アルバムレビュー:Dizrythmia by Split Enz

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1977年8月

ジャンル:アートロック、プログレッシヴ・ロック、ニューウェイヴ、ポップ・ロック

概要

Split Enzの3作目にあたる『Dizrythmia』は、ニュージーランド出身の彼らが、初期の演劇的なアートロックから、より洗練されたポップ・ロック/ニューウェイヴ的方向へと移行していく重要な転換点に位置するアルバムである。タイトルの『Dizrythmia』は、英語の「dysrhythmia」、つまり不整脈やリズムの乱れを連想させる造語であり、Split Enzの音楽にある不規則性、奇妙なユーモア、感情のぎこちなさを象徴している。

Split Enzは、1970年代前半にニュージーランドで結成され、Tim FinnとPhil Juddを中心に、英国プログレッシヴ・ロック、ミュージックホール、キャバレー、クラシック音楽、演劇的パフォーマンスを混ぜ合わせた独自のスタイルで注目を集めた。初期作品『Mental Notes』や『Second Thoughts』では、複雑な曲構成、風変わりなメロディ、舞台衣装のようなヴィジュアル、神経質で不安定な歌唱が特徴だった。彼らは当時の一般的なロック・バンドというより、音楽劇団に近い存在感を放っていた。

しかし『Dizrythmia』では、バンドの内部状況が大きく変化している。創設メンバーであり、初期の奇怪な作風を担っていたPhil Juddが離脱し、Neil Finnが加入したことにより、Split Enzの音楽は徐々にポップ・ソングとしての明快さを獲得していく。Neil Finnは後にCrowded Houseで国際的な成功を収めるソングライターだが、本作ではまだ若い新メンバーであり、アルバム全体の主導権は兄のTim Finnが握っている。それでも、Neilの加入はバンドの将来を大きく変える出来事だった。

本作の音楽性は、初期Split Enzの奇妙さを完全に捨てたものではない。むしろ、不安定なリズム、変則的なコード進行、芝居がかったヴォーカル、ユーモラスなアレンジは随所に残されている。しかし同時に、「My Mistake」のような比較的分かりやすいポップ・ソングが登場し、バンドがより広い聴衆に届く可能性を示している。つまり『Dizrythmia』は、アートロックの偏屈さとニューウェイヴ的な簡潔さが同居する作品である。

1977年という時代背景も重要である。この年は英国ではパンクが爆発し、従来のプログレッシヴ・ロックや大仰なロック表現が批判の対象になりつつあった。Split Enzはプログレッシヴ・ロック的な複雑さを持ちながらも、パンク以降の時代に対応できる軽さや奇妙なポップ感覚を備えていた。本作は、1970年代前半のアートロックから、1980年代のニューウェイヴ/シンセポップへ向かう過渡期の空気をよく反映している。

日本のリスナーにとって『Dizrythmia』は、Split Enzを代表曲「I Got You」だけで知る場合には意外に映る作品かもしれない。後年の洗練されたポップ性よりも、ここではまだ演劇的で癖の強い表現が目立つ。しかし、その癖こそがSplit Enzの本質であり、ニュージーランド/オーストラリア圏のロックが英国や米国の流行を単に模倣するのではなく、独自のアート感覚を育てていたことを示している。

全曲レビュー

1. Bold as Brass

オープニングを飾る「Bold as Brass」は、アルバムの幕開けにふさわしい、芝居がかった勢いを持つ楽曲である。タイトルの「Bold as Brass」は、「厚かましいほど大胆な」という意味合いを持つ表現であり、Split Enzの音楽的態度そのものを示している。曲はストレートなロックというより、キャバレー的な雰囲気とアートロック的な不安定さを兼ね備えている。

サウンド面では、キーボードとギターが単純な伴奏ではなく、曲の表情を細かく変化させる役割を担っている。リズムは一見軽快だが、どこかぎこちない揺れを含んでおり、アルバム・タイトルの「リズムの乱れ」というイメージとも結びつく。Split Enzは、正確で滑らかなグルーヴよりも、意図的な不自然さや演劇的な間を重視するバンドであり、この曲はその姿勢をよく示している。

歌詞は、自己主張、見栄、虚勢、社会的な振る舞いをめぐる内容として読める。大胆に振る舞う人物の背後には、必ずしも本物の自信があるわけではない。むしろ、過剰な身振りや派手な言葉によって不安を隠しているようにも感じられる。このような「外側の演技」と「内面の不安」のズレは、Split Enzの歌詞にしばしば見られるテーマである。

アルバム冒頭のこの曲は、聴き手に対して「これは普通のロック・アルバムではない」と宣言する役割を果たしている。ポップな魅力はあるが、直線的ではない。ユーモラスだが、どこか神経質である。この二面性が『Dizrythmia』全体の性格を決定づけている。

2. My Mistake

「My Mistake」は、本作の中でも最も分かりやすいポップ・ソングのひとつであり、Split Enzが後に大きく開花させるメロディアスな側面を予告する重要曲である。初期の複雑で演劇的な作風に比べると、曲の構成は比較的明快で、サビの印象も強い。とはいえ、完全に普通のポップ・ロックになっているわけではなく、随所にSplit Enz特有のひねりがある。

タイトルの「My Mistake」は、「自分の間違い」という意味であり、歌詞には後悔、認識のズレ、関係性の失敗が描かれている。恋愛や人間関係において、自分が誤った判断をしたことに気づく瞬間は、多くのポップ・ソングで扱われてきたテーマである。しかしSplit Enzの場合、その後悔は単純な感傷ではなく、やや皮肉めいた自己分析として表現される。

音楽的には、メロディの親しみやすさと、アレンジの奇妙さが同時に存在する。ヴォーカルは感情的でありながらも、どこか演技的な抑揚を持つ。キーボードの使い方も、単に曲を飾るのではなく、楽曲に軽妙な違和感を与えている。この違和感があるからこそ、「My Mistake」は単なるラジオ向けポップではなく、Split Enzらしいアートポップとして成立している。

本作の中でこの曲が重要なのは、バンドがポップ・ソングの形式を受け入れ始めたことを示している点である。後のSplit EnzやCrowded Houseにつながる、メロディを中心としたソングライティングの方向性が、ここにすでに現れている。

3. Parrot Fashion Love

「Parrot Fashion Love」は、タイトルからしてSplit Enzらしい風変わりな楽曲である。「Parrot」はオウムを意味し、模倣、派手な色彩、騒がしい反復といったイメージを持つ。「Fashion Love」という言葉と結びつくことで、流行としての恋愛、見せかけの感情、他人の言葉を真似るような関係性が示唆される。

この曲では、Split Enzの批評的なユーモアがよく表れている。恋愛はしばしば個人的で深い感情として扱われるが、ここではファッションのように着替えられ、オウム返しのように繰り返されるものとして描かれている。つまり、感情そのものよりも、感情を演じる様式がテーマになっている。

サウンドは軽快で、どこかコミカルな質感を持つ。リズムやメロディは親しみやすいが、アレンジにはひねりがあり、単純なポップ・ソングにはならない。Split Enzは、ポップな表面の下に皮肉や不安を忍ばせることに長けているバンドであり、この曲もその好例である。

歌詞の視点は、流行に乗る人々や、借り物の言葉で愛を語る人間への観察として読むことができる。1970年代後半は、ロックやファッションが急速に変化し、パンクやニューウェイヴが新しいスタイルを提示していた時期である。その中で「本物らしさ」もまた一種の流行になり得る。Split Enzは、そうした文化的状況を斜めから眺めていた。

4. Sugar and Spice

「Sugar and Spice」は、甘さと刺激、可愛らしさと毒気を併せ持つタイトルが印象的な楽曲である。この言葉は英語圏では伝統的に、理想化された少女らしさや甘美な魅力を連想させる表現としても使われる。しかしSplit Enzの文脈では、その無邪気な響きは必ずしも素直には受け取れない。

曲のサウンドは、比較的ポップで親しみやすいが、やはりどこかねじれている。メロディは軽やかで、耳に残りやすい。一方で、アレンジやヴォーカルのニュアンスには不安定さがある。甘いものとスパイスの組み合わせは、快楽と刺激、魅力と危険の両面を持つ。この二重性が楽曲全体に反映されている。

歌詞のテーマとしては、相手の魅力に惹かれながらも、その魅力が単純な優しさや美しさだけではないことを示している。恋愛対象は「甘い」存在であると同時に、聴き手を混乱させる「刺激」でもある。Split Enzは、恋愛を純粋な感情としてではなく、演技、欲望、誤解、自己投影が入り混じる複雑なものとして描く傾向がある。

音楽的には、初期のプログレッシヴな複雑さがやや整理され、ポップ・ソングとしてのまとまりが強くなっている。しかし、その中にも独特の演劇性が残されているため、曲は平凡なラブソングにはならない。『Dizrythmia』が持つ「親しみやすいのに奇妙」という感覚をよく表した一曲である。

5. Without a Doubt

「Without a Doubt」は、アルバム前半の中で比較的シリアスな響きを持つ楽曲である。タイトルは「疑いなく」「間違いなく」という意味だが、その言葉とは裏腹に、曲全体には不確かさや緊張感が漂う。Split Enzはしばしば、言葉の表面と音楽の感情をずらすことで、独特の不安を生み出す。

サウンドは、アートロック的な陰影を強く残している。キーボードの使い方、曲の展開、ヴォーカルの抑揚には、初期Split Enzの演劇性が感じられる。ポップに接近している本作の中でも、この曲はバンドの複雑で内向的な側面を示している。

歌詞のテーマは、確信を求めながらも確信できない心理として解釈できる。人はしばしば「疑いはない」と言うことで、自分自身の疑念を打ち消そうとする。この曲における確信も、揺るぎない信念というより、不安を覆い隠す言葉のように響く。そこにSplit Enzらしい心理的な屈折がある。

音楽的には、メロディの美しさよりも、空気の張りつめ方が印象に残る。楽曲は大きく爆発するというより、内側に圧力を溜めて進んでいく。こうした抑制された緊張感は、後のニューウェイヴにも通じるものであり、バンドが時代の変化と自然に接続していく要素を感じさせる。

6. Crosswords

「Crosswords」は、タイトル通り、言葉のパズルや知的な遊びを連想させる楽曲である。Split Enzの音楽には、言葉遊び、洒落、断片的なイメージを組み合わせる感覚があり、この曲はその知的でユーモラスな側面を象徴している。

クロスワードは、空白を埋め、縦横の関係から意味を探っていく遊びである。これを人間関係や自己理解の比喩として読むこともできる。相手の言葉をどう解釈するか、自分の思考の空白をどう埋めるか、断片的な情報からどのように全体像を作るか。Split Enzの歌詞は、しばしばこうした認識のズレや意味の組み替えに関心を向けている。

サウンドは軽やかでありながら、構成には細かな変化がある。メロディはポップだが、リズムやアレンジには不規則な感覚があり、まさにパズルのように組み合わされている。聴き手にとって分かりやすいフックを持ちながら、単純な反復だけには頼らないところがSplit Enzらしい。

この曲は、バンドのアートロック的な知性とポップな遊び心がうまく結びついた楽曲である。重苦しいテーマを扱うのではなく、言葉と音の組み合わせそのものを楽しむ姿勢が前面に出ている。『Dizrythmia』の中でも、バンドの軽妙さを示す重要な曲である。

7. Charlie

「Charlie」は、人物名をタイトルにした楽曲であり、Split Enzの物語性やキャラクター描写の感覚が表れている。初期の彼らは、単に自分自身の感情を歌うだけでなく、架空の人物や奇妙な場面を作り出し、演劇的に楽曲を展開する傾向が強かった。この曲にも、その名残が感じられる。

タイトルの「Charlie」は、具体的な人物であると同時に、どこか象徴的な存在として響く。歌詞では、孤独、社会とのズレ、奇妙な振る舞い、あるいは周囲から理解されない人物像が浮かび上がる。Split Enzの世界では、普通であることよりも、少し外れた存在であることが重要な意味を持つ。Charlieもまた、そのようなアウトサイダー的な人物として描かれていると考えられる。

音楽的には、メロディに哀愁があり、単なるコミカルなキャラクター・ソングにはなっていない。演劇的な要素はあるが、その奥には人間的な孤独がある。このバランスはSplit Enzの魅力のひとつである。彼らは奇妙なものを奇妙なまま提示するだけでなく、その中に感情の深さを見出す。

「Charlie」は、バンドの初期的なキャバレー感覚と、より成熟したソングライティングが交わる楽曲である。人物を描くことで、普遍的な感情を間接的に表現する手法が用いられており、アルバムの中盤に人間味のある陰影を加えている。

8. Nice to Know

「Nice to Know」は、タイトルの穏やかな響きとは対照的に、どこか冷ややかさや距離感を含む楽曲である。「知ってよかった」という言葉は、素直な感謝としても、皮肉としても使える。この曖昧さが曲の中心にある。

サウンドは比較的整っており、ポップ・ロックとしての聴きやすさを持つ。しかし、ヴォーカルの表情やコードの運びには、単純に明るい曲とは言えない陰りがある。Split Enzは、明るいメロディの中に不安や皮肉を混ぜ込むことが多く、この曲もその系譜にある。

歌詞のテーマとしては、何かを知ってしまった後の変化が描かれている。人間関係において、知らなければよかった事実や、知ったことで相手への見方が変わる瞬間がある。「Nice to Know」という言葉は、その痛みを軽く受け流すための皮肉にも聞こえる。感情を直接ぶつけるのではなく、あえて礼儀正しい言葉に包むことで、かえって関係の冷え込みが強調される。

この曲は、Split Enzが持つ英国的な皮肉や、ニュージーランド出身バンドとしての独特な距離感を感じさせる。感情を大げさに叫ぶのではなく、言葉の裏側に潜ませる。その抑制された表現が、後年のNeil Finn作品にもつながる洗練を予感させる。

9. Jamboree

「Jamboree」は、タイトル通り祝祭や集会を連想させる楽曲である。Split Enzの初期的な演劇性、奇妙なパーティー感覚、集団でのパフォーマンス性が色濃く表れている。アルバム後半に置かれることで、作品全体に再び華やかで雑多なエネルギーを与えている。

サウンドは賑やかで、リズムやメロディにはどこかカーニバル的な雰囲気がある。しかし、それは単純に楽しい祝祭ではない。Split Enzの音楽における祝祭は、しばしば少し不気味で、過剰で、秩序が崩れそうなものとして描かれる。この曲にも、明るさの裏に不安定さがある。

歌詞の面では、集団の中での振る舞いや、騒ぎの中に埋もれる個人の感覚が読み取れる。祝祭は人々を結びつける一方で、個人の孤独を隠す場でもある。派手な音楽、笑い、集団の熱気の中で、かえって自分の居場所のなさが浮かび上がることもある。Split Enzはこうした二重性を、ユーモラスな表現の中に忍ばせている。

音楽的には、バンドのアンサンブルの巧さが光る。複数の要素が入り組みながらも、曲として破綻しない。これは初期プログレッシヴ・ロック由来の構成力と、ポップ・バンドとしての整理された感覚が共存しているためである。「Jamboree」は、Split Enzの変人性を祝祭的に表現した楽曲と言える。

10. Another Great Divide

アルバムのラストを飾る「Another Great Divide」は、『Dizrythmia』の締めくくりにふさわしい、分裂、隔たり、別れを感じさせる楽曲である。タイトルの「Great Divide」は、大きな分断、越えがたい隔たりを意味する。ここに「Another」が付くことで、分断が一度きりではなく、繰り返されるものとして示されている。

本作は、バンドの転換期に作られたアルバムである。Phil Juddの離脱、Neil Finnの加入、初期の演劇的アートロックからポップ・ロックへの移行という背景を考えると、このタイトルは非常に象徴的に響く。バンドは一つの時代を終え、新しい段階へ向かおうとしている。その境界線が、この曲に重ねられているように感じられる。

サウンドは、アルバムの中でも比較的感情的な広がりを持つ。派手に盛り上がるというより、どこか遠くを見つめるような響きがある。Split Enzの音楽には、奇妙さやユーモアだけでなく、深いメランコリーが常に存在している。この曲は、そのメランコリーをアルバムの最後に残す。

歌詞のテーマは、人と人の間に生まれる距離、理解できないまま終わる関係、あるいは時代や場所の隔たりである。Split Enzはニュージーランドから英国へ進出したバンドであり、地理的にも文化的にも「隔たり」を経験していた。そうした感覚も、この曲の背景として読むことができる。

「Another Great Divide」は、アルバム全体の不安定なリズムと心理的なズレを、静かな余韻としてまとめる楽曲である。明確な解決を与えるのではなく、隔たりを抱えたまま終わる。その終わり方は、Split Enzが次の時代へ向かう直前の、過渡期ならではの緊張をよく表している。

総評

『Dizrythmia』は、Split Enzのキャリアにおいて非常に重要な位置を占めるアルバムである。初期の演劇的で複雑なアートロックの個性を残しながら、後年のポップな成功へ向かう道筋を示した作品であり、バンドが変化のただ中にいたことが音楽そのものに刻まれている。

本作の魅力は、整理されすぎていないところにある。『True Colours』以降のSplit Enzに見られるような、明快なニューウェイヴ・ポップとしての完成度とは異なり、『Dizrythmia』にはまだ不規則な動き、奇妙な余白、演劇的な身振りが多く残っている。しかし、その不安定さこそがタイトル通りの「不整脈」として機能している。曲はしばしば予想外の方向へ進み、感情は素直に表現されず、明るいメロディの裏に皮肉や孤独が潜んでいる。

Tim Finnは本作において、バンドの中心的なソングライター/表現者として強い存在感を示している。彼の書く楽曲は、単なるポップ・ソングではなく、人物描写、言葉遊び、心理的な屈折を含んでいる。一方で、Neil Finnの加入は、後のバンドの方向性を決定づける重要な布石となった。Neilのメロディ感覚は本作ではまだ全面的に開花していないが、Split Enzがより明快で国際的なポップ・バンドへ変化していく可能性を示している。

音楽史的に見ると、『Dizrythmia』は1970年代アートロックと1980年代ニューウェイヴの橋渡しとして興味深い作品である。プログレッシヴ・ロックの複雑さは残っているが、長大な曲や大仰な構築美よりも、短く癖のあるポップ・ソングへ関心が向かっている。この方向性は、XTC、Sparks、Talking Heads、10ccなど、知的でひねくれたポップを展開したアーティストたちとも接点を持つ。

また、ニュージーランド/オーストラリア圏のロック史においても、本作は重要である。Split Enzは、英米のロック中心史から少し離れた場所で独自の感性を育てたバンドであり、その後のオセアニア発ポップ・ロックの国際的展開にもつながる存在だった。Neil Finnが後にCrowded Houseで世界的な評価を得ることを考えると、『Dizrythmia』はその前史としても聴くことができる。

日本のリスナーにとって本作は、即効性のある名曲集というより、癖のあるポップ・センスを味わうアルバムである。分かりやすいメロディを求めるなら「My Mistake」が入口になるが、アルバム全体の本質は、そこからさらに奥にある奇妙な曲展開や皮肉な歌詞にある。XTC、Sparks、Roxy Music、初期10cc、あるいはニューウェイヴ期のひねくれたポップを好むリスナーには特に相性がよい。

総じて『Dizrythmia』は、Split Enzが過去の奇抜なアートロックを背負いながら、新しいポップ・バンドへ変化し始めた瞬間を捉えた作品である。完成された代表作というより、変化の途中にあるからこそ魅力的なアルバムであり、その不均衡さ、不整脈のようなリズム、笑いと不安の混在が、今なお独自の輝きを放っている。

おすすめアルバム

1. Split Enz『True Colours』

Split Enzがニューウェイヴ・ポップとして大きく成功した代表作。『Dizrythmia』にあった奇妙なポップ感覚が、より整理され、鮮やかなメロディとシンセサイザー中心のサウンドへ発展している。「I Got You」を含む本作は、Split Enzの一般的な入口としても重要である。

2. Split Enz『Mental Notes』

初期Split Enzの演劇的でプログレッシヴな個性を知るための重要作。『Dizrythmia』よりも複雑で奇怪な構成が目立ち、Phil Judd在籍時のアートロック色が濃い。『Dizrythmia』の背景にあるバンドの原点を理解するうえで欠かせない。

3. XTC『Drums and Wires』

ポストパンク/ニューウェイヴ期の知的でひねくれたポップを代表する作品。変則的なリズム、鋭いギター、皮肉な歌詞、ポップなメロディの組み合わせは、Split Enzの『Dizrythmia』と共通する感覚を持つ。アートロックからニューウェイヴへの移行を理解するうえでも関連性が高い。

4. Sparks『Kimono My House』

演劇的なヴォーカル、ひねくれたポップ構成、ユーモアと毒気を併せ持つ楽曲で知られるSparksの代表作。Split Enzの芝居がかった表現や風変わりなメロディ感覚と強く響き合う。一般的なロック・バンドの枠から外れたポップ表現を味わえる作品である。

5. Crowded House『Crowded House』

Neil Finnが後に結成したCrowded Houseのデビュー作。Split Enz時代の奇妙さは抑えられ、より普遍的で美しいギター・ポップへと発展している。『Dizrythmia』に含まれていたメロディ志向が、どのように洗練されていったかを確認できる関連作である。

PR
アルバムレビュー
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました