1. 歌詞の概要
「Will You Still Love Me?」は、アメリカのロックバンドChicagoが1986年にリリースしたアルバム『Chicago 18』に収録されたバラードであり、シングルとしても大ヒットを記録した楽曲である。タイトルが語るとおり、この曲が問いかけるのは、関係が変わってしまった後でも、相手が自分を愛し続けてくれるかどうか――つまり“変化と不安の中にある愛の持続性”をめぐる物語だ。
歌詞の主人公は、恋人に対して不安を打ち明けるようなかたちで、「この先も君は僕を愛してくれる？」と静かに、しかし切実に問いかける。過去の過ち、すれ違い、迷い。それらをすべて抱えながらも、それでもなお愛をつなぎ止めたいという強い願いが、美しい旋律とともに語られていく。
この曲の核心は、「愛が永遠である保証などどこにもない」という現実を見据えたうえで、それでも“信じたい”“つながり続けたい”と願う人間の正直な心の声なのである。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Will You Still Love Me?」は、バンドの主要ボーカリストだったピーター・セテラ脱退後、新たに加入したジェイソン・シェフ（Jason Scheff）の初期代表作であり、彼がChicagoに新しい時代をもたらした象徴的な1曲である。
作詞作曲はデヴィッド・フォスター（David Foster）、トム・キーティング（Tom Keane）、リチャード・バスキン（Richard Baskin）によって手がけられ、1980年代的な洗練されたポップ・バラードのスタイルに仕上がっている。特にフォスターの手によるアレンジは、きらびやかなシンセサイザーと豊かなストリングスが特徴で、感情の高まりを巧みに演出している。
シングルとしてはBillboard Hot 100で3位を記録し、セテラ不在で不安視されていたChicagoが再びヒットチャートの最前線へと返り咲く契機となった。つまりこの曲は、Chicago自身にとっても「Will you still love me?（まだ愛してくれるかい？）」という問いかけと重なるような、自己再生の音楽でもあったのだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
I can see you’re slipping away from me
And you’re so afraid that I’ll plead with you to stay
君が少しずつ僕から離れていくのがわかる
そして君は、僕がすがりついてしまうことを恐れている
But I’m gonna be strong
Let you go your way
でも僕は強くなる
君の選ぶ道を尊重するよ
Love is gonna find a way
Don’t say goodbye
でも、愛はきっと道を見つけてくれる
だから“さよなら”なんて言わないで
Will you still love me
For the rest of my life?
君はこの先もずっと
僕のことを愛し続けてくれるのかな？
引用元：Genius Lyrics – Chicago “Will You Still Love Me?”
4. 歌詞の考察
この楽曲の最大の特徴は、「別れの予感」をただ悲しみとしてではなく、“受け入れる覚悟”と“希望の余白”の両方として描いている点にある。語り手は、相手が自分のもとから去ろうとしていることを感じ取りながらも、それを強引に引き止めることはしない。代わりに、問いかける――「君はそれでも、僕を愛してくれるのか？」
ここには、愛とは「ただ一緒にいること」ではなく、「変化していく相手をも愛し続ける覚悟」であるという、成熟した視点がにじんでいる。
また、“I’m gonna be strong”というラインは、恋愛の中でよく語られる“弱さ”ではなく、むしろ“尊重する強さ”の表現である点も重要だ。愛するがゆえに手放す、あるいは自由を認めるという態度は、決して諦めではない。むしろ、その中にこそ真実の愛が潜んでいる。
そして、“Will you still love me for the rest of my life?”というサビの問いかけは、どこまでも個人的で、普遍的である。未来を約束させるのではなく、ただ「この先も僕に気持ちを向けてくれるか」と確認したい――そんな一途な心が、聴く者の胸を静かに締めつける。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Glory of Love by Peter Cetera
愛の誓いと強さをドラマティックに描いたバラード。ロマンティックで誠実な姿勢が共通する。 - Can’t Fight This Feeling by REO Speedwagon
愛を認めることの難しさと、それでも抗えない感情の奔流が描かれたバラード。 - Nothing’s Gonna Change My Love for You by Glenn Medeiros
愛の変わらぬ確かさを歌うバラード。シンプルでまっすぐなメッセージが響く。 - Hold On to the Nights by Richard Marx
別れと再生のはざまに揺れる感情を、美しい旋律とともに描いた名曲。
6. 再生の問いかけとしての“Will You Still Love Me?”
「Will You Still Love Me?」は、恋の終わりではなく、“終わりかけた恋を再びつなぎとめようとする瞬間”を捉えた、きわめて繊細で誠実なラブソングである。そしてそれは同時に、ピーター・セテラ脱退という大きな転換点を迎えたChicago自身の、“これからも愛され続けるか？”という問いでもあった。
その問いに対して、ファンもまた“YES”と答えた。それがこの楽曲の成功であり、Chicagoの第二幕を支えた原動力でもある。
この曲が持つ力は、時代を超えて“人間の不安と希望”をやさしく照らし出すことにある。「Will You Still Love Me?」というたったひとつの問い。それは恋人に向けたものでもあり、聴いているあなた自身が誰かに抱く想いかもしれない。
変わること、離れること、近づくこと。人間関係の不確かさの中で、それでも「愛していてほしい」と願う。
この楽曲は、そんな切実で、けれども静かな願いを、美しく、誠実に響かせ続けている。
愛は確約ではない。でも、だからこそ尋ねたくなる――Will you still love me?
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