Rock ‘n’ Roll Star by Oasis(1994)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Rock ‘n’ Roll Star」は、Oasisのデビュー・アルバム『Definitely Maybe』(1994年)のオープニング・トラックであり、そのタイトル通り“ロックンロール・スターになる”という夢と野心、そしてそれに伴う開き直りと誇りが炸裂する代表曲である。

この楽曲のメッセージは至って明快だ。自分はロックンロール・スターになる、誰がなんと言おうと、自分の人生は自分で決める——そんな確固たる意思と反骨精神が、たった一行「Tonight I’m a rock ‘n’ roll star(今夜、俺はロックンロール・スターなんだ)」に凝縮されている。

単なる自己肯定ではなく、社会や周囲に対する無言の抵抗、あるいは自分自身への宣誓でもあるこのフレーズは、Oasisというバンドのアイデンティティそのものであり、当時の若者の心を熱く突き動かした。

2. 歌詞のバックグラウンド

ノエル・ギャラガーがこの曲を作った背景には、自身が育った労働者階級のマンチェスターでの日々と、そこから抜け出したいという強烈な願望がある。

この曲はOasisにとって最初のアルバムの冒頭を飾るにふさわしく、バンドの哲学、つまり「夢を見ろ、現実なんてぶっ壊せ」というロックンロールの本質を、真正面からぶつけるような楽曲である。

リアム・ギャラガーのボーカルはこの曲で絶頂を迎えたかのような迫力を見せており、彼の持つアティチュードとノエルのリリックがここで完全に融合している。この曲がなければ、Oasisの物語もまた始まっていなかったかもしれない。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下は「Rock ‘n’ Roll Star」の代表的な一節。引用元は Genius Lyrics。

I live my life in the city
俺は街で生きている

There’s no easy way out
抜け出す方法なんて簡単には見つからない

The day’s moving just too fast for me
毎日が、俺にはあまりにも早すぎる

I need some time in the sunshine
太陽の下で過ごす時間が必要だ

I’ve gotta slow it right down
ちょっと立ち止まりたいんだ

The day’s moving just too fast for me
毎日が、俺には速すぎる

All I know is you can find your own way out
確かなのは、自分で出口を見つけるしかないってことさ

‘Cause when you’re standing at the station
駅のホームに立っているとき

In need of education in the rain
雨の中で、学ぶべきことがあると思ったら

Made no preparation for my reputation once again
俺は、評判のための準備なんて一切してないぜ

The train comes, I don’t know its destination
列車が来ても、行き先なんて知らない

It’s a one-way ticket to a madman situation
これは狂気への片道切符さ

And I don’t know what it is I’m afraid of
自分でも何が怖いのか分からないけど

But I don’t know, I don’t know
でも分からない、それでもいいんだ

Tonight I’m a rock ‘n’ roll star
今夜、俺はロックンロール・スターだ

この最後のラインは、何度も繰り返され、聴く者の胸に強烈に響き渡る。まさにOasis流のマニフェストである。

4. 歌詞の考察

「Rock ‘n’ Roll Star」は、ロックという文化の中でも最も純粋な“夢と現実の衝突”を描いた楽曲である。

この曲に登場する主人公は、自分の人生に閉塞感を抱えている。しかしその一方で、「夢を見ている限り、今夜だけはロックスターになれる」と強く信じている。それは逃避ではなく、自己肯定であり、ある種の宣戦布告でもある。

「列車の行き先は知らない」「狂気への片道切符」など、象徴的なイメージが並ぶが、それらは不確かな未来、そしてその中で自分を見失わずに進もうとする若者の心の声でもある。

重要なのは、彼が“本物の”ロックスターになったからこの歌を歌っているのではなく、“ロックスターになりたい”という願望そのものが、彼をロックスターにしているということだ。この精神性こそが、Oasisの核であり、ブリットポップの熱狂を支えた原動力なのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Cigarettes & Alcohol by Oasis
    労働者階級の現実と快楽主義を描いた攻撃的なロック・ナンバー。

  • Columbia by Oasis
    同様に反復的なリフで構成された楽曲で、ライブでの爆発力も絶大。

  • Rocks by Primal Scream
    “ロックで生きていく”という美学を体現した骨太なロックナンバー。

  • Loaded by Primal Scream
    ヒッピー精神とクラブ文化を融合させた自由の賛歌。「人生を楽しむだけだ」というメッセージが共鳴する。

  • I Wanna Be Adored by The Stone Roses
    崇拝されたいという欲望を美学として昇華したマッドチェスターの名曲。

6. “夢は現実を凌駕する”——Oasisの原点と哲学

「Rock ‘n’ Roll Star」は、Oasisのすべての始まりであり、その後のすべての音楽的探求の原点とも言える楽曲である。

この曲が訴えかけるのは、“夢は現実を超える”という希望と信念だ。実際にOasisは、まさにこの精神のままにイギリスから世界へと羽ばたいていった。ノエル・ギャラガーが描いたこの宣言は、リアムの声によって世界中の若者たちの魂を揺さぶる叫びとなった。

どこまでも粗削りで、どこまでも真っ直ぐ。
「今夜、俺はロックンロール・スターなんだ」という一言に、Oasisのすべてが詰まっている。

それは誇張でも妄想でもない。ただ一晩限りの真実。
そして、その一夜を信じ抜くこと——それこそが、Oasisのマスタープランだったのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました