アルバムレビュー:Bad Company by Bad Company

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発売日: 1974年6月
ジャンル: ハードロック、ブルースロック、アリーナロック


荒野に響く男たちのバラッド——英国ハードロックの原型を刻んだ無骨なるデビュー作

Bad Company』は、1974年にリリースされたイギリスのロックバンドBad Companyのデビュー・アルバムであり、ブルースロックの荒々しさとメロディアスな抒情性を絶妙に融合させた、ハードロック史に残る金字塔的作品である。
Freeのヴォーカル、ポール・ロジャースを中心に、Mott the Hoopleのミック・ラルフス、King Crimsonのボズ・バレル、そして元Freeのサイモン・カークという英国ロックの精鋭たちが集結したこのバンドは、結成時から注目を浴びていた。

レーベルはレッド・ツェッペリンのメンバーが設立したSwan Song Records。
そのサウンドは、過剰な装飾を削ぎ落とし、骨太なグルーヴと深いソウルに満ちた“男のロック”
洗練とは無縁の、しかし時代を超えて共鳴する“原型的”な力強さがこのアルバムには宿っている。


全曲レビュー

1. Can’t Get Enough

イントロのリフで一気に引き込まれる、アリーナロックの先駆的アンセム
シンプルながらもキャッチーで、ミック・ラルフスのギターが光る。ポール・ロジャースのソウルフルなヴォーカルが全開。

2. Rock Steady

グルーヴ重視のスロウ・ロック。
ブルースの深みとロックの剛健さが同居し、バンドの演奏力が如実に伝わってくるナンバー。夜のドライヴに似合う一曲。

3. Ready for Love

Mott the Hoople時代のラルフス作の再演。
ここではロジャースの哀感あるヴォーカルによって完全に昇華され、壮大なラブバラードとして生まれ変わっている。ギターソロも味わい深い。

4. Don’t Let Me Down

エモーショナルなメロディが胸を打つ、隠れた名バラード
ラルフスとロジャースの共作による、繊細なリリックと重厚な演奏が印象的な一曲。

5. Bad Company

バンド名を冠した名曲にして、“アウトローの詩”としてロック史に残る名演。
ピアノとギターの寂寥感、ロジャースの語るような歌声が、古きアメリカ西部の空気感と孤独を染み込ませる。

6. The Way I Choose

静と動のコントラストが美しいバラード。
“選ぶ自由”と“譲れぬ誇り”をテーマにした、哲学的かつパーソナルな歌詞が心に残る。リズム隊の表情も豊か。

7. Movin’ On

疾走感あるロックンロール。
ツアーバンドとしての自負がにじむ歌詞と、軽快ながらしっかりとした演奏が好バランス。シングルとしても人気が高い。

8. Seagull

アコースティックギターによるフォーキーな締めくくり。
“カモメ”というシンボルを通して、自由、孤独、旅の終わりを静かに描いた名曲。美しく余韻を残すフィナーレである。


総評

『Bad Company』は、1970年代ハードロックの“エッセンス”をもっとも純粋な形で凝縮したアルバムである。
ギターと声、リズムと感情だけで勝負するそのストイックさは、過剰に飾り立てられた時代の中で異彩を放った。

とりわけポール・ロジャースの歌声は、ソウルとロック、そしてブルースの美しい接点として、今なお聴き手の胸を打つ。
まさに“悪党たち”の音ではなく、誠実で不器用な男たちの詩が詰まった一枚。
このアルバムが“永遠に愛されるハードロックの古典”として語り継がれる理由が、そこにはある。


おすすめアルバム

  • Free『Fire and Water
     ポール・ロジャースのルーツ。ミニマルでソウルフルなハードロックの名盤。
  • Led Zeppelin『Presence』
     装飾を削いだ硬派な演奏とブルース感覚が共通する。
  • Humble Pie『Smokin’』
     スティーヴ・マリオットのソウルフルな歌とバンド感が響き合う一枚。
  • Faces『A Nod Is as Good as a Wink… To a Blind Horse』
     荒々しさとメロディアスさの絶妙なブレンド。
  • Lynyrd Skynyrd『Pronounced ’Lĕh-’nérd ’Skin-’nérd』
     南部ロックの叙情と荒々しさ。Bad Companyのアメリカ的側面と重なる部分も多い。

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