発売日: 2010年3月1日
ジャンル: インディーロック、フォークロック、オルタナティヴロック
Frightened Rabbitの3作目『The Winter of Mixed Drinks』は、前作『The Midnight Organ Fight』の深く感情的なアプローチから一歩進み、より壮大で広がりのあるサウンドを追求したアルバムである。本作は、孤独や自己発見といったテーマを中心に描きつつも、バンドサウンドをよりダイナミックに進化させており、前作よりも光と希望を感じさせる内容となっている。
スコット・ハッチソンの詩的で感情的な歌詞は健在でありながら、アルバム全体にはスコットランドの海辺の風景を思わせるような空気感と、開放的なエネルギーが感じられる。楽曲のアレンジはより洗練され、ストリングスやコーラスを取り入れた豊かな音響が、バンドの新たな方向性を示している。
トラック解説
1. Things
アルバムの幕開けを飾るミッドテンポの楽曲。繰り返されるリフとスコットの控えめなボーカルが、アルバム全体のテーマである自己再生への序章を感じさせる。
2. Swim Until You Can’t See Land
リードシングルで、アルバムの中でも特にキャッチーな一曲。タイトルに込められた「未知への挑戦」が象徴的で、波のように押し寄せるギターとメロディが印象的。
3. The Loneliness and the Scream
力強いコーラスとドラムが楽曲を引っ張る、エネルギッシュなナンバー。孤独とその克服をテーマにした歌詞が心に響く。
4. The Wrestle
緊張感のあるアレンジとリズムが特徴的。歌詞には、葛藤や闘争といった内面的なテーマが描かれている。
5. Skip the Youth
ゆっくりとしたペースで始まり、徐々に壮大なクライマックスへと進むトラック。ストリングスとギターの絡み合いが美しく、アルバムの中でも特に印象的な楽曲。
6. Nothing Like You
アルバムの中で最もアップテンポな楽曲。失恋の後の軽快さを描いた歌詞とエネルギッシュなサウンドが対照的で耳に残る。
7. Man/Bag of Sand
短いインストゥルメンタルで、次の楽曲へのブリッジとなる役割を果たす。静かで落ち着いた雰囲気が漂う。
8. FootShooter
静かなイントロから始まり、徐々に高まる緊張感が特徴的なトラック。自己破壊的な行動に向き合う歌詞が深い印象を残す。
9. Not Miserable
希望をテーマにした楽曲で、力強い歌詞とアレンジが特徴的。スコットのボーカルが楽曲をエモーショナルに引き立てる。
10. Living in Colour
アルバムの中で最も明るく、開放感のある楽曲。ギターのリフとコーラスが楽曲全体を包み込むような心地よさを生み出している。
11. Yes, I Would
アルバムのラストを飾る静かなバラード。儚くも美しいメロディが、アルバム全体の余韻を深めている。
アルバム総評
『The Winter of Mixed Drinks』は、Frightened Rabbitがより洗練されたアプローチを試みたアルバムであり、感情的な深さを保ちながらも、より広がりのあるサウンドを展開している。個人的な苦悩を描いた前作と比べると、希望や再生のテーマが強調されており、楽曲のダイナミズムとバンド全体のまとまりが際立つ作品となっている。スコット・ハッチソンの詩的な歌詞と情熱的なボーカルが、聴き手の心に深い印象を残す。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
High Violet by The National
緻密なアレンジと感情的な歌詞が特徴のアルバム。『The Winter of Mixed Drinks』のエモーショナルな一面と共鳴する。
Fourteen Autumns & Fifteen Winters by The Twilight Sad
スコットランドのバンドによる叙情的なインディーロック。感情的でドラマチックなサウンドが共通している。
For Emma, Forever Ago by Bon Iver
孤独や自己発見をテーマにした内省的なフォークアルバム。感情の深さが共通する。
Veckatimest by Grizzly Bear
豊かなアレンジと洗練されたサウンドが楽しめるアルバム。『The Winter of Mixed Drinks』のファンにおすすめ。
Babel by Mumford & Sons
力強いフォークロックとエモーショナルな歌詞が特徴。『The Winter of Mixed Drinks』の明るさと重なる部分が多い。
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