- 発売日: 1983年5月30日
- ジャンル: ロック、ポップ、ニューウェーブ
Too Low for Zeroは、エルトン・ジョンが1983年にリリースした17枚目のスタジオアルバムであり、80年代における彼の代表作のひとつとされている。このアルバムは、エルトンとバーニー・トーピンのコンビによる楽曲制作が全面的に復活した作品であり、彼らが70年代に築いた黄金のパートナーシップが蘇った。Too Low for Zeroは、エルトンにとって初のデジタル録音によるアルバムでもあり、ニューウェーブやシンセポップの影響が取り入れられ、時代のサウンドとマッチした現代的なアプローチが特徴的である。
シングル「I’m Still Standing」や「I Guess That’s Why They Call It the Blues」などの楽曲は、エルトンのキャリアにおいても特に人気が高く、アルバム全体を通してキャッチーでありながらも深みのあるメロディが際立っている。また、エルトン・ジョン・バンドのメンバーが全員参加し、彼らの息の合った演奏もこのアルバムの魅力のひとつである。
トラック解説
1. Cold as Christmas (In the Middle of the Year)
アルバムの幕開けを飾るバラードで、愛が冷え切ってしまった夫婦の関係を描いている。南国での冬という皮肉的な設定が歌詞に反映され、エルトンの優しいピアノが曲に切なさを与えている。シンプルなアレンジが印象的で、エルトンのエモーショナルなボーカルが心に響く。
2. I’m Still Standing
エルトンの代表曲のひとつで、明るく前向きなメッセージが込められたアップテンポのロックナンバー。80年代のシンセサウンドとダンサブルなビートが特徴で、自信と再生のテーマが感じられる。エネルギッシュな演奏が、エルトンの不屈の精神を象徴するかのようだ。
3. Too Low for Zero
アルバムのタイトル曲で、シンセサイザーが効果的に使われたニューウェーブ風のナンバー。孤独や無力感をテーマにしており、深いメッセージ性がある。独特なリズムとミステリアスな雰囲気が、80年代のエルトンの新しいサウンドを象徴している。
4. Religion
軽快なビートとキャッチーなメロディが特徴の曲で、宗教的なテーマに対する風刺的な視点が歌われている。ポップで明るいサウンドの中に、トーピンらしい皮肉が散りばめられており、ポップな中にも奥深さが感じられる。
5. I Guess That’s Why They Call It the Blues
エルトンのバラードの中でも特に人気の高い名曲で、別れの切なさが込められている。スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加し、曲に温かみを加えている。トーピンの詩がエルトンのソウルフルなボーカルと美しく融合し、感動的なバラードとして愛されている。
6. Crystal
シンセサイザーが前面に出たエレクトロニックな楽曲。エルトンとバンドのメンバーがクールなサウンドでシンプルに演奏し、80年代らしいテクノポップ風の雰囲気を持っている。幻想的な歌詞とミステリアスなメロディが新鮮である。
7. Kiss the Bride
ダンサブルなビートが楽しいロックナンバー。結婚式をテーマにした曲で、エルトンの陽気でエネルギッシュな一面が光っている。シンセサイザーとギターのリフが印象的で、ライブでも盛り上がる楽しい曲である。
8. Whipping Boy
アップテンポなロックナンバーで、リズミカルなピアノが曲全体を引き立てている。人間関係における葛藤や犠牲について描かれており、エルトンのダイナミックなピアノが楽曲に躍動感を与えている。
9. Saint
ニューウェーブ風のミディアムテンポのトラック。シンセとギターが絡み合い、独特なムードを演出している。宗教や信仰に対する探求的なテーマが歌われており、アルバムの中でも異彩を放つ曲。
10. One More Arrow
アルバムを締めくくるエモーショナルなバラードで、人生の終わりに立つ人を描いた曲。エルトンのボーカルとシンプルなアレンジが、静かな感動を呼び起こし、アルバムのフィナーレにふさわしい余韻を残している。
アルバム総評
Too Low for Zeroは、エルトン・ジョンが80年代において再び勢いを取り戻したアルバムであり、デジタルサウンドとニューウェーブの影響が感じられる作品である。バーニー・トーピンとのコンビが完全復活し、エルトンの個性と時代のサウンドが見事に融合した。シングルヒットの「I’m Still Standing」や「I Guess That’s Why They Call It the Blues」など、彼の代表曲も数多く収録されており、エルトンの幅広い音楽性とバンドメンバーの卓越した演奏が楽しめる。本作はエルトン・ジョンの新たな黄金期を予感させる、充実した作品となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Let’s Dance by David Bowie
同じく80年代のサウンドを象徴するアルバムで、ダンサブルでファンキーな要素が共通。シンセとロックの融合が楽しめる。 - True Blue by Madonna
キャッチーなメロディとシンセサウンドが特徴で、ポップでありながらも深いメッセージ性がある。エルトンの80年代サウンドが好きな人におすすめ。 - So by Peter Gabriel
ダイナミックなアレンジとデジタルサウンドが際立つ一枚で、80年代のプロダクションが好きなリスナーにぴったり。 - Tug of War by Paul McCartney
ポップでキャッチーなメロディが楽しめる作品で、ソウルフルなバラードも収録。エルトンのバラードが好きな人におすすめ。 - Genesis by Genesis
シンセとギターを駆使した80年代ロックの名盤。時代のサウンドとロックが融合しており、エルトンのデジタルサウンドを好むリスナーに響くだろう。
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