熟とその影響力を証明する一枚となった。
トラックごとの解説
1. Cretin Hop
アルバムのオープニングを飾る軽快なナンバー。パンクらしいシンプルなリフとジョーイ・ラモーンのコミカルなボーカルが絶妙にマッチしている。「みんなで踊ろう!」という内容の歌詞が楽しい一曲だ。
2. Rockaway Beach
ラモーンズ最大のヒット曲の一つで、パンクロックとサーフミュージックが融合した明るい楽曲。ディーディー・ラモーンが作詞したこの曲は、夏のビーチへの憧れを歌っており、キャッチーなメロディが印象的だ。
3. Here Today, Gone Tomorrow
アルバムの中で異色のバラード調の楽曲。ジョーイ・ラモーンのエモーショナルなボーカルが際立ち、別れの悲しみを歌った歌詞が心に響く。ラモーンズの意外な一面を垣間見ることができる。
4. Locket Love
軽快でポップなトラック。恋愛をテーマにしたシンプルな歌詞と、明るいメロディが心地よい。バンドのポップセンスが光る一曲だ。
5. I Don’t Care
反抗心をテーマにした典型的なパンクナンバー。「どうでもいい!」というテーマの歌詞が、パンクロックの本質を突いている。
6. Sheena Is a Punk Rocker
ラモーンズの代表曲で、パンクロックのアンセムとも言える楽曲。ジョーイ・ラモーンが作詞したこの曲は、ポップで親しみやすいメロディと、シンプルな歌詞が特徴的。特に「Sheena」という名前は、パンクカルチャーの象徴となった。
7. We’re a Happy Family
シニカルなユーモアが光る楽曲で、機能不全の家族像を描写している。軽快なビートとブラックユーモアが絡み合い、パンクらしいひねりを効かせた一曲。
8. Teenage Lobotomy
疾走感のある楽曲で、若者文化や社会の圧力に対する皮肉が込められている。パンクロックらしい短い時間で畳み掛けるエネルギーが心地よい。
9. Do You Wanna Dance?
ボビー・フリーマンのカバー曲で、ラモーンズ流にアレンジされたロックンロールの名曲。スピード感とシンプルな構成が楽曲に新しい命を吹き込んでいる。
10. I Wanna Be Well
個人の願望と孤独感をテーマにした楽曲。ディーディー・ラモーンの内省的な一面が歌詞に表れており、シンプルなメロディが印象的だ。
11. I Can’t Give You Anything
ジョニー・ラモーンの歯切れの良いギターが際立つ短いナンバー。恋愛の無力感をテーマにした歌詞が、パンクらしいシンプルさで描かれている。
12. Ramona
バンド名を思わせるタイトルを持つロマンチックな楽曲。ノスタルジックなメロディと、ジョーイの柔らかなボーカルが心地よい一曲。
13. Surfin’ Bird
トラッシュメンのカバー曲で、オリジナルのサーフロックをパンクロックとして再解釈した一曲。エネルギッシュで遊び心あふれるパフォーマンスが楽しい。
14. Why Is It Always This Way?
アルバムを締めくくる、切なくもキャッチーな楽曲。ジョーイのメロディセンスが光る一曲で、アルバム全体を美しく締めくくる。
アルバム総評
『Rocket to Russia』は、ラモーンズが持つパンクロックのエネルギーとポップセンスを絶妙に融合させたアルバムであり、彼らの音楽的成熟を象徴する作品である。短い楽曲ながらも多彩な表情を持ち、親しみやすさとメッセージ性を兼ね備えた名盤。シンプルであるがゆえに普遍的な魅力を持ち、パンクロック初心者から熱心なファンまで幅広く楽しめる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Ramones by Ramones
ラモーンズのデビューアルバムで、パンクロックの原点を楽しめる。シンプルでエネルギッシュな楽曲が詰まった一枚。
London Calling by The Clash
パンクロックに多様なジャンルを融合させた名作で、『Rocket to Russia』同様の幅広い音楽性を感じられる。
Leave Home by Ramones
ラモーンズの2作目で、パンクロックの勢いをさらに加速させたアルバム。「Pinhead」などの名曲を収録。
Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols by Sex Pistols
パンクロックを代表する作品で、攻撃的な歌詞とエネルギッシュなサウンドが魅力的。
The Modern Lovers by The Modern Lovers
シンプルでノスタルジックなロックンロールを基盤にしたアルバムで、ラモーンズのファンにもおすすめ。
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