
1. 歌詞の概要
「Girl From Mars」は、アイルランドのロックバンドAshが1995年にリリースしたシングルであり、彼らのデビューアルバム『1977』(1996年)にも収録されています。この楽曲は、バンドがまだ10代だった頃に書かれたにもかかわらず、ノスタルジックで幻想的な歌詞とキャッチーなメロディが融合し、インディーロックの名曲として高く評価されています。
曲のテーマは、「かつて愛したが、今は遠く離れてしまった少女への思い出」です。ただし、単なる恋愛の思い出ではなく、タイトルの通り「彼女は火星から来た」という設定が加わることで、SF的な幻想と郷愁が混ざり合った独特の世界観が生み出されています。青春の恋愛を振り返るようなノスタルジックな感情と、宇宙的なスケールのロマンが融合した楽曲となっています。
2. 歌詞のバックグラウンド
Ashは、北アイルランドのダウンパトリック出身のバンドで、1992年に結成されました。彼らが1996年にリリースしたアルバム『1977』は、スター・ウォーズの公開年(1977年)にちなんで名付けられ、青春、SF、パンク、インディーロックといったバンドのアイデンティティを象徴する作品となりました。
「Girl From Mars」は、バンドのフロントマンであるティム・ウィーラー(Tim Wheeler)が、実際に彼が10代の頃に経験した恋愛をもとに書いた曲だとされています。しかし、単なる過去の恋愛の回想にとどまらず、「火星から来た少女」というフィクション要素を加えることで、現実と空想の間の不思議なロマンを演出しています。
この楽曲はリリース後すぐにイギリスでヒットし、バンドの知名度を一気に高めました。1990年代のブリットポップと並行して活躍していたインディーロックバンドとしてのAshの地位を確立するきっかけとなった重要な楽曲の一つです。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、楽曲の印象的な部分の歌詞を抜粋し、英語の原文とその日本語訳を掲載します。
Do you remember the time I knew a Girl From Mars?
「覚えてるかい? 僕が火星から来た女の子を知っていた頃のことを」
→ ここで、話者はかつての恋を「火星から来た少女」としてロマンティックに語り始めます。火星というフィクション的な要素を加えることで、「彼女がこの世界のどこにもいない特別な存在だった」というニュアンスが強調されています。
I don’t know if you knew that
Oh, we’d stay up late playing cards
「君は知っていたかわからないけど」
「僕たちは夜遅くまでカードをしていたよね」
→ ここでは、過去の恋愛の何気ない思い出が描かれています。シンプルな日常の一コマが、時間が経つにつれて特別な思い出へと変わっていく様子が表現されています。
And she never told me her name
「でも彼女は、僕に名前を教えてくれなかった」
→ ここで、彼女の謎めいた存在感が強調されます。この一節が「火星から来た少女」という設定と結びつき、現実と幻想の境界を曖昧にする役割を果たしています。
Summer came and left without her, and it felt just the same
「夏が来て、彼女がいないまま去っていったけど、何も変わらないように感じた」
→ ここでは、「彼女がいなくなったこと」と「季節が過ぎ去ること」が並べて描かれ、時間の流れの中で彼女の存在がどんどん遠ざかっていく感覚が伝わってきます。
Now I’m left to go the memory lane
「そして今、僕は記憶の小道を歩いている」
→ 過去の恋を振り返るというテーマが、ここで最も明確になります。彼女はもういないけれど、その思い出は今でも心の中に残っていることが示唆されています。
※ 歌詞の全文は Lyrics.com などで参照可能です。
4. 歌詞の考察
「Girl From Mars」は、一見するとシンプルなラブソングのように思えますが、その中には**「過去の恋へのノスタルジア」「手の届かない存在への憧れ」「現実と幻想の融合」**といった要素が込められています。
特に、「彼女が火星から来た」という設定は、ただの恋愛ソングではなく、話者がかつての恋人をどれほど特別で、現実離れした存在だと感じていたのかを象徴しています。彼女が火星から来たというのは、単なる比喩ではなく、「彼女がもうこの世界にはいない」「彼女の存在が現実とは思えないほど素晴らしかった」という想いが込められているのです。
また、「夏が過ぎ去る」という表現は、青春の儚さや、思い出が風化していく様子を描いていると考えられます。彼女の存在が時間とともに遠のいていく中で、話者は「記憶の小道」を歩くという表現を使い、過去を懐かしみながらも、それを振り返るしかないことを受け入れているようにも読めます。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Goldfinger” by Ash
→ 同じく『1977』に収録されている、ノスタルジックでエモーショナルな楽曲。 - “Alright” by Supergrass
→ 90年代のブリットポップの影響を受けた、青春をテーマにした楽曲。 - “Starlight” by Muse
→ 宇宙的なテーマを持ちつつも、ノスタルジックな雰囲気のあるロックソング。 - “Champagne Supernova” by Oasis
→ 幻想的で抽象的な歌詞と、広がりのあるメロディが特徴の楽曲。
6. 90年代インディーロックの名曲としての「Girl From Mars」
「Girl From Mars」は、1990年代のインディーロック/オルタナティブロックの中でも、特にキャッチーでノスタルジックな楽曲として広く愛されています。青春の恋愛の儚さを、SF的な要素と結びつけたユニークな歌詞が特徴的で、バンドのアイデンティティを象徴する楽曲の一つです。
また、この楽曲はAshのキャリアにおいても重要な役割を果たし、バンドが世界的に注目されるきっかけとなりました。シンプルながらも奥深い歌詞と、勢いのあるギターサウンドが融合した「Girl From Mars」は、今なお多くのリスナーに愛され続ける、時代を超えたインディーロックの名曲です。
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