Everything That ’Cha Do (Will Come Back to You) by Wet Willie(1971)楽曲解説

 

1. 歌詞の概要

「Everything That ’Cha Do (Will Come Back to You)」は、Wet Willieが1971年にリリースしたセカンド・アルバム『Wet Willie II』に収録された楽曲で、バンド初期のソウルフルでファンキーなサザン・ロック路線を象徴するナンバーである。

タイトルの通り、この曲は因果応報をテーマにしたもので、「人に与えたものはいつか自分に返ってくる」という、人生の真理をシンプルかつストレートに語るメッセージ・ソングとなっている。とはいえ説教臭さはなく、軽快なグルーヴと熱量あるボーカルにより、まるで街角の会話のように親しみやすいトーンで伝えられるのが魅力だ。

歌詞には恋愛、人間関係、日々のふるまいすべてに通じる普遍的なメッセージが込められており、シンプルな繰り返しの中に、道徳と音楽が絶妙なバランスで共存している。そう、この曲は「正しく生きよう」と押し付けるのではなく、「人生ってそういうもんだよな」とリズムに乗りながら自然に納得させられてしまうような、知恵の詩なのである。

2. 歌詞のバックグラウンド

Wet Willieは1970年にカプリコーン・レコードからデビューし、The Allman Brothers BandやMarshall Tucker Bandと並び、サザン・ロック黎明期の主要アクトのひとつとして評価されていた。しかし彼らの音楽性は、ブルース、ファンク、ソウルに強く根差しており、典型的なギター主導型ハードロックとは異なる、より“黒いグルーヴ”を志向したバンドだった。

この「Everything That ’Cha Do」は、まさにそうした南部的リズム感とモータウン的アティチュードが見事に融合された楽曲である。ジミー・ホールのエネルギッシュでエモーショナルなヴォーカルは、教会でのゴスペル体験を思わせる力強さを持ち、バンドがただのロックンロール・グループではなく、“南部のソウル・メッセンジャー”でもあることを証明している。

この曲はシングルとしては大ヒットしなかったものの、ファンや批評家の間では初期Wet Willieの中で最も完成度の高いメッセージ・ナンバーとして評価され、現在でもライヴのレパートリーとして演奏され続けている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Everything that you do
君がやったことは、何でも

Gonna come back to you
いずれ君のもとへ返ってくるんだ

Everything that ‘cha say
君が言った言葉も全部

Gonna come back some day
いつか必ず戻ってくる

You better be careful
気をつけたほうがいい

Of the things that you do
君がやることすべてに

‘Cause everything you do
だって全部返ってくるんだから

Will come back to you
それが君の人生に返ってくるんだ

(参照元:Lyrics.com – Everything That ’Cha Do)

この繰り返しの多いリリックは、まるで呪文のようにじわじわと心に染み込んでくる。“言葉も、行動も、全部返ってくる”という人生の法則を、グルーヴと共に刻み込むような構造だ。

4. 歌詞の考察

この曲が持つメッセージの本質は、まさに**“カルマ”の感覚**である。だがここで歌われる因果応報は、東洋的な哲学というよりは、もっと生活に密着した“南部の知恵”のような感覚だ。誰かを裏切れば、いつか自分も裏切られる。優しくすれば、優しさが返ってくる。シンプルだけど、時代を超えて真理として機能するメッセージである。

また、“You better be careful”という呼びかけには、説教臭さではなく親しみと警告が同居するトーンがある。まるで年上の友人や兄貴分が、「お前、大丈夫か?」と肩を叩きながら教えてくれるような、人間味あふれる警句なのだ。

さらに注目すべきは、このメッセージを**“音楽”という手段で伝えていることそのものが、この曲の最大の美徳**である点だ。説教や啓発本ではなく、3分半のソウルフルなナンバーとして「行動の結果は必ず返ってくる」と語られることで、聴く者は自然とその言葉を受け入れ、自分の人生と重ね始める

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Respect Yourself by The Staple Singers
     自己尊重と他者への態度が結びついていることを語る、南部ゴスペルの魂。
  • Love and Happiness by Al Green
     愛や幸せといった目に見えない価値をリズムで語る、ソウルの金字塔。
  • Shining Star by Earth, Wind & Fire
     ポジティブな行動が未来を切り開くというメッセージを持つファンク・クラシック。
  • A Change is Gonna Come by Sam Cooke
     時代を越えた信念と希望の歌。“変化”は必ず訪れるという力強い言葉。
  • Smiling Faces Sometimes by The Undisputed Truth
     言葉と行動の不一致が持つ危うさをソウルフルに描いたディープなメッセージ・ソング。

6. “リズムで語る人生の法則”

「Everything That ’Cha Do」は、ただのロック・ナンバーではない。それは人生に対する誠実さ、他者との関係性、そして行動の責任を“音”で伝える南部の説法である。けれどそこには、堅苦しさや説教臭さはまるでない。むしろ、踊れるほどに軽快なグルーヴと、人間の弱さを許容する包容力が満ちている。

Wet Willieはこの曲を通して、「人生においては、全部自分に返ってくる」という言葉を、**皮肉ではなく、信頼の言葉として提示している。**誰かに良くすれば、世界が少し優しくなる。誰かを傷つければ、いずれその痛みを知る。そんな当たり前だけれど難しい感覚を、音楽というフィルターを通して、自然と聴き手の心に届けてくれる。

だからこそ、この曲は今聴いてもまったく色褪せない。
音楽とは、時に“人を正す”ための最も優しい方法になり得る。
Wet Willieはそのことを、ソウルフルなこの小品で静かに証明してみせたのだ。

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