発売日: 2022年10月7日
ジャンル: インディーポップ、ドリームポップ、シューゲイザー
Alvvaysの3作目「Blue Rev」は、前作「Antisocialites」から約5年の時を経てリリースされ、待望の新作として大きな期待を集めた作品だ。このアルバムでは、これまでのインディーポップのノスタルジックな雰囲気とドリーミーなサウンドをさらに深め、よりダイナミックで豊かなサウンドスケープが広がっている。モリー・ランキンのクリアで澄んだボーカルがシューゲイザー的なギターと交錯し、甘く切ないメロディが溶け合うことで、聴く者を夢のような音楽体験へと誘う。
「Blue Rev」には、前作に続く恋愛や失恋、青春の儚さがテーマとして描かれつつも、時間の経過や変化といった要素がより深く掘り下げられている。バンドメンバーは幾度ものメンバー交代や制作の遅れといった困難を乗り越え、新しい方向性に挑戦しながらもAlvvaysらしさを失わない独自のサウンドを確立している。過去の作品を超える音楽的な成長を感じさせ、エネルギーに満ちた珠玉の楽曲が揃ったアルバムだ。
トラックごとの解説
1. Pharmacist
アルバムの幕開けを飾る「Pharmacist」は、疾走感のあるギターとモリーのエモーショナルなボーカルが印象的なトラック。恋愛の始まりと痛みをテーマにしており、イントロから一気にリスナーを引き込むエネルギッシュな一曲だ。
2. Easy On Your Own?
「Easy On Your Own?」は、Alvvaysらしいキャッチーなメロディと共に、失恋と孤独感を描いた一曲。軽快なギターとドリーミーなサウンドが響き、切ない歌詞と共鳴して心に残る。
3. After The Earthquake
「After The Earthquake」は、明るいリズムに対照的な悲しみの要素が含まれている。ギターのフィードバックとパーカッションが美しく融合し、荒々しいがどこか懐かしさも感じるトラックだ。
4. Tom Verlaine
タイトルからもわかるように、Televisionのギタリスト、トム・ヴァーレインに捧げられた一曲。シンプルなギターフックとリズミカルなビートが心地よく、敬愛とリスペクトが表現されている。
5. Pressed
「Pressed」は、鋭いギターとエネルギッシュなドラムが前面に出た楽曲で、バンドのロックな一面が感じられる一曲。勢いのあるサウンドにモリーのボーカルが絡み、アルバムの中でも特に攻撃的な印象を与える。
6. Many Mirrors
メロウで優しさが溢れる「Many Mirrors」は、柔らかなギターとモリーの穏やかな歌声が心に染み渡る。人生や関係性の移ろいを歌ったリリックが美しく、アルバムの中で一息つける静かな一曲だ。
7. Very Online Guy
皮肉を効かせた歌詞とキャッチーなメロディが特徴の「Very Online Guy」。ネット社会や現代的な人間関係への風刺が込められており、軽快なサウンドと共にユーモラスな一面も楽しめる。
8. Velveteen
「Velveteen」は、ノイジーでシューゲイザー的なサウンドが際立つトラックで、深みのあるメロディが心に響く。恋愛の複雑な感情が歌われ、ドリームポップとシューゲイザーの融合が見事に表現されている。
9. Tile By Tile
「Tile By Tile」は、淡いメロディとリズムが印象的で、成長や変化をテーマにした一曲。ゆったりとしたテンポが心地よく、日常の一瞬を切り取ったかのような歌詞がAlvvaysらしい。
10. Pomeranian Spinster
「Pomeranian Spinster」は、疾走感とパンク的なエネルギーが詰まったトラックで、Alvvaysの新たな一面を感じさせる。シンプルでダイレクトなサウンドが、聴き手のテンションを引き上げる一曲。
11. Belinda Says
「Belinda Says」は、憧れと切なさを同時に抱える心情を描いた楽曲で、キャッチーでありながらも感情がにじむメロディが美しい。どこか懐かしいサウンドが、リスナーを引きつける。
12. Bored In Bristol
「Bored In Bristol」は、退屈さと孤独感がテーマで、淡々としたメロディと飄々としたボーカルが特徴的。シンプルながらも心に残る印象的な楽曲だ。
13. Lottery Noises
アルバムの締めくくりとなる「Lottery Noises」は、静かでメランコリックな雰囲気を持つエンディングトラック。リリックには過ぎ去る時間や過去への郷愁が感じられ、余韻を残しつつアルバムを締めくくる。
アルバム総評
「Blue Rev」は、Alvvaysがこれまでのインディーポップ、ドリームポップのサウンドを進化させ、深みと豊かさが増したアルバムである。甘く切ないメロディとともに、シューゲイザー的なノイズとギターの重厚感が、さらに力強い表現を生んでいる。モリー・ランキンの透明感のあるボーカルは感情に寄り添い、恋愛や孤独、青春の儚さを丁寧に描き出している。Alvvaysはこの作品で、ノスタルジックでありながらも新しいサウンドを提示し、音楽的な成長を示すと同時に、聴き手に新鮮な驚きと感動をもたらす。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bloom by Beach House
ドリーミーで豊かなサウンドスケープが特徴のアルバム。浮遊感と切なさが混ざり合うサウンドが「Blue Rev」と共通しており、感情的な深みが楽しめる。
Isn’t Anything by My Bloody Valentine
シューゲイザーの名盤で、ノイジーで厚みのあるギターが特徴。甘さと激しさが共存するサウンドが、「Blue Rev」のファンにとっても魅力的だろう。
I Can Feel the Heart Beating as One by Yo La Tengo
柔らかなメロディとシューゲイザー的な音響が融合したアルバム。恋愛や日常の複雑な感情を描く点で、「Blue Rev」と共鳴する作品。
Days by Real Estate
穏やかでリラックスできるギターサウンドが特徴の一枚。ノスタルジックでメロディアスな音楽が、Alvvaysのファンにも響く。
Lush by Snail Mail
シンプルながらも感情的な歌詞と、ドリーミーで切ないサウンドが魅力のアルバム。Alvvaysの持つ繊細さとエネルギーが好きなリスナーにおすすめ。
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