アルバムレビュー:Crocodiles by Echo & the Bunnymen

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1980年7月18日 / ジャンル:ポストパンク、ニューウェイヴ、ネオ・サイケデリア、インディー・ロック、ゴシック・ロック前夜

概要

Echo & the Bunnymenのデビュー・アルバム『Crocodiles』は、1970年代末のポストパンクの緊張感と、1960年代サイケデリック・ロックの影、そしてリヴァプール特有の湿ったメランコリーが交差した重要作である。1980年に発表された本作は、パンクの直接的な破壊衝動が一段落した後、英国の若いバンドたちが「その先」に何を作るのかを模索していた時代に生まれた。Echo & the Bunnymenは、その問いに対して、荒々しさを保ちながらも、より神秘的で、陰影のあるギター・ロックを提示した。

バンドの中心には、Ian McCullochの鋭くロマンティックなヴォーカル、Will Sergeantの冷たく反響するギター、Les Pattinsonのうねるベース、Pete de Freitasのドラマティックなドラムがある。初期の彼らは、ドラムマシンを使った編成から出発したことでも知られるが、『Crocodiles』では生身のリズム隊が加わったことで、音楽に強い推進力と肉体性が宿っている。特にPete de Freitasのドラムは、単なるビートの維持ではなく、曲に緊迫した起伏を与える重要な役割を担っている。

『Crocodiles』の音楽は、ポストパンクの一部でありながら、同時代のJoy Divisionのような極端な冷却感や、Gang of Fourのような政治的・リズム的な解体とは異なる方向にある。Echo & the Bunnymenの音には、より神話的で、自然の風景を思わせる暗さがある。湿地、夜、森、空、動物、火、影、風。こうしたイメージが、歌詞だけでなくギターの残響やリズムの運動にも染み込んでいる。

アルバム・タイトル『Crocodiles』は、ワニという動物のイメージを通じて、原始性、危険、冷血さ、潜伏する暴力を想起させる。ワニは水面下に身を潜め、突然獲物を襲う生き物である。そのイメージは、本作の音楽性とよく合っている。曲は表面的には比較的コンパクトなギター・ロックでありながら、内部には攻撃性、不安、緊張が潜んでいる。Echo & the Bunnymenの初期サウンドは、叫びすぎず、暴れすぎず、しかし常に何かが噛みつく寸前のような鋭さを持っている。

1980年という時代背景も重要である。英国では、パンク後のバンドが、ニューウェイヴ、ポストパンク、ゴシック、ネオ・サイケデリア、シンセ・ポップなど多様な方向へ分岐していた。The Cureは『Seventeen Seconds』で暗くミニマルな音へ進み、Joy Divisionは『Closer』でポストパンクの深淵を示し、U2は『Boy』で高揚感のあるギター・ロックを提示していた。Echo & the Bunnymenはその中で、リヴァプール的な詩情とサイケデリックな暗さを結びつけ、後の英国インディー・ロックやネオ・サイケデリアに大きな影響を与えるスタイルを作り始めた。

本作のプロダクションは、後年の『Heaven Up Here』や『Ocean Rain』に比べると荒く、若々しい。音はまだ完全には磨かれておらず、ギターはざらつき、リズムは前のめりで、Ian McCullochの声にも青さと傲慢さが同居している。しかし、その未完成さこそが『Crocodiles』の魅力である。ここには、完成された壮大なバンドではなく、暗い夢を抱えた若いバンドが、勢いと直感で音を鳴らしている瞬間が記録されている。

歌詞の面では、明確な物語よりも、断片的なイメージ、対立、孤独、欲望、自己意識が中心となる。Ian McCullochの言葉は、後年さらに詩的・象徴的になっていくが、本作ではまだ鋭く、攻撃的で、時に抽象的である。彼のヴォーカルは、単に歌詞を伝えるための声ではなく、曲全体のドラマを作る楽器として機能している。自信と不安、冷笑とロマンティシズムが声の中で交差する。

『Crocodiles』は、Echo & the Bunnymenのキャリアにおいて、出発点であると同時に、すでに明確な個性を備えた作品である。後の『Heaven Up Here』ではより深く暗い音響へ、『Porcupine』ではさらに複雑で緊張感のあるサウンドへ、『Ocean Rain』ではストリングスを含む壮大なロマンティシズムへと発展する。そのすべての原型が、このデビュー作には含まれている。鋭いギター、疾走するリズム、神秘的なイメージ、Ian McCullochのカリスマ的な声。『Crocodiles』は、1980年代英国ギター・ロックの暗い美学が始まる瞬間を捉えたアルバムである。

全曲レビュー

1. Going Up

オープニング曲「Going Up」は、『Crocodiles』の緊張感と勢いを最初に示す楽曲である。タイトルは「上昇する」「上へ行く」という意味を持つが、その上昇は単純な希望や解放ではない。むしろ、何かに追い立てられるように高みへ向かう、不安定で危険な上昇として響く。アルバム冒頭から、Echo & the Bunnymenは明るいポップ・ロックではなく、影を帯びた前進感を提示する。

サウンドは、ギターの反復、うねるベース、タイトなドラムによって構成されている。Will Sergeantのギターは、ブルース的に太く鳴るのではなく、鋭い線を描くように響く。音の隙間には冷たい空気があり、そこにIan McCullochの声が切り込んでくる。彼の歌唱は若く、少し挑発的で、すでに強い存在感を放っている。

歌詞では、上昇、変化、何かを越えようとする感覚が示される。しかし、それは自己啓発的な前向きさではなく、より切迫したものだ。上へ行くことは、今いる場所から逃れることでもある。Echo & the Bunnymenの音楽には、現実からの逃避と、それを超えるための意志が同時にある。この曲は、その出発点として機能する。

「Going Up」は、アルバム全体の入口として非常に効果的である。暗いが停滞していない。冷たいが生命力がある。ポストパンクの緊張と、後のネオ・サイケデリア的な飛翔感が、この時点ですでに交差している。

2. Stars Are Stars

「Stars Are Stars」は、タイトルからして抽象的で、Echo & the Bunnymenらしいロマンティックな響きを持つ楽曲である。「星は星である」という一見当たり前の言葉には、世界をそのまま受け止めるような冷たさと、同時に天体的な距離感がある。星は美しいが、遠く、手が届かない。そうしたイメージが曲全体に漂っている。

サウンドは、比較的軽快なテンポを持ちながらも、ギターの響きには影がある。Will Sergeantのギターは、コードを厚く鳴らすよりも、空間の中に鋭い模様を描く。ベースは曲を低く支え、ドラムは一定の推進力を保つ。バンドはまだ荒削りだが、その荒さが曲に若い緊張を与えている。

歌詞では、星、視線、距離、自己認識のようなテーマが断片的に現れる。Ian McCullochの歌詞は、明確な物語を語るというより、短いイメージを連ねることで気分を作る。この曲でも、星という言葉は単なる夜空の描写ではなく、人間の孤独や遠さを示す象徴として機能している。

「Stars Are Stars」は、『Crocodiles』の中で比較的ポップな輪郭を持つ曲だが、表面の軽さの奥には冷えたロマンティシズムがある。Echo & the Bunnymenの初期に特有の、若い感傷とポストパンク的な硬さが同居した楽曲である。

3. Pride

「Pride」は、タイトル通り誇り、自尊心、あるいは傲慢さをテーマにした楽曲である。Echo & the Bunnymenの初期作品には、自己を強く打ち出す感覚と、それが崩れそうになる不安が同時に存在している。「Pride」もまた、自分を保つための硬さと、その裏にある脆さを感じさせる。

サウンドは、ギターとリズムが緊張感を保ちながら進む。曲は派手に爆発するのではなく、内側に力を溜め込んだように展開される。Ian McCullochのヴォーカルは、タイトルにふさわしく、やや高圧的で、挑むような響きを持つ。しかし、その声には単なる自信だけでなく、焦りや苛立ちも含まれている。

歌詞では、誇りを持つこと、傷つけられないように自分を硬く保つこと、他者との関係の中で自尊心が揺らぐことが暗示される。Prideは人を支えるものでもあるが、同時に孤立させるものでもある。自分を守るための誇りが、他人との距離を作る。この矛盾が曲の中心にある。

「Pride」は、Echo & the Bunnymenの若い攻撃性をよく示す曲である。パンク的な怒りが直接的な叫びとしてではなく、冷えたギター・ロックの緊張として表現されている。アルバム序盤において、バンドの鋭い自意識を示す重要曲である。

4. Monkeys

「Monkeys」は、タイトルからして動物的で、少し不穏な印象を持つ楽曲である。猿というイメージは、原始性、模倣、本能、人間の滑稽さを連想させる。『Crocodiles』というアルバム自体が動物的なイメージを持っていることを考えると、この曲もまた、人間の中にある野性や不条理を示しているように聴こえる。

サウンドは、前のめりで、ポストパンクらしい硬さを持つ。ギターは鋭く、ベースは低くうねり、ドラムは曲に強い推進力を与える。Echo & the Bunnymenの初期サウンドは、派手なソロや厚い装飾ではなく、各楽器の緊張した配置によって成立している。この曲でも、そのアンサンブルの鋭さが際立つ。

歌詞では、猿のイメージを通じて、人間の愚かさや群れの行動、模倣的な態度が示されているように感じられる。Ian McCullochの言葉は直接的な社会批判というより、軽蔑と観察が混ざった視線として響く。人間を猿として見ることで、文明的な外見の下にある本能的な動きが浮かび上がる。

「Monkeys」は、『Crocodiles』の中でも荒々しく、動物的な側面を担う曲である。バンド名やアルバム名にも通じる、奇妙な生き物の世界がここにはある。Echo & the Bunnymenの初期の毒とユーモアが感じられる楽曲である。

5. Crocodiles

タイトル曲「Crocodiles」は、アルバムの中心的なイメージを担う楽曲である。ワニは、冷血で、静かに潜み、突然襲う生き物である。このイメージは、Echo & the Bunnymenの初期サウンドそのものに近い。表面上は抑制されているが、内部には攻撃性が潜み、いつでも牙をむくような緊張がある。

サウンドは、タイトで切迫している。ギターは鋭く、ベースとドラムは曲を低く前へ押し出す。曲全体には湿った暗さがあり、都市的でありながらどこかジャングルや沼地のような原始的な気配もある。The Bunnymenの音楽が単なる都会的ポストパンクではなく、自然や動物的イメージを含む理由が、この曲にはよく表れている。

歌詞は断片的で、ワニという象徴を通じて、危険、欲望、潜伏する暴力が暗示される。人間関係の中にある捕食性、社会の中で隠れている攻撃性、自己の内側の冷たい部分。そうしたものが「Crocodiles」という言葉に集約されている。Ian McCullochの歌唱も、どこか挑発的で、聴き手を安全な距離に置かない。

「Crocodiles」は、アルバム全体のタイトル曲として非常に重要である。Echo & the Bunnymenが作る暗い世界の中心にある、冷血で鋭い生命感がここにある。若いバンドの荒々しさと、後の神秘的な美学の萌芽が同時に聴こえる楽曲である。

6. Rescue

「Rescue」は、『Crocodiles』を代表する楽曲のひとつであり、Echo & the Bunnymen初期の魅力を最もわかりやすく示す曲である。タイトルは「救助」「救済」を意味し、誰かに助けを求める感覚、あるいは自分自身をどこかから救い出したいという願望が込められている。ポストパンクの鋭さと、ポップなフックが自然に結びついた名曲である。

サウンドは、イントロから非常に印象的で、ギターのリフとリズムが強い推進力を作る。曲は暗いが、同時に開かれている。Will Sergeantのギターは冷たく響きながらも、メロディックな引力を持つ。ベースとドラムはしっかりと曲を支え、Ian McCullochのヴォーカルがその上で切実に響く。

歌詞では、救いを求める声が中心にある。しかし、この救いは宗教的な救済というより、孤独や混乱からの脱出に近い。語り手は誰かに助けてほしいようでありながら、本当に助けが来るとは信じていないようにも聞こえる。この半信半疑の切実さが曲の魅力である。

「Rescue」は、Echo & the Bunnymenが持つロマンティックな側面を明確に示す曲でもある。彼らの音楽は冷たく、鋭いが、その中心には強い感情がある。救われたいという願いを、甘くせず、緊張感のあるギター・ロックとして表現した重要曲である。

7. Villiers Terrace

「Villiers Terrace」は、具体的な地名のようなタイトルを持つ楽曲であり、本作の中でも特に奇妙でサイケデリックな雰囲気が強い。テラス、建物、部屋、そこにいる人々。そうした都市の一角が、夢や幻覚のように歪んで描かれている。Echo & the Bunnymenのリヴァプール的な幻想性がよく表れた曲である。

サウンドは、やや妖しく、揺れるようなリズムとギターが印象的である。単純な疾走感よりも、奇妙な空間性が強い。曲を聴いていると、薄暗い部屋や階段、誰かの声が反響する建物の内部を歩いているような感覚になる。Will Sergeantのギターは、風景を描くように響き、Ian McCullochの声は案内人のようにその空間を進む。

歌詞では、Villiers Terraceという場所にいる人々や出来事が断片的に描かれる。そこは現実の場所でありながら、どこか異界のようにも感じられる。人々は何かを見ているのか、何かに取り憑かれているのか。明確な説明はないが、その曖昧さが曲のサイケデリックな魅力を作っている。

「Villiers Terrace」は、Echo & the Bunnymenが単なるポストパンク・バンドではなく、ネオ・サイケデリア的な想像力を持つバンドであることを示す重要曲である。日常の場所を、薄暗い幻覚の舞台へ変える力がある。

8. Pictures on My Wall

「Pictures on My Wall」は、Echo & the Bunnymenの初期曲として重要な楽曲であり、彼らの暗い美学が簡潔に表れた曲である。タイトルは「壁にかかった絵」を意味し、部屋、記憶、視線、閉じ込められたイメージを連想させる。壁の絵は、過去の記録であり、同時に動かない感情の象徴でもある。

サウンドは、冷たく、反復的で、初期ポストパンクらしい緊張を持つ。曲は派手に展開せず、一定のムードを保ちながら進む。ギターは空間的に響き、ベースは低く支え、ドラムは抑制された推進力を与える。Ian McCullochのヴォーカルは、若く、少し不安定で、それが曲の内向性を強めている。

歌詞では、壁にかかった絵や写真が、過去や記憶、自己の断片として機能しているように読める。部屋の中でそれらを見つめる人物は、外の世界よりも自分の内側に閉じ込められている。壁の絵は美しいかもしれないが、同時に固定された過去でもある。動かないイメージに囲まれた孤独が、この曲には漂っている。

「Pictures on My Wall」は、Echo & the Bunnymenの初期の内省性を示す楽曲である。暗く、簡素で、しかし強い雰囲気を持つ。後の壮大な作品に比べると小さな曲だが、バンドの原点を理解するうえで重要である。

9. All That Jazz

「All That Jazz」は、タイトルに「ジャズ」という言葉が入っているが、音楽的にジャズそのものを演奏しているわけではない。むしろ、「あれこれ」「そういうもの全部」といった慣用的な響きを含み、世の中の雑多さや軽薄さに対する皮肉のようにも聞こえる。Echo & the Bunnymenらしい冷笑的な感覚がある曲である。

サウンドは、勢いがあり、ギターとリズムが鋭く絡み合う。アルバム後半において、再びエネルギーを強める役割を果たしている。バンドはタイトで、演奏には若い攻撃性がある。ポストパンク的な硬さと、ガレージ・ロック的な荒さが同居している。

歌詞では、世の中の騒がしさ、流行、言葉、態度への距離感が感じられる。All that jazzという表現には、何かをまとめて軽く扱うニュアンスがある。Ian McCullochの歌唱には、そうした軽蔑や皮肉が含まれている。世界の雑音を見下しながらも、その中に巻き込まれているような感覚がある。

「All That Jazz」は、アルバムの中でバンドの攻撃的な面を再確認させる楽曲である。サイケデリックな暗さだけでなく、ポストパンクらしい皮肉と鋭さが前面に出ている。

10. Happy Death Men

アルバム本編の最後を飾る「Happy Death Men」は、タイトルからして強烈な矛盾を持つ楽曲である。「幸せな死の男たち」という言葉は、明るさと死、幸福と破滅を結びつけている。Echo & the Bunnymenの初期作品にあるブラックなユーモアと不穏なロマンティシズムが凝縮されたタイトルである。

サウンドは、アルバムの終曲としてふさわしく、やや混沌としたエネルギーを持っている。曲は単純に美しく閉じるのではなく、奇妙なテンションを残したまま進む。ギター、ベース、ドラムが緊張を保ち、Ian McCullochの声がその上で不穏に響く。

歌詞では、死、幸福、狂気、皮肉が混ざり合っているように感じられる。Happy Death Menという言葉は、死を恐れない人物たちなのか、死へ向かいながら笑っている人物たちなのか、あるいは社会の中で感情を麻痺させた人々なのか。明確な答えはない。しかし、その曖昧さが曲の強さである。

「Happy Death Men」は、『Crocodiles』を明るい結論では終わらせない。むしろ、死と笑いが混ざった奇妙な余韻を残す。Echo & the Bunnymenのデビュー作が持つ、不穏で若々しい暗さを最後まで保つ終曲である。

11. Do It Clean

「Do It Clean」は、一部エディションや後年の再発盤で重要な位置を占める楽曲であり、初期Echo & the Bunnymenの鋭いエネルギーを示す代表的な曲のひとつである。タイトルは「きれいにやれ」「きっちりやれ」といった意味に読めるが、その響きには命令形の強さと皮肉がある。

サウンドは、スピード感があり、ギターの切れ味が強い。ポストパンクの硬さとガレージ的な衝動が結びつき、バンドのライヴ感覚に近い荒々しさがある。リズムは前のめりで、Ian McCullochのヴォーカルも挑発的である。

歌詞では、行動、清潔さ、規律、逸脱といったイメージが絡み合う。Do it cleanという言葉は、何かを正しくやれという意味にも聞こえるが、Echo & the Bunnymenの文脈では、その正しさ自体を疑っているようにも響く。きれいにやることの裏にある暴力性や、ルールへの皮肉が感じられる。

「Do It Clean」は、本作の核心的な暗さとは少し異なる、より直線的な攻撃性を持つ曲である。Echo & the Bunnymenの初期ライヴ・バンドとしての力を理解するうえで重要な楽曲である。

12. Read It in Books

「Read It in Books」は、Echo & the Bunnymen初期の重要曲のひとつであり、Julian Copeとの関連でも知られる楽曲である。タイトルは「本で読んだ」という意味で、経験と知識、現実と文字、感情と情報の関係を示しているように読める。ポストパンク時代らしい、知的で皮肉な響きを持つ曲である。

サウンドは比較的コンパクトで、ギターとリズムがタイトにまとまっている。曲には初期の荒削りな勢いがあり、後のEcho & the Bunnymenの壮大な音響とは異なる、若いバンドらしい直接性がある。

歌詞では、本で読んだ知識と、実際の経験の間にある距離が暗示される。人は恋愛、人生、失望、世界について本で読むことができる。しかし、実際に経験することは、それとは別の痛みを伴う。タイトルには、知識だけでは現実を生きられないという皮肉が含まれているように響く。

「Read It in Books」は、Echo & the Bunnymenの初期の知的な鋭さと、リヴァプール周辺のポストパンク・シーンの空気を感じさせる楽曲である。アルバム本編外の楽曲として扱われることもあるが、初期バンド像を理解するうえでは重要な一曲である。

総評

『Crocodiles』は、Echo & the Bunnymenのデビュー作として、1980年代英国ギター・ロックの重要な始まりを告げるアルバムである。ここには、後の『Heaven Up Here』『Porcupine』『Ocean Rain』でさらに発展する壮大なロマンティシズムや神秘性が、まだ荒削りな形で存在している。ギターは鋭く、リズムは前のめりで、歌は若く、音は冷たい。完成された名盤というより、強烈な個性が初めて形になった作品である。

本作の最大の魅力は、ポストパンクの緊張感とサイケデリックな想像力の融合である。Echo & the Bunnymenは、パンクの衝動を引き継ぎながらも、それを単純な怒りや政治的スローガンには向けなかった。代わりに、動物、星、壁の絵、テラス、救済、死といった象徴的なイメージを使い、暗く幻想的な世界を作った。この方向性は、後のネオ・サイケデリアや英国インディー・ロックに大きな影響を与えていく。

Will Sergeantのギターは、本作の重要な個性である。彼のギターは、ブルース・ロックのように太く感情を語るものではなく、冷たい線や反響を使って空間を作る。鋭く、乾いていて、時に不気味である。このギターがあるからこそ、『Crocodiles』は単なるニューウェイヴ・アルバムではなく、独自の風景を持つ作品になっている。

Ian McCullochのヴォーカルも、デビュー作の時点ですでに強いカリスマ性を持っている。彼の声には、若さゆえの傲慢さ、ロマンティックな過剰さ、皮肉、不安が混ざっている。歌詞は抽象的で、時に意味を明確に結ばないが、その声が言葉をドラマへ変える。彼は単なるシンガーではなく、バンドの世界観を体現する存在である。

リズム隊の役割も大きい。Les Pattinsonのベースは、曲の影を作るように低くうねり、Pete de Freitasのドラムは、音楽に鋭い推進力を与える。Echo & the Bunnymenの音楽はギターと声で語られることが多いが、本作の緊張感はリズム隊なしには成立しない。特に「Rescue」「Crocodiles」「All That Jazz」などでは、リズムの強さが曲全体を支配している。

アルバム全体のテーマとしては、救済と危険、上昇と停滞、若い自意識と世界への不信が繰り返される。「Going Up」は上昇を示し、「Rescue」は救いを求め、「Crocodiles」は潜む危険を描き、「Happy Death Men」は死と笑いを結びつける。これらの曲は明確な物語としてつながるわけではないが、全体として、暗い水辺や夜の都市を歩くような感覚を作っている。

歴史的には、『Crocodiles』はポストパンクから1980年代インディー・ロックへの橋渡しとして重要である。Joy Divisionのような絶望的なミニマリズムとも、The Cure初期の冷たい内省とも、U2の上昇感とも異なる、独自の暗いロマンティシズムを持っている。Echo & the Bunnymenは、ギター・ロックを再び神秘的で詩的なものにする道を開いた。その影響は、The Jesus and Mary Chain、The Church、The Stone Roses、The House of Love、Interpole以降のポストパンク・リバイバルにも間接的に感じられる。

一方で、本作は後年のEcho & the Bunnymenに比べると、音作りは荒く、楽曲の完成度にも若さが残っている。『Ocean Rain』のような壮大な美しさや、『Heaven Up Here』の深い音響性を期待すると、やや直線的に感じられるかもしれない。しかし、その直線性と粗さこそが『Crocodiles』の価値である。ここには、バンドがまだ自分たちの暗い世界を作り始めたばかりの生々しさがある。

日本のリスナーにとって『Crocodiles』は、80年代英国ロックの暗い流れを理解するうえで重要な作品である。The Cure、Joy Division、Siouxsie and the Banshees、The Sound、The Teardrop Explodes、U2初期、The Churchなどに関心がある場合、本作の鋭さと幻想性は非常に興味深く響くはずである。また、後のブリットポップやポストパンク・リバイバルを聴くうえでも、Echo & the Bunnymenの初期作品は重要な源流となる。

『Crocodiles』は、冷たい水面の下に潜む牙のアルバムである。派手に襲いかかるのではなく、静かに近づき、突然噛みつく。若く、鋭く、暗く、まだ完全には整理されていない。しかし、その未整理のエネルギーこそが、本作を鮮烈なデビュー・アルバムにしている。Echo & the Bunnymenはここで、1980年代英国ギター・ロックの影と光を、自分たちだけの形で鳴らし始めた。

おすすめアルバム

1. Echo & the Bunnymen – Heaven Up Here

『Crocodiles』の次作であり、バンドの暗く張り詰めた美学がさらに深まった作品。サウンドはより重く、内省的で、ポストパンクとしての完成度も高い。初期Echo & the Bunnymenを理解するうえで、『Crocodiles』と並んで欠かせないアルバムである。

2. Echo & the Bunnymen – Ocean Rain

ストリングスを取り入れた壮大でロマンティックな代表作。「The Killing Moon」を収録し、バンドの詩的で映画的な側面が最も美しく結実している。『Crocodiles』の荒削りな暗さが、より洗練された形へ進化した作品として重要である。

3. The Teardrop Explodes – Kilimanjaro

同じリヴァプール周辺のポストパンク/ネオ・サイケデリアを代表する作品。Julian Copeの個性とカラフルなサウンドが特徴で、Echo & the Bunnymenよりもポップで奔放な側面を持つ。同時代のリヴァプール・シーンを理解するうえで重要である。

4. The Cure – Seventeen Seconds

1980年のポストパンク/ゴシック前夜を代表するアルバム。ミニマルで冷たいギター、暗い空間性、抑制された感情という点で『Crocodiles』と同時代の空気を共有している。Echo & the Bunnymenよりも内省的で静的な暗さを持つ作品である。

5. The Sound – Jeopardy

同じく1980年に発表された英国ポストパンクの重要作。鋭いギター、緊迫したリズム、都市的な不安が特徴で、『Crocodiles』と近い緊張感を持つ。商業的には大きく成功しなかったが、ポストパンクの深い魅力を知るうえで非常に重要なアルバムである。

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