発売日: 1979年9月
ジャンル: ポストパンク、ファンク、ニューウェーブ
Entertainment!は、イギリスのポストパンクバンド、Gang of Fourのデビューアルバムであり、1979年のリリース以来、ポストパンクシーンに革命をもたらした重要な作品として知られている。このアルバムは、政治的なメッセージや社会批判を鋭く表現しつつ、ファンクとパンクロックを組み合わせた斬新なサウンドが特徴である。ジョン・キングのクールで抑制の効いたボーカルと、アンディ・ギルの切れ味鋭いギターリフが中心となり、シンプルながらもエッジの効いた楽曲がアルバム全体を支配している。
このアルバムは、当時のイギリス社会における資本主義や政治腐敗、恋愛に潜む権力構造などをテーマにし、挑発的な歌詞と攻撃的なサウンドでリスナーに訴えかけている。「Damaged Goods」や「At Home He’s a Tourist」などの代表曲は、物事の本質を捉える鋭い視点と冷静な批評性で、今なお多くのリスナーに強烈なインパクトを与え続けている。Entertainment!は、ポストパンクの金字塔とも言える作品であり、後世のバンドにも多大な影響を与えた。
トラックごとの解説
1. Ether
アルバムの幕開けを飾るナンバーで、ギルの不協和音が際立つギターリフが印象的。植民地主義を批判する内容で、テンションの高いビートとメッセージ性の強い歌詞が特徴的。
2. Natural’s Not in It
資本主義の消費文化と自己満足を批判した楽曲で、キャッチーなベースラインと緊張感のあるギターが特徴。ジョン・キングの冷静なボーカルが、消費社会への冷ややかな視線を強調している。
3. Not Great Men
歴史に残るのは偉人だけではないとするテーマを掲げた曲。力強いリズムとタイトなギターリフが印象的で、シンプルながらも深いメッセージが込められている。
4. Damaged Goods
アルバムを代表するシングルで、恋愛の虚しさや消費される感情をテーマにしている。ファンキーなベースとカッティングギターが融合し、シャープでエネルギッシュなサウンドがリスナーを引き込む。
5. Return the Gift
シンプルで冷徹なギターリフが特徴のトラックで、贈り物や商業主義に対する風刺が含まれている。リズムセクションが曲全体を支え、冷ややかで洗練された印象を与える。
6. Guns Before Butter
政治的な権力と経済を批判した楽曲で、攻撃的な歌詞が際立つ。ギルのギターが曲全体を鋭く彩り、ダークで不穏な雰囲気が漂う。
7. I Found That Essence Rare
キャッチーなリズムとシニカルな歌詞が特徴のトラックで、メディアや大衆文化に対する皮肉が込められている。スピード感とエネルギーに満ちたサウンドが印象的で、ライブでも人気の一曲。
8. Glass
現代社会における不透明な権力関係を描いた曲。リズムが中心に据えられ、ギターとベースが複雑に絡み合うサウンドが、緊張感と不安を演出している。
9. Contract
恋愛とビジネスの関係を重ねた鋭い視点が歌われている楽曲で、商業主義に染まる人間関係をテーマにしている。抑制されたボーカルが、物事の冷酷な現実を際立たせている。
10. At Home He’s a Tourist
アルバムの中でも特にポップでありながら、強烈なメッセージ性を持つトラック。家庭での疎外感を描き、社会への冷徹な観察が歌詞に込められている。
11. 5.45
テレビメディアが暴力や戦争を消費する様子を皮肉った曲。スローテンポで進行しながら、迫力のあるギターリフが曲全体を支配し、暗く陰鬱なムードを漂わせる。
12. Anthrax
アルバムのクライマックスを飾る実験的なナンバーで、恋愛と病的な依存をテーマにした内容。無機質なベースラインと不協和音のギターが不安感を増幅し、詩的で不気味な終幕となっている。
アルバム総評
Entertainment!は、社会や政治に対する批判的な視点と、ポストパンク特有のエネルギッシュで鋭利なサウンドが融合したアルバムであり、1970年代の終わりに新しい音楽の地平を切り開いた作品である。シンプルながらもファンキーなリズムと、ギターのカッティングが織り成す独特なサウンドは、リスナーに強烈なインパクトを与える。歌詞には、資本主義や消費文化、権力といったテーマが緻密に織り込まれ、シニカルな視点が随所に感じられる。Entertainment!は、社会的メッセージと音楽性が完璧に調和したアルバムであり、ポストパンクの名盤として今なお色あせることのない影響力を持っている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Pink Flag by Wire
ミニマルで鋭いサウンドとシニカルな歌詞が特徴のポストパンクの名盤。Entertainment!のファンにとっても満足感が高い一枚。
The Modern Dance by Pere Ubu
実験的なサウンドと社会批判的なテーマが融合した作品で、ポストパンクの枠を超えた革新性が楽しめる。
Y by The Pop Group
ファンクとパンクを大胆に融合した実験的なサウンドが特徴で、Gang of Fourの政治的・音楽的視点と通じるものがある。
Unknown Pleasures by Joy Division
ダークで内省的なサウンドとポストパンクの美学が詰まった作品。エネルギーと批判精神が共通し、Entertainment!ファンにも響くはず。
Cut by The Slits
パンクとレゲエの融合を試みたアルバムで、社会への鋭い視点と斬新なサウンドが特徴。ポストパンクの枠を広げた名盤。
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