発売日: 1994年6月13日
ジャンル: シューゲイザー、ドリームポップ、オルタナティブロック
Splitは、イギリスのシューゲイザー・バンド、ラッシュ（Lush）がリリースした2作目のフルアルバムで、彼らの音楽性がさらに深化し、感情的な豊かさが加わった作品である。1994年にリリースされた本作は、シューゲイザーとドリームポップの要素が融合し、より個人的で内省的な歌詞や複雑なアレンジが特徴的だ。Lushのメンバー、メロディ・リネハンとエマ・アンダーソンは、このアルバムで自身の感情や関係性、人生の儚さをテーマに据えており、サウンドとリリックが調和した美しい作品となっている。
前作Spookyでは、プロデューサーにCocteau Twinsのロビン・ガスリーを迎えてドリーミーなサウンドが強調されたが、Splitではプロデューサーがマイク・ヘッジズとエンジニアのアル・クレイトンに変わり、サウンドのバリエーションが増し、彼らの音楽がより大胆で多面的に進化している。「Desire Lines」や「Hypocrite」といった楽曲は、Lushの特徴である浮遊感のあるギターと美しいボーカルが際立ち、より直感的で感情的な一面が色濃く反映されている。Splitは、バンドの持つ儚くも力強い魅力が詰まったアルバムであり、シューゲイザーというジャンルを超えた芸術性が感じられる。
トラックごとの解説
1. Light from a Dead Star
アルバムの幕開けを飾る美しいトラックで、暗くメランコリックな雰囲気が漂う。Lushの幻想的なギターサウンドと、繊細で儚いボーカルが聴く者を夢の中に誘うようだ。
2. Kiss Chase
アップテンポでポップな要素が感じられる楽曲。リズミカルなドラムとキャッチーなメロディが印象的で、Lushの軽快な一面が楽しめる。
3. Blackout
シューゲイザーらしい重厚なギターサウンドが前面に出た楽曲で、内向的な歌詞が心に響く。夢と現実の狭間にいるかのような幻想的な雰囲気が魅力。
4. Hypocrite
エネルギッシュで攻撃的なトラックで、シングルカットもされた一曲。Lushの中でも特に力強いナンバーで、ボーカルのエモーショナルな表現が際立っている。
5. Lovelife
ポップなメロディが心地よい楽曲で、軽快なリズムが特徴的。恋愛をテーマにした歌詞が、甘く切ない気持ちを引き立てている。
6. Desire Lines
アルバム中でも特に長尺で、リリカルで壮大な一曲。ギターリフが繰り返される中で徐々に高揚感が増し、メロディとハーモニーが美しく融合している。
7. The Invisible Man
ミステリアスで暗いトーンが漂うトラックで、リリックに内省的なテーマが反映されている。メロディとボーカルの調和が、幽玄な雰囲気を生み出している。
8. Undertow
ドラマチックな展開が特徴の楽曲で、シューゲイザーらしいギターレイヤーとエモーショナルな歌詞が融合。Lushの音楽における感情的な深みが感じられる。
9. Never-Never
儚さとメランコリックな美しさが漂う一曲で、Lushのボーカルのハーモニーが際立つ。柔らかいギターサウンドが、静かな安らぎを与えるようだ。
10. Lit Up
リズミカルでキャッチーなトラックで、軽快なビートがアルバムに明るいアクセントを加えている。Lushの持つポップな一面が楽しめる。
11. Starlust
アルバムの中で最も情緒的なトラックの一つで、切ないメロディが美しい。リネハンとアンダーソンのボーカルが感情豊かに響き、心に染み入るような一曲。
12. When I Die
アルバムのラストを飾る、静かで美しいフィナーレ。リリックには人生の儚さや別れが描かれ、Lushの音楽における深い感情が凝縮されている。
アルバム総評
Splitは、Lushの音楽性がさらに深化し、シューゲイザーという枠を超えた感情豊かな作品に仕上がっている。メロディ・リネハンとエマ・アンダーソンの繊細なボーカルと複雑なギターワークが調和し、彼らが抱える内面的な葛藤やノスタルジーが全編に漂っている。幻想的でありながらも、時には力強いサウンドが響き、Lushが持つ多様な音楽性が詰まったアルバムだ。シューゲイザーとドリームポップの要素が見事に融合したSplitは、リスナーの感情に訴えかける名盤であり、90年代オルタナティブロックの重要な作品として今なお愛され続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Souvlaki by Slowdive
シューゲイザーの名作で、メランコリックなメロディとアンビエントな雰囲気が特徴。Splitの持つ感情的な深みを気に入ったリスナーにおすすめ。
Loveless by My Bloody Valentine
シューゲイザーの代表作で、重厚なギターサウンドと浮遊感が楽しめる。Lushの幻想的なサウンドと響き合う一枚。
Ferment by Catherine Wheel
シューゲイザーとオルタナティブロックが融合した作品で、力強いギターとエモーショナルなメロディが特徴。Splitのファンにおすすめ。
Heaven or Las Vegas by Cocteau Twins
ドリームポップの傑作で、Lushに影響を与えた美しいサウンドが楽しめる。浮遊感と幻想的なボーカルが共通している。
Nowhere by Ride
シューゲイザーの名盤で、Lushと同時期に活躍したバンド。疾走感と重厚なサウンドが楽しめる、シューゲイザーのクラシック。
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