参加者
- Sophie Bennett(ソフィー・ベネット): ロンドンを拠点に、ブリットポップとポストパンク、アートロックに詳しい音楽評論家。特に音楽の社会的影響について造詣が深く、The Cureのようなゴシックロックバンドの文化的な影響にも詳しい。
- David Richardson(デイビッド・リチャードソン): ロンドン在住のクラシックロックとハードロック評論家で、アナログレコードのコレクターでもある。70年代から活躍するベテランで、The Cureの初期の成功をリアルタイムで目撃してきた経験を持つ。
インタビュアー
- Interviewer: 音楽の裏話やエピソードを掘り下げ、知られざるバンドの一面に迫ることを得意とする。
The Cureが築いたゴシックロックの世界と、謎に包まれたエピソードたち
Interviewer: 今日はThe Cureの知られざるエピソードについてお二人に伺いたいと思います。デビューから40年以上経ち、彼らはゴシックロックのアイコンとして君臨していますが、その裏にはどんなストーリーがあるのでしょうか?まずはお二人がThe Cureと初めて関わった思い出から教えていただけますか?
Sophie: 私が初めてThe Cureを聴いたのは、1982年の「Pornography」でした。まだ若かった頃で、その頃はマンチェスターの友人が貸してくれたんですよね。あの暗い雰囲気とロバート・スミスの独特な歌声にすぐに引き込まれました。当時、ポストパンクの流れの中で、The Cureは単なる「暗いバンド」ではなく、表現として非常に独自の世界観を持っていて。私にとって、彼らは音楽以上に「思想」に近いものがあったのを覚えています。
David: 私はロンドンで活動する音楽雑誌の編集者として、1979年のデビューアルバム「Three Imaginary Boys」がリリースされたときに初めて彼らに触れました。それまでのパンクとは違う、まるで影のある絵画のような、ねじれたポップが印象的で。The Cureはパンクのエネルギーを保持しつつも、そのダークな表現で早くから注目されていましたね。ロバート・スミスは若くしてもすでに他のバンドとは一線を画すカリスマ性があったんです。
Robert Smithの音楽スタイルの形成秘話
Interviewer: ロバート・スミスといえば、歌詞や音楽性に非常に独特な色がありますよね。彼のスタイルがどのようにして形成されたのか、知っているエピソードがあれば教えていただけますか?
Sophie: ロバート・スミスの音楽的ルーツには、子供時代に家族で聴いていたクラシック音楽と、彼が思春期に出会ったデヴィッド・ボウイやニコ、そしてサイケデリックロックが大きく影響しているんですよ。彼は学生時代から詩や小説を書いていたらしく、文学的な表現を音楽に落とし込むのがとても得意で。初期のアルバムではそうした詩的な要素がかなり強調されていました。
David: それに加えて、彼がティーンエイジャーの頃に体験した孤独や不安が、The Cureのテーマに深く影響していますね。あるインタビューでロバートは、「音楽がなければ自分は消えてしまいそうだった」と語っています。実際、音楽を通じて彼自身の心の闇を癒していたという話もあります。学校では孤独で、いわゆるアウトサイダー的な存在だったんです。だからこそ、彼の歌詞にはそんな「居場所のない人たち」への共感が溢れているんでしょう。
Sophie: 特に「Pornography」や「Faith」などのアルバムには、当時の彼の精神的な葛藤が色濃く反映されています。彼は音楽を通して自分の内面をさらけ出すことが唯一の表現方法だったのかもしれません。
“Disintegration”とバンド内の緊張感
Interviewer: 1989年の名盤「Disintegration」についてはどうでしょう?あの作品はThe Cureのキャリアにとっても非常に重要な作品とされていますが、その制作過程での裏話などあればぜひ教えてください。
David: 「Disintegration」の制作時期はまさにバンドが内外で緊張に包まれていた時期です。ロバートが30歳を迎えるにあたって、自分自身の人生やキャリアについて深く考えるようになっていたことが背景にあります。それがプレッシャーとなり、制作過程で彼がメンバーにかなり厳しい態度を取ることもあったようです。実は当時のベーシスト、サイモン・ギャラップとは一時的に険悪な関係にまで発展してしまったことも有名です。
Sophie: そうですね、でもその緊張感が逆に「Disintegration」をあのような深い感情の込められた作品に仕上げたとも言われています。ロバートはこのアルバムを「自分のキャリアをかけた作品」として作り上げ、当時の彼にとって唯一の表現の場だったのでしょう。「Pictures of You」や「Lovesong」といった楽曲には、彼が愛や孤独、失意といった普遍的なテーマを美しく表現している一方で、音楽自体は彼の心の叫びそのものでした。
David: そしてその結果として「Disintegration」は、今でも多くのファンに愛される傑作アルバムとなりましたね。個人的には、このアルバムでロバートが徹底して追求した「孤独感」が、The Cureのスタイルを永遠のものにしたと感じます。
バンド内の友情と葛藤
Interviewer: The Cureはメンバーがしばしば入れ替わっていますが、それにもいくつか興味深いエピソードがあると聞いています。
Sophie: 例えば、サイモン・ギャラップとロバート・スミスの関係ですね。彼らは若い頃から一緒に音楽をやってきた友人ですが、特に1982年頃に一度バンドを離れたサイモンが戻ってきたエピソードが印象的です。彼らは一度大喧嘩してしまい、ライブ中に舞台を降りてしまったんです。その時の確執が原因でしばらく離れていましたが、時間が経ち、再びお互いの必要性を感じて和解しました。
David: ロバートとサイモンの友情は長年続いていて、The Cureのサウンドにも大きく影響しています。時には険悪な時期もあったようですが、互いに音楽的な支えとして戻ってきた。実は、サイモンが戻るまでの期間はロバートが特に精神的に辛い時期だったとも言われているんですよ。
Sophie: そうですね、ロバート自身も「サイモンがいないと自分の音楽は成立しない」と語っていたほどです。このエピソードは、The Cureの音楽が単なるバンド活動ではなく、深い人間関係に基づいていることを示していますね。
The Cureの音楽とゴシックカルチャー
Interviewer: さて、The Cureといえばゴシックカルチャーの象徴的なバンドでもありますが、彼らは自分たちを「ゴシックバンド」として定義しているわけではありませんよね。その点についてのエピソードはありますか
?
David: ロバート・スミスは「ゴシック」というレッテルを貼られることに最初は少し抵抗があったようですね。彼にとってThe Cureの音楽は、自分自身の感情の投影であり、特定のジャンルに収められることを望んでいなかったんです。彼が以前「音楽は感情のエクスプレッションであり、特定のジャンルにとらわれる必要はない」と話していたのを覚えています。
Sophie: 確かに、The Cureのファンがゴシックカルチャーに属することが多いのは事実ですが、それはThe Cureの音楽が内包するテーマがゴシック的であったからです。実際、ロバートは「自分たちがゴシックバンドだと思ったことは一度もない」と明言していますよね。The Cureの音楽には、人間の深い感情があり、それが多くのファンに「ゴシック」として受け止められたのだと思います。
音楽ビジネスに対するスタンス
Interviewer: 最後に、The Cureの音楽ビジネスに対する姿勢についても触れておきたいと思います。彼らはメインストリームへの妥協をしないバンドとしても知られていますが、それにまつわるエピソードはありますか?
David: The Cureは商業的な成功を求めずに、自分たちの音楽性を守り続けてきた数少ないバンドの一つです。特に「Disintegration」が成功を収めた後でも、彼らは自分たちのスタイルを変えることなく、独自の道を貫いてきましたね。例えば、1990年代のMTV全盛期にも、彼らはテレビ出演やミュージックビデオの制作に関して、非常に選択的でした。商業的な露出が必ずしも彼らの目的ではなかったんです。
Sophie: ロバート・スミスは一貫して「自分の音楽を妥協したくない」という思いがあったと語っています。それが彼の美学であり、ファンにとってもThe Cureが一つの「象徴」として存在する理由かもしれません。商業的な成功に走るのではなく、自分たちの信念を貫き通すことがファンとの絆を強固なものにしてきたのでしょう。
まとめ
Interviewer: 今日の対談で、The Cureがただの音楽バンドではなく、深い友情や信念に基づいて活動していることが分かりましたね。彼らが表現し続けている「孤独」や「感情の解放」は、多くのファンにとっても共感できるテーマであり続けています。皆さんはThe Cureの音楽にどのような想いを抱いていますか?
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