アルバムレビュー:Thunderbox by Humble Pie

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

Spotifyジャケット画像

発売日: 1974年2月**
ジャンル: ハードロック、ブルースロック、R&B、ブギーロック


“便器”のフタを開けたら、泥と熱気と笑いが詰まっていた——Humble Pie流、過剰と雑多のロック美学

『Thunderbox』は、Humble Pieが1974年にリリースした通算7作目のスタジオ・アルバム。
アルバムタイトルの“Thunderbox”とは、イギリスのスラングで「野外便所」を意味する――つまり、本作は下ネタとユーモアで幕を開けている
だが、そのタイトルとは裏腹に、ここにはHumble Pieが積み重ねてきた黒いグルーヴと熱気の集大成がある。

前作『Eat It』に続く形式で、カバーとオリジナルが混在。
マリオットのソウル志向はさらに色濃く、ブラック・ミュージックとハードロックの融合がより自然に、肉体的に響いている
そして何より、このアルバムは“演奏していて楽しい”ことがビンビンに伝わる。
下品で猥雑で、でもどこか高貴なロックンロールの在り方が、ここにはあるのだ。


全曲レビュー

1. Thunderbox

タイトなリズム、絡みつくようなリフ、炸裂するコーラス。
アルバムの導入として完璧な、ファンキーで泥臭いタイトルチューン
グルーヴは腰に来て、シャウトは喉に刺さる。

2. Groovin’ with Jesus

The Violinairesのゴスペル曲を大胆にカバー。
イエスと一緒にグルーヴする”という神と音楽の一体感を、熱っぽくもどこか笑いを含んだテンションで描く。

3. I Can’t Stand the Rain

Ann Peeblesのソウル・クラシックをマリオットが“咆哮”で再解釈。
雨を恨む女のバラードが、英国白人ロッカーの喉でここまでブルージーになるとは驚き。

4. Anna (Go to Him)

アーサー・アレクサンダーのR&B曲。
The Beatlesも取り上げたが、Humble Pie版はよりスワンピーで情熱的な“別れの説得”として響く。

5. No Way

リズムの切れ味が光るミッドテンポのロック。
サウンドの抜けとドライヴ感が、70年代後半のR&Bロックを先取りしているような質感

6. Rally with Ali

ブギー・インスト風ナンバー。
ドラムとギターのかけ合いがロックンロールの“肉体性”を全面に押し出す
これはライヴで聴きたかった一曲。


7. Don’t Worry, Be Happy

同名のボビー・マクファーリンとは無関係。
皮肉と希望が同居した“どうにかなるさ”のロック版応援歌
ザラついたサウンドの中に、どこか牧歌的な安らぎも。

8. Ninety-Nine Pounds

Ann Peeblesのカバー再び。
“たった99ポンドの女が男を支配する”という内容が、マリオットのヴォーカルで強烈に昇華される。
ブラック・ミュージックへの愛がにじむ熱唱。

9. Every Single Day

数少ない本作のしっとり系。
朝の光を感じさせるような、心地よいアコースティック・ナンバーで、アルバムに美しい緩急をもたらす。

10. No Money Down

チャック・ベリー作。
ブギーとロックンロールの原型を、重心の低いヘヴィサウンドで再構築したようなカバー

11. Drift Away

ドビー・グレイの名バラードをラストに。
音楽そのものへの愛と、逃避の美学をロックで語るような締めくくり
The Blackberriesのコーラスが加わり、まるでゴスペルのような祝福でアルバムは終わる。


総評

『Thunderbox』は、ソウル、ファンク、ゴスペル、ブギー、ブルース——そのすべてをロックの言葉で語った“雑多の美学”の結晶である。
それは粗野で、不恰好で、過剰で、でもなぜかものすごく人間的で、楽しくて、温かい
ロックが“グルーヴ”と“笑い”を忘れなかった最後の瞬間かもしれない。

スティーヴ・マリオットはこの作品で、もはや“ヴォーカリスト”を超えて“叫ぶ楽器”となっている。
そしてバンドは、それを支えるどころか、一緒に“火を噴く”ことを選んだ。
Thunderbox=野外便所というスラングを掲げてここまでやるバンドが他にいるだろうか。
これぞ“ブリティッシュ・ロックのアメリカ解釈”のひとつの極北である。


おすすめアルバム

  • The Black Crowes – The Southern Harmony and Musical Companion
     スワンプロックとソウルの混交。Humble Pieの影響が色濃く出た90年代作品。
  • Ann Peebles – I Can’t Stand the Rain
     原曲の持つソウルの美しさを体感したいならこちらはマスト。
  • Faces – Ooh La La
     英国らしい泥酔感と陽気さの交差点。『Thunderbox』との共通項多数。
  • Delaney & Bonnie – Motel Shot
     ルーツ音楽の集大成的セッション。Humble Pieと共鳴する“泥くさい美”。
  • Little FeatFeats Don’t Fail Me Now
     ファンク、スワンプ、ソウルの洗練。雑多さとグルーヴが同居する世界。

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