- 発売日: 1999年10月26日
- ジャンル: プログレッシブメタル、コンセプトアルバム
Dream Theaterの5作目となるアルバムMetropolis Pt. 2: Scenes from a Memoryは、彼らのキャリアにおいて最も評価の高い作品の一つであり、プログレッシブメタルの金字塔とも言えるコンセプトアルバムである。Images and Words収録の「Metropolis—Part I: ‘The Miracle and the Sleeper’」の続編として制作され、壮大で複雑なストーリーが展開される。本作では、夢と記憶の中で、過去世の恋愛と殺人の謎を解き明かしていく主人公ニコラスの物語が描かれており、その緻密でドラマチックな構成が多くのリスナーを魅了している。
アルバム全体は、各トラックがシームレスに繋がるオペラのような構成となっており、バンドの高度なテクニックと表現力が際立つ。ジョン・ペトルーシの卓越したギター、ジョーダン・ルーデスの華麗なキーボード、マイク・ポートノイのダイナミックなドラムが見事に絡み合い、Dream Theaterならではの壮大な音世界を作り上げている。物語性と音楽性が融合したこの作品は、聴く者を濃密なサウンドトリップへと誘う。
トラック解説
1. Regression
アルバムの序章で、静かなアコースティックギターとラブリエの柔らかなボーカルが印象的。物語の幕開けとして、セラピストがニコラスを前世療法に導くシーンが描かれ、静謐な雰囲気が漂う。
2. Overture 1928
インストゥルメンタルで、アルバム全体のテーマを象徴するメロディが織り交ぜられている。バンドの技巧がふんだんに発揮され、物語の舞台である1928年の雰囲気が表現されている。疾走感あふれるリズムとメロディが、この後の展開への期待を高める。
3. Strange Déjà Vu
ニコラスが過去世の記憶に触れる場面を描く楽曲で、ラブリエのエモーショナルなボーカルが際立つ。リフの繰り返しと複雑なリズムが、記憶の断片が蘇る様子を表現し、バンドのエネルギーが一気に放たれる。
4. Through My Words
短いバラードで、静かなピアノとラブリエの優しいボーカルが物語に落ち着きを与える。過去の愛情と悲劇がニコラスに明確に現れる瞬間で、静謐な感情が伝わってくる。
5. Fatal Tragedy
ミステリアスな雰囲気を持つ一曲で、リズムの変化が絶妙。物語の中で、ニコラスが悲劇的な出来事の真相に迫る過程が描かれている。中盤のインストパートでは、ペトルーシとルーデスの掛け合いが圧巻で、スリリングな展開がリスナーを引き込む。
6. Beyond This Life
10分を超える壮大な曲で、殺人事件の真相が明らかになる場面を描く。リズムの急激な変化とスリリングなギターパートが、物語の緊迫感を表現している。歌詞には新聞記事のような視点が取り入れられ、物語をよりリアルに感じさせる。
7. Through Her Eyes
美しいバラードで、女性の視点から悲劇を回想する内容。スローテンポで展開され、ラブリエの感情的なボーカルとピアノが、悲劇に対する哀愁を漂わせる。感傷的でありながらも、希望の光が差し込むような楽曲。
8. Home
オリエンタルなメロディが印象的な一曲で、過去の愛と欲望が交錯するシーンを描く。ペトルーシのギターが妖艶な雰囲気を醸し出し、サスペンスと情熱が交わる。力強いリフと大胆な構成が、物語の緊張感を一層高める。
9. The Dance of Eternity
Dream Theaterの中でも最も複雑なインストゥルメンタルの一曲。リズムやメロディの変化が激しく、メンバー全員の技術が存分に発揮される。プログレッシブメタルの真髄が詰まっており、変拍子とテンポチェンジが目まぐるしく展開する圧巻のトラック。
10. One Last Time
ニコラスが過去世での悲劇を受け入れるシーンを描く一曲で、メロディが美しく流れる。歌詞には悲劇に対する決意と理解が込められ、感情の波が伝わってくる。ラブリエのボーカルが感傷的に響く。
11. The Spirit Carries On
アルバムの中でも特に感動的な一曲で、ラブリエのボーカルが穏やかに魂の永遠を歌い上げる。死後の安らぎと再生についてのテーマが込められており、サビのコーラスが特に心に響く。温かみのあるメロディと希望が感じられる。
12. Finally Free
フィナーレを飾る壮大な楽曲で、物語の結末が描かれる。ニコラスが全ての真実に辿り着き、新たな気持ちで未来へ向かう決意が歌われる。エネルギッシュなインストパートと緊張感のあるリフが絡み合い、ドラマティックなエンディングを迎える。
アルバム総評
Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memoryは、Dream Theaterの音楽性と物語性が見事に融合した傑作であり、プログレッシブメタルの最高峰として広く評価されている。複雑な楽曲構成と高度なテクニックが駆使されていながらも、ストーリーに沿ったエモーショナルな展開が印象的で、ドラマチックな要素がリスナーを引き込む。物語と音楽がシームレスに交わり、聴く者に映像を見ているかのような感覚を与えるコンセプトアルバムの代表作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- The Wall by Pink Floyd
コンセプトアルバムとして、ドラマティックなストーリーとサウンドが展開される名盤。夢と現実の狭間を行き来するテーマが、Metropolis Pt. 2に共鳴する。 - Operation: Mindcrime by Queensrÿche
サスペンスフルなストーリーとプログレッシブな楽曲が融合し、Metropolis Pt. 2に通じる構成の巧みさがある。物語性が強く、アルバム全体で一つの映画のように楽しめる。 - Scenes from a Memory by Fates Warning
プログレッシブロックとメタルの要素が融合した、叙情的かつドラマティックなアルバム。複雑な構成とテーマの深さがMetropolis Pt. 2ファンに響くだろう。 - Awake by Dream Theater
より重厚でダークなサウンドが特徴のDream Theaterの作品で、エモーショナルなテーマとテクニカルな楽曲が詰まっている。 - Images and Words by Dream Theater
本作の前作にあたるアルバムで、ラブリエ加入後の新しいサウンドが確立された。Metropolis Pt. 2への序章となる「Metropolis—Part I」も収録されている。
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