Eyes Wide Open by Sabrina Carpenter(2015)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Eyes Wide Open」は、Sabrina Carpenterが2015年にリリースしたデビューアルバム『Eyes Wide Open』のタイトル・トラックであり、当時まだ16歳だった彼女が初めて世に放った“自己表現の宣言”ともいえる楽曲である。

この曲は、自分の人生に対する意志と問いかけがテーマとなっており、まだ未知の世界に飛び込もうとする少女が「目を見開いて、この世界のすべてを見てやろう」という決意を固めていく過程が描かれている。歌詞は全体を通して内省的で、他人に合わせて生きることに疑問を持ち、これから自分だけの道を探していくという自己発見の物語が紡がれる。

タイトルの「Eyes Wide Open(目を見開いて)」という言葉は、現実を直視する勇気や、夢に立ち向かう強さを象徴するメタファーであり、彼女自身の人生に対する心の姿勢をまっすぐに表現している。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Eyes Wide Open」は、Sabrina Carpenterのデビューアルバムのリードトラックとして、彼女のパーソナリティと芸術的方向性を明確に打ち出す意図を持って書かれた曲である。ソングライターにはAudra Mae、Jerrod Bettis、そしてSabrina本人も参加しており、若干15歳〜16歳とは思えない成熟した感性と表現力が発揮されている。

当時Sabrinaはディズニーチャンネル『Girl Meets World』で女優としても活躍しており、アメリカのティーン世代にとって“清純で理想的な女の子”というイメージを抱かれていた。しかしこの楽曲では、ただ与えられた道を歩くのではなく、自分の内面と対話しながら、葛藤と希望を抱えて未来へと進もうとする等身大の姿が語られており、“アイドル”から“アーティスト”への第一歩としての意志が強く込められている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Everybody loves to tell me
I was born an old soul

誰もが私に言うの
「君は生まれつき大人びてるね」って

But I keep my eyes wide open
Bless this ground unbroken

でも私は目を大きく見開いてる
まだ誰にも踏みならされていない、この道を祝福しながら

I’m learning to run with my eyes wide open
私は、目を開いたまま走る方法を学んでる

I see the world through my eyes wide open
自分の目で、この世界を見つめている

引用元:Genius Lyrics – Eyes Wide Open

このフレーズたちは、まだ確固たる“自分”が定まらない年頃の中で、世界に対する好奇心と不安を両手で抱えながらも、自分で選び、学び、感じようとする“まなざし”を描き出している。大人が押し付ける価値観ではなく、自らの視点で世界を切り取っていくという宣言に近い。

4. 歌詞の考察

「Eyes Wide Open」は、10代の不安定な時期において、他人の期待や社会の規範のなかで揺れながらも、“自分の目で見て、自分の足で歩きたい”という若者の真摯な叫びを描いている。

「私は生まれつき大人っぽいって言われる」と語る冒頭からは、期待される“理想像”に無理やり収まろうとする息苦しさが感じられる。しかしそれに甘んじるのではなく、「自分で見て、自分で感じて決める」という強い主体性が、サビに向かう中で力強く浮かび上がっていく。まるで、“従順な少女”の仮面を静かに外していくかのような過程が、音とともに進行していくのだ。

また、「目を見開いて走る」という言い回しは、未知への恐れを超えて突き進もうとする勇気のメタファーとして印象的である。本来、走るときは目を閉じたくなるものだが、あえて見開いて前を向くという選択に、未来を切り拓こうとする希望と痛みが滲んでいる。

この楽曲は、自己確立への第一歩として、すべての若者、あるいは“変化を求めるすべての人”に向けた、優しくも力強いアンセムなのである。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Skyscraper by Demi Lovato
    壊れてもなお立ち上がる強さと、自己の回復をテーマにした心震えるバラード。
  • Fight Song by Rachel Platten
    誰にも左右されない“自分だけの戦い”を描いた自己肯定の代表作。
  • Roar by Katy Perry
    自己主張と覚醒を力強く表現したポップ・アンセム。特に「声をあげること」に共通点がある。
  • Invisible by Hunter Hayes
    誰にも理解されないと感じる若者の孤独を、前向きなエネルギーに変えていく応援歌。

6. 自分の“まなざし”で世界を見つめる少女の物語

「Eyes Wide Open」は、Sabrina Carpenterにとって、芸能界という道のなかで“与えられた役割”を脱ぎ捨て、「私は私で生きていく」という意思を音楽で示した最初の楽曲である。

その決意は、過剰な反抗ではなく、静かで強い自己肯定に満ちている。誰かに決められた未来を歩くのではなく、まだ何者でもない自分が、“自分の目で見たもの”を信じて進んでいく――その物語が、ひとつひとつの言葉とメロディに丁寧に織り込まれている。

この曲が10代のSabrinaによって書かれたことは驚異的であり、同時にこの世代特有の“揺れながらも進む力”を見事に体現している。

私たちが立ち止まったとき、不安に負けそうになったとき、この曲がそっと囁いてくれる。
「大丈夫、目を見開いてさえいれば、きっと自分の道が見える」と。
それは、Sabrina Carpenterというアーティストが最初に差し出した、小さくてまっすぐな“信じる力”なのである。

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