発売日: 1983年9月
ジャンル: ポストパンク、ファンク、ニューウェーブ、シンセポップ
Hardは、Gang of Fourが4枚目のスタジオアルバムとしてリリースした作品であり、バンドがポストパンクのサウンドから大きく脱却し、ニューウェーブやシンセポップの要素を大胆に取り入れた意欲作である。Hardでは、これまでの硬質なギターと政治的メッセージの強いスタイルに比べ、より洗練されたシンセサイザーやダンサブルなリズムが中心となり、ファンクとポップの要素が一層色濃く反映されている。ギターは抑えめで、エレクトロニックなビートとベースラインが際立つサウンドに変化し、80年代らしいサウンドメイクが強調された。
アルバムのリリース当時、バンドの方向性に対する意見は賛否両論で、初期のファンにとっては違和感を抱かせる一枚でもあった。しかし、このアルバムでバンドはポップやシンセサウンドと自らの特徴を融合させようとした試みが感じられ、新たな音楽の可能性を模索した作品として注目に値する。
トラックごとの解説
1. Is It Love
アルバムの幕開けを飾る、メロディアスでリズミカルなポップソング。キャッチーなメロディとシンセサイザーが際立ち、恋愛の複雑さを描写している。シングルとしてもリリースされ、アルバムの中でも特にポップなナンバー。
2. A Man with a Good Car
重いシンセサウンドとファンキーなベースラインが特徴のトラックで、物質主義を皮肉った内容。ギターは控えめで、リズムとビートが中心に据えられている。
3. Woman Town
ダンサブルなビートとシンセサウンドが融合した一曲で、都市と女性のイメージがテーマ。アンディ・ギルのギターは最小限に抑えられ、エレクトロニックなアプローチが新鮮な印象を与える。
4. Arabic
エキゾチックなシンセフレーズが際立つトラックで、ミステリアスなムードが漂う。ギターが独特のリフを刻みながら、ファンキーなベースラインがリズムを支えている。
5. A Pound of Flesh
軽快なテンポで進行する曲で、シンプルながらも緊張感のあるリズムが特徴。商業主義や消費社会に対する皮肉が込められており、独特のメロディラインが印象に残る。
6. Sleepwalker
抑制されたギターとシンセが絡むダークなトラックで、夢遊病的な雰囲気を演出している。メロディはシンプルだが、不安定なムードが漂い、曲全体を支配している。
7. I Fled
シンセポップとファンクが融合したナンバーで、都会生活からの逃避をテーマにしている。キャッチーなリズムが特徴的で、エレクトロニックなアプローチが新鮮。
8. Silver Lining
アップテンポでポジティブなムードを持つ一曲で、希望と救いをテーマにしている。シンセが曲全体を彩り、これまでのGang of Fourとは一味違ったポップな一面が表れている。
9. Woman Town (Reprise)
アルバムを締めくくるリプライズトラックで、エレクトロニックなビートが強調され、余韻を残すエンディングとして機能している。オリジナルバージョンよりもシンプルで、エモーショナルな締めくくりとなっている。
アルバム総評
Hardは、Gang of Fourがこれまでのポストパンクからシンセサウンドやニューウェーブ、ダンスミュージックの要素へとシフトした実験的な作品である。ギターを抑え、シンセとファンキーなリズムが中心となり、ダンサブルでポップなアプローチが試みられている。デビュー当初の鋭い社会批判やパンク的なアグレッシブさがやや影を潜め、キャッチーでメロディアスな方向へと進んだことから、バンドの方向転換を象徴する一枚となっている。賛否は分かれたが、Hardは80年代のポップサウンドとバンドのアイデンティティを模索する過程が伺える、興味深いアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Cupid & Psyche 85 by Scritti Politti
シンセポップとニューウェーブを融合させた名盤で、キャッチーなメロディと知的な歌詞が魅力。Hardのポップな要素が好きな人におすすめ。
Power, Corruption & Lies by New Order
エレクトロポップとニューウェーブの名作で、シンセサウンドとリズムのバランスが絶妙。Gang of Fourの新しい音楽性を気に入ったリスナーに合う一枚。
The Lexicon of Love by ABC
華やかなシンセサウンドとポップなメロディが楽しめるアルバムで、ニューウェーブとダンスの融合が魅力。
Let’s Dance by David Bowie
ファンクとポップが融合したダンサブルなサウンドが特徴の一枚。Hardのポップでリズミカルな面が好きな人にぴったり。
Nightclubbing by Grace Jones
ファンク、ダブ、ニューウェーブの融合が楽しめる一枚で、シンセやエレクトロサウンドの影響が色濃い。80年代のエレクトロサウンドに興味があるリスナーにおすすめ。
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