発売日: 2020年9月25日
ジャンル: ポストパンク、パンクロック
IDLESの3作目「Ultra Mono」は、前作「Joy as an Act of Resistance」で見せた怒りや共感、ユーモアのスピリットをさらに強化し、力強く社会や個人の在り方を批判するアルバムだ。IDLESは、「Ultra Mono」を通じて、現在の政治や社会の問題に鋭く切り込む一方で、自己愛や自己肯定のメッセージを力強く発信している。フロントマンのジョー・タルボットは、強烈で直球の歌詞と攻撃的なボーカルスタイルで、怒りや失望、愛を叫び、リスナーに圧倒的なエネルギーを放つ。
「Ultra Mono」は、「シンプルでダイレクトなメッセージ」を目指して制作され、強烈なギターリフと分厚いベースラインが力強いビートに支えられている。アルバム全体に渡る一貫した激しいテンションと、エネルギッシュなリズムが、まるで一発で叩きつけるパンチのような勢いを持っている。IDLESは、ここで社会的メッセージと自らのアイデンティティをより明確に表現し、ポストパンクシーンでの位置を一層強固なものとしている。
トラックごとの解説
1. War
アルバムの幕開けを飾る「War」は、轟音のギターリフと激しいドラムが戦場のようなイメージを喚起する一曲。タルボットの叫びと、戦争への批判が込められた歌詞が印象的で、怒りとエネルギーが爆発する。
2. Grounds
「Grounds」は、力強いリズムと繰り返される「Do you hear that thunder?」のフレーズが特徴で、IDLESの信念を強調する。社会の抑圧や偏見に対する抵抗のメッセージが、リズミカルでキャッチーなサウンドに乗せられている。
3. Mr. Motivator
タルボットがユーモラスかつ攻撃的に自己肯定を促す「Mr. Motivator」。自己啓発的なメッセージが詰め込まれており、ポジティブでありながらも過激なエネルギーに満ちている。
4. Anxiety
「Anxiety」は、不安に満ちた現代社会への鋭い視点が込められた一曲。リズムが不安定で激しく、タルボットのボーカルも荒々しく、現代の混乱とストレスが音楽に反映されている。
5. Kill Them With Kindness
タイトル通り、「優しさで倒せ」というメッセージが込められた楽曲。シンプルなビートとキャッチーなリフが心地よく、怒りに代わる優しさの力が強調されている。
6. Model Village
「Model Village」は、偽善や小市民的な価値観への風刺が込められた曲で、タルボットが「小さな村」の偽りの完璧さを皮肉る。メロディもキャッチーで、皮肉とユーモアにあふれている。
7. Ne Touche Pas Moi
「Ne Touche Pas Moi」（「私に触れないで」）は、身体的な境界を尊重するメッセージが込められており、フェミニズムと個人の尊厳を守るためのテーマが描かれている。強いビートとフランス語のタイトルが印象的だ。
8. Carcinogenic
「Carcinogenic」は、資本主義社会の病的な側面を批判し、健康や環境に対する無関心を皮肉る。タルボットのボーカルと演奏が非常に力強く、テーマに対する怒りが色濃く表れている。
9. Reigns
「Reigns」は、強者による支配や権力を批判するトラック。重厚なリズムがテーマを引き立て、IDLESの怒りとメッセージが凝縮されている。
10. The Lover
「The Lover」は、愛と共感の力を信じるメッセージが込められた楽曲で、自己愛や他者への理解がテーマ。シンプルでリズミカルなサウンドに、IDLESらしい力強いメッセージが込められている。
11. A Hymn
「A Hymn」は、内省的で抑えたトーンのトラックで、孤独や自己の不完全さに向き合うテーマが描かれている。アルバム中で最もメランコリックで、静かな感情が反映された一曲。
12. Danke
アルバムの最後を締めくくる「Danke」は、感謝の気持ちを表現するタイトルとは裏腹に、激しいリフとダークな雰囲気が漂う。アルバム全体の怒りと感謝が交錯しながら、強烈な余韻を残して終わる。
アルバム総評
「Ultra Mono」は、IDLESがこれまでの持ち味である怒りと愛、ユーモアを極限まで高めた作品である。社会や個人への批判、自己肯定や自己愛のメッセージが明快に打ち出されており、ポストパンクの中でも一際強烈でパワフルなアルバムとなっている。IDLESはシンプルかつキャッチーなサウンドと、ストレートなリリックでリスナーに直接語りかけ、彼らの哲学や信念を感じさせる。「Ultra Mono」は、ポストパンクシーンに新たな視点を提供し、IDLESが現代の社会的な声としての役割を果たしていることを証明するアルバムだ。
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Why Me? Why Not. by Liam Gallagher
シンプルでパワフルなサウンドが特徴。IDLESのキャッチーなエネルギーと、アグレッシブな姿勢がリンクする。
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