発売日: 2020年6月12日
ジャンル: ジャズ、ブルース、ソウル、フォーク、ゴスペル
Pick Me Up Off the Floorは、ノラ・ジョーンズがさらに幅広い音楽性と深いメッセージを込めて作り上げたアルバムである。前作のDay Breaksに続き、ジャズをベースにしながらも、ブルース、ソウル、ゴスペルなどの多様なジャンルが取り入れられ、特に人生の浮き沈みや、絶望からの再生をテーマにした深みのある歌詞が特徴的だ。元々はバラバラにリリースされたシングル曲を集めて制作されたが、全体を通じて統一感があり、どこか祈りのような安らぎと、ノラが持つ包容力のあるボーカルがリスナーの心に響く。繊細なピアノと落ち着いたアレンジが、彼女の成熟した音楽性を見事に表現している。
各曲解説
- How I Weep
詩的な歌詞とピアノが絡み合い、喪失と悲しみを表現した一曲。ノラの柔らかなボーカルが、内面の痛みを繊細に伝える。弦楽器の美しいアレンジが、まるで泣いているかのように響き、心に残るオープニングトラック。 - Flame Twin
ジャズとブルースの要素が融合した、ミステリアスな雰囲気の楽曲。デュアルな存在としての「ツイン」をテーマに、ノラの低く艶やかな声が、二面性や内なる葛藤を表現している。控えめながらも印象的なギターリフが楽曲に彩りを添えている。 - Hurts to Be Alone
切なくも穏やかなメロディが印象的で、孤独の痛みが歌詞に滲んでいる。ゆったりとしたリズムとノラの温かいボーカルが、寂しさを感じさせると同時に、静かな安らぎをもたらしている。 - Heartbroken, Day After
シンプルなピアノの旋律が流れる中、失恋後の虚無感と哀しみを歌い上げる。ノラの控えめな歌声が、かえってその痛みをリアルに表現しており、リスナーの心に深く染み入る。 - Say No More
ゴスペルの影響が色濃い一曲で、力強いピアノとコーラスが曲を盛り上げている。困難に直面したときの決意を表す歌詞と、ノラの情熱的なボーカルが、リスナーに励ましを届けてくれる。 - This Life
淡々としながらも哀愁漂うトーンで、人生の儚さや後悔をテーマにしている。シンプルなギターとピアノのアレンジが、ノラの歌声を引き立て、静かな深みを持つ楽曲に仕上がっている。 - To Live
ピアノとシンセサイザーが重なり、穏やかながらも力強いサウンドが特徴。困難を乗り越え生きることの大切さを歌い、ノラのボーカルが希望と癒しを感じさせる。 - I’m Alive
ジェフ・トゥイーディとの共作で、シンプルながらも力強いメッセージが込められた楽曲。現代の社会情勢や自己の存在についての思索が歌詞に反映され、ミニマルなサウンドがノラの声の力強さを引き立てている。 - Were You Watching?
幻想的なピアノと控えめなリズムが、どこか夢のような雰囲気を醸し出す。疑問と感謝が混じり合った歌詞が印象的で、ノラの柔らかいボーカルが楽曲全体に神秘的な美しさを与えている。 - Stumble on My Way
ジャジーでリズミカルな曲調が、日々の試練と向き合う姿を表現。スウィングするメロディとノラの温かい歌声が、日常の些細な喜びを讃えている。 - Heaven Above
アルバムのラストを飾るゴスペル調の曲で、救済と希望をテーマにした内容。壮大なアレンジとノラの祈るようなボーカルが、聴く者の心に深い安らぎをもたらす。
アルバム総評
Pick Me Up Off the Floorは、ノラ・ジョーンズの深みを増した音楽性と、彼女自身の成長が反映された作品である。ジャズやブルースの影響を保ちつつ、人生の哀歓や再生をテーマにした楽曲が並び、アルバム全体に祈りと癒しのムードが漂っている。悲しみや孤独を抱えながらも再び立ち上がる強さが歌詞やメロディに込められており、ノラの包み込むようなボーカルがリスナーを温かく励ましてくれる。この作品は、彼女のキャリアにおける成熟を感じさせ、リスナーにとって心の支えとなるような一枚として、長く愛され続けるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Jeff Tweedy – Warm
ジェフ・トゥイーディによる内省的でソウルフルなアルバム。シンプルでありながらも深い歌詞と温かいサウンドが、ノラ・ジョーンズのアルバムと共鳴する。
Alicia Keys – Here
アリシア・キーズのソウルフルな作品で、ゴスペルやジャズの影響を感じるメロディと深いメッセージが特徴。ノラのファンにとっても響く一枚。
Patty Griffin – Servant of Love
シンガーソングライター、パティ・グリフィンのアルバムで、ブルースやフォークの要素が溶け込んだ楽曲が並ぶ。内省的なテーマが多く、ノラのファンにもおすすめ。
Leon Bridges – Good Thing
レオン・ブリッジズのソウルフルな作品で、ジャズやブルースの要素が随所に散りばめられている。ノラのように洗練されたサウンドと温かみを求めるリスナーにおすすめ。
Norah Jones – Day Breaks
ノラ・ジョーンズのジャズ回帰が見られるアルバムで、ピアノを中心に据えたサウンドが特徴。Pick Me Up Off the Floorが好きなリスナーにとって、次に手に取りたい一枚だ。
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