発売日: 2021年11月19日
ジャンル: ソウル、ポップ、ジャズ
Adeleの4thアルバム『30』は、離婚や母親としての自己発見をテーマに、彼女のこれまでの作品の中で最もパーソナルなアルバムと言える。前作『25』の成熟をさらに深め、複雑な感情と新たな音楽的試みが随所に見られる。ジャズやクラシックの要素も取り入れられ、Adeleの歌声が一層豊かに響く一方、過去の痛みや今後の希望が強く反映されている。特に、母親としての心情や自己の癒しに向けたテーマが、彼女の新しい側面を感じさせる内容だ。感情の深みとサウンドの洗練が、Adeleの音楽的進化を強く印象付けるアルバムだ。
各曲ごとの解説:
- Strangers by Nature
このオープニングトラックは、クラシカルな雰囲気のある弦楽器とジャズの要素を取り入れた、幻想的な一曲だ。Adeleが過去の恋愛や失われた時間を悼むような歌詞で、自分自身に向き合う姿が描かれている。控えめながらも感情の深いボーカルが、曲の儚い雰囲気を引き立てる。 - Easy on Me
アルバムのリードシングルで、シンプルなピアノ伴奏とAdeleの感情的な歌声が際立つバラード。離婚後の自身の心境を反映した歌詞は、人生の選択に対する後悔や自己理解を描いており、Adeleの声が心の深いところに響く。 - My Little Love
母親としてのAdeleの視点が色濃く反映されたこの曲は、息子との対話を通じて、母親としての愛と葛藤を描いている。ジャズの影響を感じさせるアレンジと、彼女の実際の音声メッセージが挿入され、非常にパーソナルなトラックになっている。感情的な重みが強い一曲だ。 - Cry Your Heart Out
リズミカルなビートと軽快なコーラスが特徴的なこの曲は、失恋の痛みからの回復をテーマにしている。曲調は明るいが、歌詞には深い感情が込められており、Adeleのボーカルがそれを巧みに表現している。痛みと希望が同居する楽曲だ。 - Oh My God
モダンなポップサウンドとエネルギッシュなビートが印象的なトラックで、新しい恋愛や自由への渇望をテーマにしている。テンポの速いリズムとAdeleの力強いボーカルが組み合わさり、彼女の新しい側面を感じさせる。 - Can I Get It
アコースティックギターを中心にしたアップテンポなポップソングで、恋愛の駆け引きをテーマにしている。Max MartinとShellbackが手掛けたこの曲は、シンプルでキャッチーなメロディが耳に残り、Adeleの声が軽やかに響く。 - I Drink Wine
この曲は、内省的で哲学的な歌詞が特徴的で、自分の弱さや未熟さを認め、人生の複雑さを受け入れるプロセスを描いている。ピアノと控えめなオーケストラが曲を彩り、Adeleのボーカルが感情の深さを引き立てている。ソウルフルなアレンジが印象的。 - All Night Parking (with Erroll Garner) Interlude
伝説的なジャズピアニスト、Erroll Garnerとのコラボレーションによるジャジーなインタールードで、Adeleが新しい恋愛に対する高揚感を歌っている。軽やかなピアノと彼女の柔らかい歌声が心地よい。 - Woman Like Me
ソウルフルなミディアムテンポのトラックで、終わりの見えた恋愛に対する失望と、自立した女性としての強さを歌っている。Adeleのストレートな歌詞とボーカルが、シンプルなアコースティックギターの伴奏に美しく響く。 - Hold On
Adeleの友人たちへの感謝と支えをテーマにした曲で、困難な時期を乗り越えるための忍耐と希望が描かれている。サビでのコーラスが力強く、彼女の感情が溢れ出すように感じられる。人生の困難に立ち向かう力を与えてくれる一曲だ。 - To Be Loved
ピアノ伴奏とAdeleの圧倒的なボーカルが際立つバラードで、愛を求めることと、それによって傷つくことのリスクを歌っている。感情のピークに達するボーカルが圧巻で、彼女の心の内をさらけ出すような力強い一曲。 - Love Is a Game
アルバムの最後を飾るこの曲は、オールドソウルやジャズの影響を感じさせるレトロなアレンジが特徴的で、愛の複雑さをテーマにしている。壮大なストリングスとAdeleのエモーショナルな歌唱が、アルバムの締めにふさわしいフィナーレを作り上げている。
アルバム総評:
『30』は、Adeleが自己の内面と向き合い、過去の痛みや新たな希望を音楽に昇華した作品である。彼女の成長と成熟が、歌詞やサウンドに顕著に表れており、特にジャズやソウルの要素が新たな深みを与えている。感情の振れ幅が大きい一方で、音楽的にも豊かな表現が広がっており、Adeleの最高傑作のひとつと言える。特に「Easy on Me」や「To Be Loved」といったトラックは、彼女の圧倒的な歌唱力と感情表現を象徴する楽曲だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Love & Hate by Michael Kiwanuka
ソウルフルな歌声と深い感情表現が共通しており、人生の苦悩や希望をテーマにしたリリックがAdeleファンに響くはず。 - Blue by Joni Mitchell
個人的な感情を歌詞に込めた内省的な作品で、Adeleの『30』と同様に、自己探求や愛の複雑さをテーマにしている。 - Melodrama by Lorde
若者の感情や恋愛の苦悩を表現したアルバムで、Adeleのパーソナルな歌詞に共感するリスナーにおすすめ。ポップなアプローチも共通点。 - A Seat at the Table by Solange
感情的で社会的なテーマを描いた作品で、深いリリックとソウルフルなサウンドがAdeleのファンに受け入れられやすい。 - In the Lonely Hour by Sam Smith
切ないバラードと感情的な歌詞がAdeleのスタイルに近く、愛や孤独をテーマにした楽曲が共通している。
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