発売日: 1975年5月
ジャンル: ハードロック、ブギーロック、アリーナロック
四輪駆動で突き進む、BTOの力強き中期傑作
カナダのロックバンド、Bachman-Turner Overdrive(BTO)が1975年にリリースした4枚目のアルバムFour Wheel Driveは、彼らのハードロック路線をさらに加速させた力作である。
タイトルにある“四輪駆動”はそのままバンドの姿勢を象徴しており、舗装されていない荒野をものともせず突き進む、パワフルなグルーヴとエンジン音のようなリフが響きわたる。
本作は全米トップ5入りを果たし、前作Not Fragileで得た商業的成功をしっかりと受け継ぎつつ、より骨太で重心の低いロックを展開している。
カントリーやブルースの要素を散りばめながらも、都会的な洗練よりは“ロード”と“労働”のロックを貫いた一枚だ。
全曲レビュー
1. Four Wheel Drive
冒頭から重く響くギターリフが、アルバムのトーンを決定づける。
BTOらしいタフなロックンロールで、まさに「四輪駆動」のように泥道でも止まらない推進力を感じさせる。
2. She’s a Devil
ブルース寄りのフレーズと粘りつくようなグルーヴが印象的なナンバー。
悪魔的な女性像をモチーフに、ややサイケデリックな空気も漂わせる。
3. Hey You
本作最大のヒット曲にして、BTOの代表的なアンセム。
Randy BachmanがGuess Who時代のバンドメイト、Burton Cummingsに向けて書いたとされる歌詞は挑発的で、感情の火花が飛び交う。
シンプルで覚えやすいコーラスと、重厚なギターサウンドが融合する。
4. Flat Broke Love
ブギーロック色の濃い、軽快な中にも汗臭さの漂うナンバー。
金もなく、愛も失い、それでも走り続ける男の姿がリアルに描かれる。
5. She’s Keepin’ Time
ドライヴ感あふれるアレンジの中に、恋愛の切なさと執着が混じるミドルテンポ・ロック。
バックビートの効いたドラミングが心地よい推進力を生む。
6. Quick Change Artist
「すぐに姿を変える女」をテーマにしたユーモラスかつ皮肉な曲。
ややファンキーなベースラインと跳ねるリズムが特徴で、アルバムの中では異色の存在感を放つ。
7. Lowland Fling
カントリーテイストが香る、のんびりとした雰囲気のインストゥルメンタル。
タイトルはスコットランドの伝統舞踊“Highland Fling”の逆をなぞるようで、ユーモアもにじむ。
8. Don’t Let the Blues Get You Down
ブルースをテーマにしながらも、聴き手を励ますポジティブなロックナンバー。
重たいギターと軽快なメロディが交差し、まさにBTOらしい“働く者の応援歌”として響く。
総評
Four Wheel Driveは、Not Fragileによって得た成功とスタイルをしっかりと地固めしつつ、BTOの音楽的アイデンティティをより明確に打ち出した作品である。
それは、“飾らないロック”、“労働者のリアル”、“ツアーバスから見える風景”といった、BTOが一貫して描いてきたテーマの深化にほかならない。
時代がプログレやアートロックに傾倒していた中で、BTOは四輪駆動で土煙を上げながら前進した。
その姿勢が、このアルバムにも色濃く刻み込まれている。
聴くたびにタイヤが地面を捉える感覚が伝わる、骨太で信頼性の高いロックアルバムだ。
おすすめアルバム
- ZZ Top – Tres Hombres
南部の泥臭さとロックンロールが融合する、重心の低いサウンドが魅力。 - Ted Nugent – Ted Nugent
BTOと共通するパワフルなギターサウンドとアリーナロックのエネルギーが全開。 - The James Gang – Rides Again
Joe Walsh在籍時の作品で、カントリー色とブルージーなハードロックが絶妙に混ざる。 - 38 Special – Wild-Eyed Southern Boys
南部ロックとアリーナロックの中間に位置する、ドライヴ感あふれるサウンド。 - Mountain – Climbing!
ラフで重厚なブルースロック。BTOと同じく、ギターリフの存在感が主役。
コメント